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第4話 宿の手伝い

朝井戸で顔を洗って朝食を食べに向かうと昨日の受付の娘が話しかけてきた。


「あなたペリオンの街から来たんですってね!しかもジョーバードにさらわれて無事にここまで来れるなんて私より小さいのに凄いのね!」


キラキラしている。どう考えてもここまで来れたのは運が良かっただけだ。

でも・・・年上のお姉さんにキラキラとした尊敬のまなざしで見つめらるのは悪い気分じゃない。


「ふふん、アタシはペリオンの街でも初等学校を首席で卒業する天才だもの。このくらいの旅だってなんてことないわ!」

「凄い魔法も使えるのね!でもあまり言いふらさないようが良いわよ。最近は減ったとはいえ魔法使いは砂漠の国の人たちに攫われやすいからね」

「それ砂漠で助けてくれた人にも言われたは、いったいどういうことなの」

「赤の秘薬って知ってる?砂漠の国の秘伝らしいだけど強い魔力を持った魔物の血から作れるそうなのよね。でもとっても高価な薬みたいでそんなに出回らないの。レオル王国の人は軍人と開拓団くらいしか使わないから別に大丈夫なんだけど、向こうの人は具合が悪くなっていよいよとなると最後の手段として使うそうなのよね」

「それが人さらいと何の関係があるの?」

「そうそう、ここからが物騒な話なんだけど何でも秘薬を作れるのは限られた人だけなんだって。でも薬が手に入らないなら魔法使いの血で代用しようとするのですって。魔物の血は加工しなきゃいけないけど、人の血ならそのままでも効果があるって信じられているのよ。まあ砂漠の国の人も質の悪い迷信だって言う人もいるけど、家族が死にそうになってなりふり構わない人はそう言う事も信じてしまうみたい。だから浚って血を抜き出して家族に与え、余所にばれるわけにもいかないから最後には殺してしまうそうよ」


冷汗がした...クソ鳥の血から出来た薬のことだろう、なるほどお守りと言う訳だ。売ることも考えたが疲れていて後に回していたので助かった、人を殺して代わりを求めるのだ、売ったことがバレればどこから手に入れたのかを拷問してでも聞き出そうとするだろう。なんというものをくれたのだろうか。捕まったら代わりに渡そう。


「バカ娘!いつまでくっちゃべってんだい!お客さんに朝食を渡したら次の仕事をおし」

「あら、いけない。時間があったらまたお話しましょ。初等学校のこと教えてほしいわ」


そういうとパンとスープを置いてどこかに行ってしまった。

パンもスープも家で食べていたのと同じ味で離れていても同じ国なんだと、なんだか落ち着いた気持になった。


朝食を食べ終わると、宿の女将にどこかで働けないか相談することにした。

そうすると簡単な解決方法を教えてくれた。


「そうかい、なかなか大変だったね。まあここはペリオンの街まで行くには遠いとは言え同じ国だし手紙も届く。親に手紙を出して迎えに来てもらえばいい。それまでだったら宿で雇っても良い。どうする?」

「ありがとう、お願いします。」

「よし、あたしはリーネ。さっき話していたのが娘のサラよ。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします。」

「そしたら手紙の用意はしておくから、サラと一緒に水汲みをしてもらえるかい。井戸のほうにいるはずさ」

「わかりました。」


井戸に向かうとサラが昨日部屋に持ってきたのより大きな桶に水をくんでいた。


「ちょっといいかしら、えっとサラさん」

「ん!あれさっきの。どうしたのあれ名前いったけ?」

「あなたのお母さんに聞いたのよ。それで親が迎えに来るまでここに働かせて貰うことになったの。アタシはロシーよ。よろしくね」

「ふーんロシーちゃんね。よろしく!じゃ早速だけど水汲みを代わってくれる。桶がいっぱいになったら、あそこの扉の先にあるツボに溜めといてくれる。あと5回くらいで満杯になるはずよ。終わったら声かけてね」


そう言うが早いか逃げるように行ってしまった。

仕方がないので水汲みを始める。

魔法を使えば時間はかからないが何故か魔力の回復が遅い。魔力が尽きてしまえば気絶まではしなくても、まともに仕事は出来なくなるに違いない。そう心で言い聞かせて水汲みを終わらせた。

水汲みが終わると次は洗濯だった。今度はリーネとサラと一緒の作業だ、なんでも早く終わらせないといけないらしい。作業中にサラが話しかけてきた。


「ねえロシーこの洗濯物を全部洗う魔法とかないの?ほんっといつもついも嫌になっちゃう」

「無くはないけど、魔力の無駄ね。全部洗っていたら日が暮れるわ。魔法って一瞬の物事を起こすのは簡単だけど続ければ続けるほど大変なのよ。」


そうアタシの飛行魔法はとっても大変で凄い魔法なの。これはアタシが天才で空に漂う風の魔力を刺激してコントロールだけをすることで、小さい魔力でも可能としているのだ。


「えー、じゃあ全部を一瞬でやればいいじゃない」

「サラ天才かも、じゃあこの洗濯物が全部入る桶はある?」

「うーん、おかーさん空の酒樽で干しているやつ使ってよい。」

「はぁすぐ遊ぼうとするんだから、いいけど終わったら片付けと上手くいかなくてもお昼までには全部洗うのよ」

「ありがと!お母さん大好き」


サラが空の酒樽を持ってくる。二人係で洗濯物と水と洗剤を入れ少し混ぜる。

準備が出来るとリーネも興味深そうに見に来た。


「いくわよ!はっ!」

樽の中の水を操り回転させて回った水に風をぶつけて泡立てていく、小刻みに魔法を切り替えて加えながら1分ほど続けて様子を見る。


「どうかしらきれいになった?」

「うーん、なんか変わらない気がする」

「えー結構疲れるのに失敗かしら」

「そうでもないかもちょっとこすっただけで汚れが落ちるようになったわ」

「はいはい、じゃあ効果はあったんだ今日はここまでにして早いとこ洗濯を終わらしてちょうだい。続きはまた明日やっとくれよ」

「はーい」


なーんか苦労の割に効果が薄いような気がしてならないが、時間もないのでさっさと洗っていくことにした。


お昼は朝のスープに野菜と雑穀が入ったものだった。好きなだけ食べていいというのでお替りしたらサラに食いしん坊だと笑われた。魔法を使って疲れたのだから仕方がない、魔法使いは皆見かけによらず大食漢なものだ。

それから料理人はリーネの夫でハシムというらしい。すごく無愛想で挨拶してもそうかと一言いってお終いだった。


食後はお皿をサラと一緒に磨いているとリーネに呼ばれた。

どうやら手紙のための便せんが用意できたとのことだ。


「それじゃ手紙を早いとこ書いとくれ。3枚までは値段も変わらんから好きに書いていいが、いつ迎えに来るのか先に手紙をこのリーネの宿宛に出すよう初めに書くんだよ。わかったね。」


そうしてアタシは今までの冒険を宿が忙しくなるまで手紙に記しているのだった。

その後、サラからは後でサボってずるいとしっかり小言を言われた。



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