第8話 腰抜け冒険者
予想外の難産で書置きが作れなかったので、また週末までは不定期更新となります。
ギルド前につくとリーダーのアルバをはじめとした冒険者パーティーが揃っていた。
「おはようございます。今回はよろしくお願いします」
「おはようロシーちゃん、こちらこそよろしく頼む。ではパーティーメンバーの紹介をしよう」
童顔で身長は平均くらいだけど細マッチョでリーダーのアルバ
次に背中に大きな盾を担いだ長身でがっしりとした身体をした顔の怖いラオス
小太りで大きな荷物を積んだ荷車を管理する荷物持ちのポルタ
スラっとしたシルエットでアルバよりも背の高い槍使いのイルマ
そばかすに編み込んだ髪が特徴の短剣使いメラ
以上の5人が今回アタシの護衛をしてくれるとのことだった。
戦闘員はアルバ、ラオス、イルマ、メラの4人でポルタは荷車の守りを優先するがいざとなれば戦えるそうで、基本アタシはポルタと一緒に行動して欲しいとのことだった。
6人で村の門をくぐるとまずは草原を森に沿って南へ進む。
風景の変わる岩石砂漠までは3日ほどかかるとのことだった。
戦闘員の4人は周辺を索敵しながら進むため、移動中に話すのはもっぱらポルタだった。
「ロシーちゃん、疲れたら荷車に乗っても良いから声をかけてねえ」
「まだ良いわ。教えて欲しいのだけどいつもこんな感じで進んでるの?」
現在の隊列は10mほど前にラオスとイルマが進みアタシたちと荷車を挟むようにして10mほど後方にはアルバとメラが索敵しつつ歩いている。
「護衛クエストの時はいつもこんな感じだよ。でもそれ以外の時はもっと固まって移動するね」
「なんだ、いつもポルタだけが寂しい感じじゃないのね」
「いやー寂しいさ、前の2人も後ろの2人も付き合ってるからね。それにあんまり似てないけどラオスとメラは兄弟でね、近くにいると喧嘩をすぐに始めるから依頼人の前には近寄らせないようにしてるのさ・・・これ話したこと秘密ね」
のんびりした雰囲気のポルタはそういうと荷車を引くのに集中していた。
そうして草原の道を進み、日が沈む前に今日の野営の準備を始めた。
テントを男女でそれぞれ1つ立てて休む。夜の見張りは2人づつ交代で行うとのことだった。
依頼人のアタシはやることもなく、夕食は野菜入りの干し肉スープとパンを食べた後は歩き続けて疲れたためすぐに眠るのだった。
朝になるとメラが炙った干し肉とチーズを挟んだパンをくれる。
「ん、今日も歩くよ。しっかり食べな」
「はい、ありがとうございます」
「ふあー、メラ俺にも一つ作ってくれ」
「あいよ」
受け取ると眠そうにアルバがテントから出てくる。どうやら夜の見張りを最初と最後の2回したようでまだ眠いらしい。アタシがもそもそとパンを食べていると、あっという間に食べ終えたアルバが全員に声をかけた。
「それじゃあ、準備をして終わり次第出発する。今日の野営も草原だから準備は最低限で大丈夫だ。行動開始!」
また草原の道を進む、途中に何度か狼のような魔物が現れたが難なく倒すため進行に支障は出ていない。進めど進めど景色は変わらず右を見れば少し先には砂漠が見え、反対側には森が広がっており、森の切れ目から時折見える切り立った崖には空を飛び回る点が見える。あのクソ鳥だろう。
「崖が気になるかい。あの崖を上ると依頼のペリオンの街に着くんだが、なんせジョーバードの巣があるから冒険者だけで行っても難しいところでね。仕方がないからこうして迂回するようになっているのさ」
「あの鳥がこっちに襲ってくることはないの?」
「あまり多くはないね、基本は森の動植物を餌にしているからね。もしも襲ってきたらできるだけ体勢を低くして砂漠の方へ走るんだ。ジョーバードは砂漠だとなぜか上手く飛べなくなるので撃退もしやすくなるし諦めて帰ることも多いからね」
「空に変わりはないのに上手く飛べなくなるなんて不思議ね」
「まあ魔物のことなんて一部の研究者以外誰も調べないし、調べるのも危険度が高くて対処法の分からない魔物が中心だからね。昔から砂漠に落として倒せと言われるジョーバードなんて誰も研究しないからわからないさ」
「へー」
ピッピィィィ
そんな風に話して歩いていると前方から警戒の笛が鳴り響いた。
前方を索敵していたラオスとイルマが走ってこちらに叫びながら向かってきた。
「砂漠から盗賊の一団が接近中!数は10、まとまって森に逃げ込むぞ」
「了解。いくつか荷物を投げて時間を稼ぐ手伝ってくれ、イルマは依頼人と先に森へ向かってくれ」
「了解。ほら行くよ」
森に向かうと隊列の後方からも警告の笛を鳴らしながらアルバとメラの2人が走ってきた。
「森からジョーバードの群れが接近中。数はおよそ30!」
まさかの挟まれた。砂漠からは略奪を生業とする盗賊が森からは人を簡単にさらうことの出来るジョーバードが群れで攻めてきている。偶然だろうが人と魔物が連携しているようであった。
絶望的な状況でもアルバは諦めずに指示を出していく
「一旦森付近の草原で陣を張る。砂漠に入れば数でも負けている盗賊に対して勝ち目はない。ジョーバードを引かせて森に逃げ込むぞ」
「「「「了解」」」」
ラオスとポルタも合流すると荷車と荷物で森の前に簡易的なバリケードを作り前方をラオスが盾を構えながらにらみ、残りで後方のジョーバードに対抗する。
震えるアタシは陣の真ん中で守られて状況を見ていた。
「くそたっれ、アルバまずいぞ盗賊の連中こちらの状況に気が付いて囲み込んで様子見するつもりだぞ!森の方へも何人か走っていった先回りするつもりだ」
「くそ、ジョーバードの数が多い上にこいつら全然引かないぞ」
「さっきから、臭い玉投げてんのに興奮して気にしてないみたい」
「こう複数に代わる代わる攻撃され空に逃げられちゃきりがないね」
戦闘開始からそれなりの時間が経過したが、深い傷を負ったジョーバードは帰っていったものの
数はほとんど変わらず、盗賊たちも包囲が終わったのかゆっくりと近づいてきていた。
そうしている内にだんだんアタシの震えが収まり怒りに変わって行くのを感じる。あの砂漠に落とされたのもクソ鳥の所為で、今こうして街へ帰ろうとしている中邪魔するのもクソ鳥なのだ。
我慢は限界だった。
「みんなしゃがんで!風よすべてを薙ぎ払え」
アタシは全力でクソ鳥を空の中で洗濯してさらに高い上空へと打ち上げた。
大半は途中で逃れたものの3羽ほど目を回したまま打ち上げられた後に森の方へ墜落していった。
「やったわ!」
クソ鳥を撃退したと喜んでいたアタシは冒険者たちが険しい顔でアタシを見ていたことに気が付かなかった。
喜びを共有しようと皆に近寄ると突然後ろから縄で拘束された。
拘束したのは朝パンをくれたメラだった。
「ふざけるなよ。魔法使いだと・・・最悪だ寄りによって盗賊の前であんな大きな魔法を見せるなんて、しかもジョーバードは森の深いところに落ちた拾いに行くのは難しい。ジョーバードが数羽落とせれば獲物を渡すことで見逃してもらうことも出来たのにこれじゃ死に物狂いで襲われるじゃないか」
アルバがぶつぶつと独り言をこぼした。
アタシは口も塞がれて喋ることすらできず、複数人の人をどうにかする魔法を使うには回復を待たなければならない、そうして冒険者たちが集まるとアタシにとって最悪の提案がされ全員一致で了承された。
アタシを盗賊に引き渡し見逃してもらうという話だった。
アタシは縛られながらも全力で抵抗したが力で敵うはずも筈もなくあっさりと盗賊の手に渡るのだった。
アタシはまた攫われた。
クソ鳥に腰抜け冒険者ども許すまじ!!