第一話 出会い
アタシは今をトキメク魔法使いロシー、まぁまだ頭に見習いって付くけど外れるのも時間の問題ね。
なんせ初等学校の魔法科の授業ではアタシはクラス1番なの!
魔法は複数の属性を扱える人は珍しいのにアタシはなんと3つ使えるのよ!
アタシの才能に嫉妬した子から「父親が下級役人だから中等学校にだって進学できないお前は一生見習い魔法使いだ」なんて言われることもあるけど大したことじゃないわ!
今日の授業とっておきの魔法を作って驚かせてやるんだから!
午後ね、すごく眠いわ...お昼ご飯に退屈な授業もう寝てくれって言っているようなものじゃない。
でも今寝てしまったら魔法バカのロシーとまた言われてしまうわ...いや今寝ることで次の魔法実習に備えて偉大なる魔法使いへのみちをアタシが...そう...
「生徒ロシー、ロシー起きなさい授業中ですよ」
「はい、せんせい!ロシーは寝てません!」
「元気があって結構。ではこの問題はわかりますか?」
「わかりません!」
「生徒ロシー授業はきちんと聞きなさい。では他にわかる人は手を挙げなさい」
いけないわ、ミセス・ジェーンに注意されてしまった。
でも、しょうがないはこれはお昼のあとにこんな地理の授業をするほうが悪いのよ。
「はい、正解です。生徒ロシー聞いていましたか?となりの国は砂漠の広がる砂の国ラムスです。」
「補足として幸い我が国とは比較的友好関係にありますが、ラムスは複数の部族からなる連合国家であり未だに独立を唱える部族との抗争も起こっています。興味本位で近づかない様に...」
やっと地理の授業が終わったわ、長かった睡魔との戦いも終わりよ。
次は待ちに待った魔法実習よ!気合入れていくわ!
「ロシーちゃん、今日も怒られちゃったね。」
「何よレミ!そんなにやにやしちゃって、アタシには次の魔法実習に全力を注ぐせきむがあるのよ!」
「もー、いっつもそればっかりその調子じゃいいお嫁さんになれないよ。」
「ふふん、魔法使いになれば女も男も関係ないわ。これからは魔法使いの時代よ!」
「それいつも言ってるけど、初級魔法使いなんていっぱいいるよ。上級魔法使いになるには中等学校の上の魔法学校を成績上位で卒業しなきゃいけないのに、私たちなんて中等学校にだって入れるかわからないよ」
「レミは夢がないわね!見てなさい、アタシのオリジナル魔法。そんなこと言う人はいなくなるわ」
そんなこんなで、レミとしゃべって居たら魔法実習場に着いたわ。
物理耐久力増加と魔力阻害、それから魔力障壁の三種類の魔法陣がそれぞれ刻まれた三重の壁に囲まれた最後の門をくぐると開けた場所に出る。この直線で最大50メートルほどの円形の場所こそがアタシが主役となる実習場ね。なんでも昔のコロッセオを改築したとかで観客席の一部が残っていて少し威圧感を感じるけど今日は晴れていて天井のないこの場所は少し昂ってくるものがあるわ。
魔法科の教師が集合をかけた。
「それでは魔法実習を始める。前回はオリジナルの魔法を作り方について講義をしたが本日は実際に皆で魔法を行使してお互いの改良点を出し合うものとする。なお、攻撃魔法については私が的となる標的を出すので申し出るように、以上。最初に見せるものはいるか。」
「はい!はい!アタシがやるわ!」
「よろしい。生徒レミーでは初めに使う魔法を説明したまえ。」
「飛行魔法を使います。空に石の足場を作って動かしその上に乗って移動します!」
「ほう、飛行魔法は上級魔法使いですら半数は使えないとされる魔法だ。いいぞ、やってみろ。」
アタシは先ず土の魔力を込めて足を乗っけられるだけの土を固めて石に変えそれを風の魔力で順に階段状に空に並べていく。自分の体を乗っけた状態で動かそうとするとすごく操作が難しいけど動かないようにするだけなら簡単だ。そうして出来た石の階段を上り空へと上がっていく、実習場の壁と同じくらいの高さまで登って下を見た。
「すばらしい!生徒ロシーそのままの高さで移動もできるのだろうか?」
「はい先生できます!」
大声で答えるとアタシは新しい石の足場を作り歩いて移動していく、下からは歓声と飛行魔法じゃなくねという声が聞こえてくる。ふふん負け惜しみね。歩いたのはわざと、ここからは足場の石そのものを移動させて見せるわ、その時には全てが歓声になるのだから。
石を動かすのは土魔法でも風魔法でもできるけど、石だけを動かしてしまうと乗っているだけの私は落ちてしまうだからアタシを含めて風魔法で動かす必要があるのだけど対象が大きくなるので集中しないとバランスが上手く取れなくなってしまう。また、風魔法で動かすと足場の石は少しずつ削れてしまうので同時に土魔法で修復をしていかないといずれ足場がなくなってしまう。飛行魔法は本当に繊細で高速で飛び回るような上級魔法使いは意味が分からないけど早歩きくらいのスピードならアタシでも出せる。そうして飛び回っていると下から悲鳴が聞こえた。
「ロシーちゃん逃げてーー!!」
その時、アタシの何倍もの大きさの鳥に掴まれた。
「え?、いやー!!!」
やってしまった。そう恐怖から魔力を制御出来ずに全力で使ってしまったのだ。
あまりにも突然の突風はアタシとその鳥を天高く打ち上げ雲に達するかというところから急速に落ち始めた。一瞬気が遠くなったけれど鳥の足が肩に食い込んだ痛みで目が覚めた。もはや魔法場どころか町すら見えないけれど、風の魔法で減速してみても速度が速すぎてほとんど変わらないこのままじゃ地面にぶつかって死んでしまう。
反対に高度を下げないように上方向に風を操ってみたらなんとか時間を稼ぐことに成功したらしい。
どうやらアタシをつかんだ鳥はそのまま気絶しているようだ。体勢を立て直すと高度が下がりつつも滑空状態で速度も落ちてきた。ただ地上の景色はいつの間にか砂ばっかりになっており相当飛ばされてきてしまったらしい。というか砂しかないせいでどっちから飛ばされて来たのかもわからない。
いつの間にか風の魔法も維持が難しくなって来ていて地上の砂浜にぶつかるのも時間の問題だった。
「うわー最悪。来世ではお金持ちの家に生まれますように。」
もうあきらめた。
鳥と一緒に死ぬのも嫌なので何とか爪から抜け出してなけなしの風の魔法で全身を包み込んで砂に飛び込んだ。
「うぇ、砂が口に入った。ああもういや」
なんか生きてた。
ドンッと大きな音がして数メートル先に元凶の鳥が墜落していた。幸せなことにまだ気絶しているらしい。なんかイライラしてきたので止めを刺すことにした。だってアタシどっちみち死んじゃうし、あの鳥が生きてるとか不公平だよね。
砂に足を取られて思うように進めないものの何とかたどりつき、迷った。
だって、でかいと思ってたけど顔だけでアタシの身長の半分はある。どうすればこの憎っき鳥を殺せるのだろうか?
「首を落とせば死ぬよね...土魔法」
思いっきりやった。土魔法で砂を固めて首のところに剣を生やしてやった。予定通り首は落ち鳥は断末魔を上げることすら出来ずに死んだ。
「はぁはぁ、意識があれ...このくそ鳥呪ってやる...」
多分魔力切れだ、頭はもうろうとするし体は熱くてたまらない。ふらふらとしながらも鳥の死体の陰に体をうずめて意識が切れた。
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なんかいい匂いと思って目を開けようとしたら猛烈に血と獣の臭いがアタシを襲う。
「うっっくさい...」
どうやら鳥の死体にくるまって寝ていたようだ。外は暗くなり始めている。
また肉の焼けるいい匂いと人の気配がした。
恐る恐る鳥の陰から覗いてみると全身に布を被ったような服を着た三人組が焚火を囲んでいる。
「おっ起きたかいお嬢ちゃん。」
顔は見えないけど若い男の声が訪ねてきた。どうやら見つかってしまったようだ。
命が助かるかもしれないと期待しながらアタシは返事をした。
「あのアタシはあの鳥に連れられてここまで来てしまったのですが、ここはどこですかっ!?」
「そりゃ災難だったね、ところで肝心の大鳥だが首が落ちているようだがお嬢ちゃんがやったのかい?」
「アタシ夢中で...はい殺しました。」
「そりゃすごい。戦士には見えないが魔法使いかな?」
「魔法使いです。」
「兄貴!もしかしたら例の件どうにかなるんじゃないっすか!」
返事をしたら一番手前にいたもっと若い男が奥の男に話しかけている。
奥に男は一番の大男であたしが二人並んだって彼のほうが大きいだろう。そんな大男は小声で何かを相談している。
最初に声をかけてきた男が再び話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、俺の名前はガッド。若いのがベン俺の息子だ。それで奥にいる大きいのがリーダーの
シャマドだ。お嬢ちゃんの名前を教えてくれるかい。」
「えっと、アタシはロシー。魔法使いのロシーよ!」
「そうかありがとよ、だがお嬢ちゃん一つ忠告だ。砂漠に魔法使いは少ない、人さらいに会いたくなけりゃ迂闊に言わないことだな。」
「そうなの?名前まで聞いてから教えるなんて意地悪なのね。」
「ふんっ、親父は甘いんだ。別に教えなくても俺たちは困らないんだからな。」
「そうね、ありがとう。礼をいいます。」
「それじゃあ、これからの相談だがお嬢ちゃんはこの後行く宛はあるのかい?」
「それよりもここがどこだかわからないからどうしようもないわ。教えてくれない。」
「ああ、そうだったね。ここはラムス連合国の東のリムラス砂漠だよ。オアシスも比較的近くにある。俺たちはそこから来たんだ。」
「ラムス連合国?え、アタシ違う国に来ちゃったの!」
「というとレオル王国の生まれなのかな?」
「そうよ、レオル王国のペリオンの町で生まれ育ったわ!」
「いやーそうか、そいつは災難だな。ベリオンの町は森を超えて崖の上にある。空を飛べなきゃ戻るのは迂回しなきゃならねえ。相当な長旅だぜ。」
「空なら飛べるわ!だから魔力さえ回復すれば崖くらいなんてことないのよ!」
「やめとけ。あの大鳥に攫われるくらいだ早くは飛べないだろう、崖はあの大鳥たちの巣がある今度は餌になっちまうぞ。」
大男・・・シャマドがドスの効いた低い声でいきなりいうもんだから、びっくりした。
「そうね、もう攫われるのは懲り懲りだわ。」
「それがいいよ。とりあえず近くのオアシスまで連れて行ってあげよう。その代わりだね代金としてお嬢さんの倒した大鳥の肉を貰ってもいいかな?」
「好きにしていいわよ、どうせアタシじゃさばけないし。でもどうせなら全部上げるから食料と水ももらえないかしら。」
「そうかい、それじゃ取引成立だ。そしたらとりあえずは水とこの炙った干し肉をあげよう。」
「ありがと、うっ硬い・・・みずみず。」
「水は貴重だ、飲みすぎんなよ。オアシスにつくまではもうやらねえぞ。」
そうして、アタシは彼らと一緒に近くのオアシスまで向かうこととなった。
なお大鳥はロープで縛って引きずられることとなった。ざまぁ!
はじめまして!
ついに読むだけの人から書いてみる一歩を踏み出しました。
第一話を書くのに想定外の時間がかかってしまいびっくりしました。
いつも待っている作品がなかなか出てこないのも納得でした。
とりあえずは完結を目標に書いていければと思います。
マイペースで書いていきますので、よろしければどうぞお付き合いください。