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第一夜 くっころからの求婚なんぞする奴があるか!

妖怪が好きなので書きます。世界史選択なので歴史についてのツッコミ所はぐっとこらえて流してください。あとこの世界は異世界のEDOなので独自設定がもりもりです。妖怪への偏見も含まれますのでご了承ください。

 ふわりふわりと提灯の浮かぶこの異常な空間で、私は一切の身動きを取れずにいた。両手両足に絡みつく粘性の綱のようなものは、いくら力を込めて引っ張っても千切れる気配は無い。

 頼みの忍び装束の中には苦無(くない)が二本に鍵縄(かぎなわ)、三尺手ぬぐいに匕首のみ。


 ……ここまでか。


 部屋を半分に断つように張られた巨大な蜘蛛の巣の上で、私は自分の未熟さを呪う。

 近年、人に対する悪行が目立つようになってきた妖怪共の威力偵察として妖界(やつらの巣窟)への潜入を命じられた私だが、こうもあっさりとからめとられるとは……



 すぅ、と静かな音を立て、部屋奥のふすまが開く。闇の中から、提灯のかすかな光りに照らされた男が足音も立てずに向かってくる。美丈夫ながらも髷を結わず、長くうねったざんばら髪の男は、風貌・妖気ともに一目で人ならざるものであることが伺える。どこからくすねてきたか、薄墨色の上質な着物を着こんでいるのがなおも憎らしい。



「ほう、どんなうつけ者が掛かったかと興味本位で見に来たが……かように華奢な蝶々だったとはな。」


 人を心底馬鹿にしたような面持ちで近づいてきたその男は、立膝をつきぐっと顔を寄せてくる。


「いや、蜘蛛の巣に蝶々が絡め取られるは極自然な事、尋常一様であるな。はっはっはっ」


 ……ふざけた事をぬかす。人を嘲り弄ぶが妖の性分だと聞き及んではいるが、これ程に趣味の悪い輩だとは……!

 

「くっ、 ――殺せ!」


「ふむ、見た目に似合わず心も強かと見える……気に入ったぞ、人間の小娘よ。」



 ふさふさと黒髪を項まで伸ばしたその男は頬杖をつき、値踏みをするかのように私の顔を眺める。


 不快だ。こんな生き恥を晒すなど……!


「おい、いい加減に……!」



 言葉を言い切る前に、目の前の妖のすらりとした手が伸び、私の顎を持ち上げる。


「……惚れた。お主、俺の女になれ。」


 垂れ目を細めながら、源逸と名乗るその妖はそう宣った。


 ……全身を蜘蛛糸で縛られた私に向かって。


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