テストの一週間戦争
この前見た戦争の映画と、現在テスト真っ盛りの自分を題材に、両者をミックスしてみた何ともくだらない短編小説です。
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世の学生達はテスト前になると、己の手によって徴兵される。
各々が確固たる目標、意志を抱き、今度こそこの戦いに勝利せんと企む。
学校では己の全てをかけて特攻する突撃兵士になり、家では絶対なる策を考える参謀兵へと変身する。
だが大概の者は定期的に行われるこの戦争の来襲により、意志薄弱、自己嫌悪、と言った症状が表れるのものだ。
勉強などやりたくないが、とりあえず机に向かっておこうとする意気込みを胸にし、早歩きで学校から帰還。
自宅で、いやこの世で一番寛げる場所『自分の部屋』に閉じこもる。
まずは堅苦しい制服を脱ぎ棄て、動きやすい自宅専用のラフな格好になる。
そして『テストの三種の神器』である、『筆記用具』『ノート』『教科書』を、散らかった机の上へと淡々と並べる。
幾度も共に戦場を歩んできた愛用の武器を持ち、進級する度に生まれ変わる教科書のページを開き、すでに何十代目かもわからないノートから白紙のページを用意する。
戦争へ打ち勝つための全ての準備が整った。
眼球を動かし教科書を横目で見つめ、武器から生み出される字を、白紙のノートの上に滑らすように配置する。さながら、どこに兵を配置すれば勝てるかを考える策士のように。
が。
十分もしない内にすぐに手は止まった。
突然の来襲、いや奇襲とも言えるお母さんの登場。
何気ない用事で、自分の部屋の扉をノックもせずに入ってくる。入る際はノックしろと、一体何度言えば覚えるのか、いつも頭が痛い。多分一生覚えないだろうが。
本当にどうでもよい用事なので、多少の怒りを含めて『今は勉強中だから邪魔しないで』と言い放ち、お母さんも素直に退散する。
勉強机に目を戻し、教科書を覗く。
しかし、もとより集中力のない自分だ。この予期せぬ親の介入により心の陣形は一気に崩れる。
『何か部屋汚いなー』
『あれ? 前に借りた本どこに置いたっけ?』
『結局あの映画の結末どうなったんだっけなぁ・・・』
『あーお腹空いたなー』
『それに喉も乾いたなー』
『あ、昨日のドラマ録画したんだった』
こんな風に、一気に色々な事が気になりだした。
結果、自分はその『気になる事』を、無意識のうちに最優先させ解決しようとする。
普段はやらない部屋の掃除を快く行い。
なくしかけた物の存在が今までに類を見ない焦りと絶望に変わり、頭の中の情報を元に必死に見つけ出し希望を得る。
普段ではどうでもいいような内容を忘れたら、何としてでも調べ尽くし、多少の爽快感と一緒に思い出す。
喉が渇き小腹が空いたら兵糧庫に行き、食べ物を強奪し己の渇望を沈める。
いつもなら山積みにしておく録画内容も、異常なまでに中が気になりだし、最悪の場合一から見直す。
最終的にはテスト勉強など二の次三の次。先程までの意気込みはどこへやら。
戦争に対する対策もしないまま、夜はすぐに更けていき、現状にある己の知識を手に学校へと向かう。
それはさながら、壊れかけた銃器を持って戦場に行くが如く。そのような装備で戦場に向かうなど愚の愚、待っている結末など言わずとして知れている。
必然的な無条件降伏、圧倒的な火力差、敵の未知の兵器、体力と精神の枯渇。
そして待つのは親が激昂する未来だけ。
先程まで抱いていた『でも、何とかなるであろう』とゆう愚かで陳腐な幻想は消え失せ、武器はいつものように字を産み出さない。
周りを見ると自分と同じ境遇の人は多い。顔を見ればすぐ分かる、同じ死線を潜りぬけてきた仲間たちなのだから。
『明日のテストこそ必ず!』と、昨日よりも激しい想いを胸に秘め、家へと帰還する。
ここで立て直す人もいるだろう、だが立て直せない人もいる。
テスト最終日に待つのは勝利の余韻に浸りながら帰還するか、はたまた、哀愁漂う背中を背にし帰還するか。
自分がどちら側の人間なのかはよく知っているつもりだ。
いつか、この一週間戦争を勝利に収める時が来るのを夢にし、私は今日もまた学校へと向かう。
さて、アナタはどちらでしょうか?勉強をちゃんとする派?一夜漬け派?はたまた何もしない派でしょうか?
自分は勿論一夜漬けです。




