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第6話 魔法使いのロシー先生

次の日の昼下がりの休憩時間、サラは魔力測定と属性判別をするべくアタシの部屋に来ていた。

アタシはベッドの下に隠した箱から昨日買った魔力結晶を取り出す。使うのは購入した5つの内2つで、それぞれに専用の魔法固定記述を施しておいた。

魔法固定記述は簡単に言えば、魔法を発現させる際の個人差を無くす技術で初等学校でも習うが、ほとんどの人は読めるようになるだけで終わってしまう。もちろんアタシはクラスの誰よりも早く覚えついでに幾つかの記述方法を習っていたわ。もっとも危険でないものに限るということであったけれど...


「いい?まずは魔力測定から始めるわ。この結晶の先に親指から順に手を付けていって、ああ片手づつでお願い」

「うーん、なんかピリピリするかも別に結晶は何にも変わらないよね。これで何かわかるの?」

「ちょっと待ってね。ホントは魔法ギルドとかで売っている測定用の闕所はその魔力の量や質によって光ったりさせるのだけど、ぶっちゃけそこまですると難しいし魔力の無駄だから今回は省略したわ。今確認するわね」


そういってアタシは結晶を触る。今結晶に施している魔法は魔力を触れている部分から一定量を一定時間で吸い取るもの。魔力がなければただの石に指をくっつけているのと変わりないし、逆に魔力があれば吸い取られる刺激を感じるその時間が長ければ長いほど魔力の量が多いこととなるが、これは一定量までしか測ることができない・・・なんせ際限なく魔力をコメら場合は爆弾と大差のない危険物となってしまう。そこに()()()()が異なるアタシの魔力を入れることで確認することができる。反発しあえば性質が異なる傾向にあり、結合するようであれば性質が近い傾向にあることが推察できる。最も良いとされるのは反発も結合もしない状態で、これは他社から魔力の妨害を受けずらいことを示すためいつでも魔法が使える才能となる。


「アタシの魔力に引っ張られるようにくっつくわ。近い性質があるのかもね。あと今疲れた感じはする?」

「全然しないわ」

「そう、なら魔力量も十分ね。離していいわ」

「次も同じ感じかしら?」

「そうね。次もやることは同じだけど今度は色が変わるから目に見えてわかるわよ」


サラは再び結晶に指を恐る恐るつける。

今度の結晶は魔力の属性に応じて色が変わるが、属性が混在して発現するものは混ざった色をそうでないもの単色で魔力に存在する割合で結晶内を染める。


「あっ、色が変わって来たわ茶色にところどころに緑といった感じね」

「土属性が強いみたいね。緑は風属性だけど、ここまで小さく分布していると使えるようになるには相応の鍛錬と魔力量が必要になるからおすすめしないわ」

「それじゃあ私は土属性の魔法使いってこと?」

「ええ、その認識で間違えないわね。アタシも土魔法を使えるから魔法を教えられるわ」

「ほんと!楽しみね。まずは何からやるの」

「魔力の発現を感知するところから始めるわ」

「はい。先生」


笑顔で先生と呼ばれてしまった。なんかすごくいい。


「やることは簡単でさっきの結晶を触って離してを繰り返して指先から魔力が出ている感覚をなんとなくつかんでみるわ。それが出来たら属性判別の結晶で色を見ながら場所を動かすように意識するてみるの。初めはほとんど動かないけど動かせるようになると魔法が使える準備が終わったと言われるわ」

「へー、ちなみにロシーちゃんはどれくらいで出来るようになったの」

「アタシは1年かかったわ。異なる属性が全部混ざり合っていたから分離させる工程も必要で時間がかかったわ。早い子でも数か月はかかっていたわね」

「えーすぐ使えないのー。まあいいか、やってみるね」


そういってサラは黙々と修行を始めた。

1時間ほどして飽きたサラがこんなことを言い出した。


「ねーロシー、全然分からないだけどこれであってるのかな?」

「ん、魔力の流れ自体は感じるし問題ないわ」

「ね!一回さロシーが属性の色を動かすところ見せてよ」

「そうね!なんでもっと早く言わないのよ。すごいもの見せるわ」


アタシはあえて魔力を調整せずに結晶に注ぐ。

示された色は僅かに青みがかった黒色。アタシが1年間見続けた色だ。


「うわ、真っ黒。これって何の属性なの」

「黒い傾向にある魔力は複数の属性が混ざり合ったものと言われているわ。黒だからこれと言った属性はなくてここから分離させて使うのよ。見ててね」


魔力を動かし集中する。徐々にいろが分かれてきた。


「すごい、茶色に緑に濃い青色もどんどん分かれていくのね」

「これが魔力を制御するということよ、ほかにもこんな風にも出来るわ」

「元の黒色に戻って、あっその上に緑や青の粒が光ってる。夜空みたいね」

「きれいでしょ。これわねアタシが魔法使いを目指すことになった最初の魔法なの」

「きれいだもんね」

「それだけじゃないわ。さっきの色を完璧に分けるのに比べて遥かに簡単なの。アタシの先生が最初に教えてくれたの変化の喜びを知らなければ永遠に上達はしない。星の数を増やすとこから地道に頑張りましょうって」

「えーひどい。なら私にも最初からそう教えてくれればいいのに」

「先生はこうも言っていたわ、苦しみも考えもなく与えられただけの知識ではすぐに飽きて身にならないと。それにアタシが教えてもらったのは1ヶ月が過ぎてからだしね」


サラはちょっと不貞腐れた顔で修行を再開した。

でも、魔法使いを目指したのはこの魔法を使った後に先生から教えて貰ったことが本当のきっかけ。

「ロシーさん、あなたは他の人に比べて魔法を使うのには時間がかかるでしょう。でもねそれは大魔法使いに与えられた特別な苦労なのです。多くの人は黒色の属性とわかると制御の難しさに魔法を使うことを諦めてしまうの。でも同時に歴史に名前を残すような大魔法使いたちは、その多くが黒色の魔力を持っていました。複数の属性を持つということはそれだけ多くの魔法を扱えるといいうことで可能性に満ち溢れているわね、でも同時にそれを扱うに足る努力をしないものには見向きもしない厳しい側面を持つわ。」

「はい」

「ロシーさん、もしもうダメと思ったら諦めても良いわ。でもこれだけは覚えておいてその魔力は誰よりも恵まれたものだということを」

その時の先生の顔が曇った気がしてアタシは宣言した。

「諦める時は来ないわ!アタシは天才なの、その上()()()()()されているなら怖いものなんてない。アタシは将来大魔法使いになるわ!見ててよね先生!」


その宣言を聞いた先生は泣きそうな顔で笑うのだった。



その後も宿が忙しくなるまでサラの魔法修行は続けたが変化はなく、この日を終わるのであった。

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