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4. 記憶の復元

「スキャンに問題ありません。ターゲットへの書き込みを継続します。八十三パーセント復元が完了しました。引き続き作業を継続します」

誰かの声が聞こえる。私は眠っているのだろうか? 

「八十九パーセント完了しました。ターゲットに異常は見受けられません。血圧、脈拍、呼吸いずれも正常です。作業を継続します。バックアップデータを読み込みます」

真っ白な部屋の真ん中に置かれた冷たいベッドに寝かされている。さっきからずっと誰かが私の頭の中をいじくりまわしている。最近の出来事と子供の頃の体験がかき混ぜられているような感じがする。そこにいる私は同僚と打ち合わせをしている会社員であり、次の瞬間には夏休みに蝉取りをしている少年であり、好きな女の子の前でドギマギしている中学生であったりする。そうした画像がランダムに映し出されたかと思うといつの間にか時系列に規則正しく並んでいる。ぼやけて誰だかわからなかった人の顔も次第にはっきりして来て、その人数も段々増えて来る。駅や街路樹やショッピングモールの風景が立ち現れたかと思うと目の前を通り過ぎて行く。

「九十九パーセント完了しました。ターゲットに異常ありません。最終データを書き込みます。まもなく終了します」

私は何度目かの深い眠りの中に落ちている。オペレーティングシステムが再起動を繰り返しているみたいだ。その都度、私はパスワードを入力しなければならない。

「神崎さん。大丈夫ですか?」

私を呼ぶ声がする。

「大丈夫です。起きられます」

私はベッドから起き上がった。状況を把握する。さっきここにやって来たのだ。そして契約を交わしてからバックアップを取った。そのことはよく覚えている。それからどうしたのだろう? 眠ってしまったのだろうか? とにかく家に帰ろう。妻と子供が待っている。

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