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ご主人様からの伝言

 ……にゃー。

 

 ……にゃー。


 ……にゃー。

 

 ぽちは、悲しくてずっと泣き続けてるのにゃ。


 涙がポロポロこぼれて止まらないのにゃ。

 だって、ご主人様が死んだって、天使様が言ったのにゃ。

 

 そんなの嘘にゃ。ご主人様は死んでないのにゃ。

 もうすぐ帰って来て、またぽちによしよししてくれるのにゃ。


 そう思いたいのに…………ぽちは知っているのにゃ。

 天使様は神様のお手伝いをする人だから、嘘はつかないのにゃ。

 

 だから、ぽちの大好きなご主人様は本当に死んでしまったのにゃ。もう会えないのにゃ。

 

 ぽちは、悲しくて悲しくて、苦しいのにゃ。

 にゃーにゃー泣き続けるのにゃ。


『カミヤミナトはトラックに轢かれそうになった子供を助けて、代わりに轢かれてしまったのです』


 天使様は泣いているぽちにそう言ったにゃ。

 ぽちは、にゃーにゃー泣き続けながら「ご主人様らしいにゃ」と思ったのにゃ。


 トラックっていうのは、人間が運転するとても大きな車なのにゃ。大人の野良猫や野良犬よりもずっと大きいのにゃ。

 近づくととても危ないのにゃ。

 

 ぽちは、小さな車でも怖いから車を見ると隠れるのにゃ。


 ご主人様だって、トラックは怖かったはずにゃ。


 だけど、子供を助けるために大きなトラックに立ち向かったのにゃ。

 ご主人様は優しいのにゃ。

 可哀想な子を見捨てないのにゃ。


 嵐の日にひとりぼっちで泣いていたぽちを助けてくれたみたいに、子供も助けてあげたのにゃ。


 でも……その代わりにご主人様は死んでしまったのにゃ。


 ぽちを助けてくれて、幸せにしてくれたご主人様に、もう会えないのにゃ。


 ぽちは、悲しくて悲しくて、にゃーにゃー泣くのにゃ。

 これからずっと泣き続けるのにゃ。


 ……………………。


 ……………………。


 ……………………。



『そろそろ泣き止みなさい』


 どれくらい時間が過ぎたのかわからないにゃ。


 ずっと泣き続けているぽちに、天使様はそう話しかけたのにゃ。


 とても優しい声だったのにゃ。


 でも、泣きやむのは無理にゃ。


 ぽちは、悲しいのにゃ。


『カミヤミナトからの伝言は聞きたくないのですか?』


 にゃ!?

 

 そうだったにゃ。


 天使様はご主人様からの伝言があるって言ってたのにゃ。


 ご主人様の伝言、聞きたいのにゃ。


 聞かせてくださいなのにゃ。


『では、その前にまず傷の手当てをしましょうか』


 天使様がそう言うと、ぽちを捕まえてた光が消えたのにゃ。

  

 ぽちは、こてん、と地面に落ちたにゃ。


『じっとしていなさい』

 

 天使様はぽちに向けて手をかざしたにゃ。


 天使様の手から温かい光が出てきて、ぽちの体を包んだにゃ。


 にゃ? ドアにぶつけた時のぽちの頭のケガが消えたのにゃ。


 痛くなくなったのにゃ。


 天使様が治してくれたのにゃ?


『そうです。私の権能は【知恵】と【旅立ち】ですが、それくらいの治癒の力は行使できるのですよ』


 にゃー。ありがとうございますなのにゃ。


『どういたしまして。でも、次からは気をつけなさい。あのままドアに体当たりを続けていたら、アナタは死んでいましたよ』


 にゃー。ご主人様を助けに行きたかったのにゃ。


『アナタが死んでしまっては意味がないでしょう?』


 でも、ぽちはご主人様のたった一人の家族だから、無理してでもご主人様を助けに行きたかったのにゃ。選択の余地無し、なのにゃ。


『なかなか頑固な子ですね』


 天使様は、なんだか苦笑してるにゃ。

 それよりも早くご主人様の伝言を聞かせてくださいなのにゃ。


『天使の忠告を聞かない者の願いは叶えませんよ?』

 

 にゃー。これから気をつけますにゃ。

 早く伝言を聞かせてくださいにゃ。


『……あまり心がこもって無いようですが、まぁいいでしょう。では、貴方にカミヤミナトからの伝言を伝えます』


 天使様は、ぽちに近づいて来てぽちの頭の上に手を置いたにゃ。


 そうしたら、ぽちの頭の中にご主人様の声が聞こえて来たのにゃ。


『ぽち、聞こえる? ミナトだよ。ごめんね、私は交通事故に遭って死んでしまったの。だから、もうぽちとは一緒に暮らせなくなっちゃった』


 …………にゃー。

 ぽちの知ってる優しいご主人様の声なのにゃ。

 ご主人様の声で、もう一緒に暮らせないって言われて、またぽちの目から涙がいっぱい溢れてきたのにゃ。


『ぽち。ぽちは私の唯一の家族だよ。

 ぽちと一緒にいる時、私は孤独な気持ちを忘れてた。ぽちの温もりが私を幸せにしてくれてたんだ』


 ぽちも同じにゃ!

 ご主人様と一緒にいれて幸せだったのにゃ!

 

 ぽちは、ご主人様に届くように、必至でにゃーにゃー叫んだのにゃ。


『私はぽちとずっと一緒に暮らして、ぽちのことを守りたいと思ってたんだ。なのに、急に死んじゃって、間抜けな飼い主でごめんね』


 ご主人様は悪くないのにゃ!

 助けにいけなかったぽちが悪いのにゃ!


『ぽちのことは天使さんに頼んだから……どうか幸せになってね。今までありがとう。さよなら、ぽち』


 そこでご主人様の声は聞こえなくなったのにゃ。

 伝言が終わったみたいにゃ。

 ご主人様の声は、途中から涙で震えてたのにゃ。

 ぽちもにゃー、にゃー泣きじゃくるのにゃ。

 ご主人様とさよならなんて嫌なのにゃ。


 ご主人様、帰ってきて、なのにゃ!


『伝言はまだ終わっていませんよ』


 天使様はにゃーにゃー泣いているぽちの頭から手を離してそう言ったにゃ。

 でも、ご主人様の声はもう聞こえないのにゃ。

 ぽちは、えぐえぐ泣きながら天使様の顔を見上げたのにゃ。


『カミヤミナトから貴方への贈り物を預かっています』


 ご主人様から贈り物? なんですかにゃ?


『カミヤミナトが子供の命を救った善行のご褒美として神様から頂いた加護。【神の祝福(ギフト)】です』





 


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よろしくお願いいたします。


ฅ^•ﻌ•^ฅニャ

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