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クレイジーホエイル  作者: 社不旗魚
一章:王都編
3/24

2話

「……という訳ですわ」


「なるほど、ちっとも分かりません。あとお前、その眼鏡はどこから持ってきた」


「伊達ですわ」

「いや聞いてねぇよ」


 先程から真剣にフレイヤの話を聞いていたが、とある部分からとたんにわけがわからなくなってしまった。

 ……そんなことよりいつの間に彼女はメガネをかけたのだろうか?

「頼む、もう一回説明してくれ」

「……わかりましたわ。まず、アロウさんは地獄には行きたくないでしょう?」

「もちろんさぁ」

「それと同じで、ワタクシもこれ以上こんな理不尽なBLACK企業で働くのも嫌になっていましたの。なので早い話、ワタクシと一緒に異世界へ!」

「そこだよ。その異世界うんぬんからよくわからねーんだよ。もっと! 詳しく! 丁寧に!」

「ええっ! 今どき異世界ネタが通じない人がいるなんて!? ……わかりまし、た。そうですわね……一言で言いますと、モンスターとか、剣と魔法だとか、ファンタジーなヤツがいるゲームみたいな世界ですわ」

「なぁ、そこって明らか平和じゃないよな? 俺が求めるものより遥かに過激なんですけど」

「しかし! 無断でワタクシ達神々が天界を出たら重罪、例え別世界にいようと神パワーが強すぎてすぐに見つかってしまいますの。そこで!」

 フレイヤは俺のツッコミを無視し、一枚の紙を手渡してきた。

 そこには。

「妖刀ムラマサ、聖剣エクスカリバー 、一昔前の先生のリコーダー、あずき味のバー……何コレ?」

  色々な剣だとか、武器らしきものの名前がメニューのようにいくつも書いてあった。

「その中から一つ選ぶのですわ。それをワタクシが封印される依り代に致しますわ」

 いきなりそんなことを言われても俺も流石に戸惑ってしまう。

「封印? お前それって、動けなくなったりするんじゃないのか? 自分から封印されるとか頭おかしいんじゃねえの?」

「違いますわ。ワタクシの力を抑えるだけの簡単な封印ですので、いつでも自由に動けるようになりますわ。実際には武器と人の両方の姿になれるってことですわ。武器バージョンのマ○ムートみたいなものですわ」

 それは微妙に違う気もするが……。

 まぁ本人が大丈夫と言っているならば本当に大丈夫なんだろう。

「うーん、分かった。で、俺はどうするの?」

 すでに考えることを放棄した俺の頭は話を進めることに専念した。


「もちろん、もう一度生きるのですから地獄に行く必要なんかありませんわ。しかも、聖武器を使えるのですから向こうの世界ではトップクラスの力がついてきますわ! 何より、ワタクシという美女が付いてくるのですから! さぁ……その聖武器カタログからお好きなものを一つ選んぶのですわ!」

 さっきまでコイツの愚痴を聞いていた身としては、フレイヤを抱えるよりは正直一人のほうがいい。

 ……とは言ったものの、とても魅力的な提案ではある。

 現在の俺の装備は単発式のライフルともうしばらく点検もしてなくて壊れているかもわからないフルオートライフル、8発入る拳銃が一丁ずつ、そして軍服の内に着た防弾チョッキに予備の弾薬が着いているぐらいだ。

 ……はっきり言ってこんな一応程度の装備でファンタジーなモンスターとか気が引けてしまうんだが。

 なぜなら俺は銃弾の狙撃より銃剣の近接戦闘が得意だからだ。一年間のブランクもあって近接でのとっさの回避ができる自信がない。

 もし本当に強い武器が使えるのならぜひともほしい。


◇ ◇ ◇ ◇


 そういうわけでこのメニューを10分ほど見ていたのだが、ざっと見ただけで30種類くらいはある。

 その上に武器の名前しか書いてない。しかし、この女神のこととはいえ、女性の容姿を決めることだ。

 しかも何故かフレイヤが先程から何か期待したような目で俺を見ている。

 ここは慎重にならねば。


 ……今思ったが、封印したからその武器に姿を変えられる、なんて言うのもまた非現実的だな。


 ……おっ、コレなんていいんじゃないのか?


「じゃあ、この 『まれんサラマンダー』ってやつで」


「はっ!? アロウさん今なん」


『~ご注文承りました~』


 俺が注文した途端、そのリストは楽しげな音楽と無機物的なアナウンスとともに消えてしまった。


 確か、サラマンダーって火の精霊だったよな?

 だったら炎の女神とか言ってたコイツにぴったりなはずだ。

『まれん』 とひらがなで描いてあったのと、フレイヤが真っ青な顔をしているのが気になるが、きっとどちらも気の所為だろう。

 まれんサラマンダーとは一体どんな武器なんだろうか……。

 そんな事を考えていると、どこからかガシャンという音とともに金属の棒のようなものが落ちてきた。


 それは……。


「はっ? 鎌? …… あっ」


 俺は気付いてしまった。


『まれん』 という名は魔の鎌で 『魔鎌』 だということに。


 そして、それは浮遊し、やがてフレイヤの体の方へ近づいていき、触れたところから溶けるように消滅しててしまった。


 すると。


「……最低です、 最低ですわ! ワ、タ、ク、シ、女神!! 女神なのに鎌に封印されるとか明らかに邪悪じゃあありませんの?! 貴方という方のセンスを心底疑いますわ!」

「えっ!? わ、悪かったって。でも、そんなこと言ったって、嫌ならカタログに載せるなよ。あとなんでひらがなで書いてあったんだ?」

「そんなの当たり前でしょう? 大鎌を死神の象徴にしたのは東ヨーロッパの風習からなのですわよ? 『魔』 とか書いたら人気が出るはずないですわ。カタログに載せたのは勿論在庫処分の為でわざわざ消すのが面倒そう……じゃなくて! アロウさんがちゃんと見栄えの良いものを選んでくれると思って……」

「自業自得だろーが、ワレ!!」


 ――10分後。


「……よし、もう泣き止んだな? 俺もうさ、こんな何もないとこ早くオサラバしてぇんだ。だから出発の方法を教えてくれ。な?」

「……え? ……行き方? そんなの、テキトーにワタクシを使って、そこら辺の空間を斬ったらすぐに用意しておいた別世界にヒュー ですわ」

 雑だな。

 もうこの場所もこんなふうにコイツの話を聞くぐらいしかやることないしな。

 ちなみに、現在フレイヤは本人の意向で鎌の姿だ。

 俺は自分の身長ぐらいの長さのあるフレイヤことまれんサラマンダー (笑)を持って大きく振りかぶった。


「向こうでは、今より穏やかな戦争してりゃいいな!!」


 そうして特に名残惜しさも無く、俺は力いっぱい振り下ろした!

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