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7. 海外赴任中の出来事

 ニュースキャスターが速報を伝えていた。来る前に政情不安定な国という認識はなかったが、瞬く間に戦闘地域が広がっていった。昨今の世界は自分達の聞きたいことしか聞こうとしない人々が増え、どの国でも分断が起きていて、些細なきっかけで内戦が勃発してしまうようだった。突然、轟音がした。壁が崩れて外が見えた。土埃が舞っていた。崩れた壁から鉄骨が剥き出しになっていた。同僚が何人も倒れていた。助けなければと思っている時に銃を持った兵士が数名なだれ込んで来た。

「ここで何をしている」

銃口を突きつけながら兵士が言った。生きた心地がしなかった。

「仕事でこの国に来ました。工場で使う製品を扱っています」

恐怖で震えながら答えた。

「こいつ言葉がしゃべれるようだぞ」

「連れて行け。役に立つかもしれない」

それから後ろ手に縛られ、トラックの荷台に載せられて運ばれた。不安を抱えながら三時間くらい揺られていた。トラックの止まった場所には拉致されて来たと思われる人々が集められていた。ここまで運んで来たからには、彼らに私たちを殺すつもりはなかったようだが、満足な食事も与えられず、衛生状態も極めて悪く、健康を損ねて死んで行く者が何人もいた。私もここで死んでしまうのかと思った。その時、妻と子供の顔が浮かんだ。

「帰って来たら動物園に連れていってね」

そう子供と約束したことを思い出した。こんなところで死ぬ訳には行かないと思った。家族がいなかったらとっくに死んでいたかもしれなかった。私たちが解放されたのはそれから二年後だった。

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