5話
結局ツララもハンターズギルドがどこにあるのか知らず、町の人に聞いて行き着いた場所は、あたりの建物よりも一回り大きな石造りの役所のような場所。
その中へ入ると、酒場と併設されており、昼でも関係なくアルコールのにおいがしてくる。
そのような場所にたむろしているのは勿論常人ではなく、そこかしこにコスプレでしか見たことのないような、鎧や外套、ローブを身にまとっている。
すると、奥から来たウェイトレスとみられる人が、
「いらっしゃいませー。依頼案内なら右奥のカウンターまで、お食事なら空いてる席までご自由にどうぞー」
と、愛想よく出迎えてくれた。
「おい、なんかここ怪しい恰好したやつばっかりだな。俺は犯罪を犯しに来たんじゃないんだぞ」
「この世界じゃあ、あの恰好が普通ですわ。逆にアロウさんの方が怪しまれてますわよ」
たしかに、先ほどから多くの目線を感じる。
……この軍服、機能性抜群だから結構気に入ってたんだけどなぁ……。
そんなことを考えながら、カウンターへ歩いていく。
「すいませーん」
「はい、本日はどのようなご用件でしょうか?」
余談だが、驚くべきことに受付の人は全員が女性である。接客業のような面が強いせいだろうか。
「えっと、依頼を受けたくて来たんですが、この街には着いたばかりで何もわからなくて……」
どうでもいいことを考えていたせいで、(見た目的に)最年少であるツララからカウンターに話しかけさせてしまった。
「そうですか。ではこちらが本日出来る依頼の一覧ですので、こちらの中から選んでください。どうぞー」
と、俺たちは受付の人に手で示された方の丸いテーブルを囲む椅子に腰を掛け、依頼の書かれた紙を広げた。
それらには……
≪ペットのホワイトタイガーとシーサーペントが逃げたので捕獲して連れ戻してほしい≫
≪人物静画のモデル募集――尚、同性愛の成立した女性カップルに限る≫
≪魔法実験の実験台募集――※怪我や命を落とす場合は自己責任であ……≫
「みんな頭がおかしいんじゃねぇの?」
最後の依頼まで読み終わる前に、俺は早々に結論を出した。
「そ、そうですね……さすがにここまでひどいと思っていませんでした」
「ん~……あ!これなんて特にアロウさんにピッタリじゃありませんの?」
そう言ってフレイヤが差し出してきた依頼書に目を向けると。
「なぁ、気になるんだけど、この報酬十万ドルクって日本円でどれくらいなの?」
「だいたい、そのままで十万円くらいですわ」
なるほどねぇ……。じゃあ、コレをやるだけで十万円か、めっちゃ良いな。
「よし、これに決めたぞ!」
俺は、手に取った依頼書を受けるためにカウンターへ向かった。