11. 対面その三
唐突な展開で少し混乱してしまった。風貌がそっくりといううだけでも随分と動揺してしまうものだ。だが本当にこの男は私と同じ記憶を持っているのだろうか? トゥルーメモリー社での出来事は知っているようだが、それは事情を知っている人間なら知り得る情報であって私固有の記憶ではないような気がする。そう思った私は、目の前にいる男が本当に私と同じ記憶を持っているのか確かめようと考えた。
「やはりちょっと信じられないことです。本当にあなたは私と同じ記憶を持っているのでしょうか? ちょっと確認させてもらってもいいですか? まずは両親の名前と生年月日を教えて下さい」
「神崎昭と神崎紀子です。生年月日は一九××年×月×日と一九**年*月*日です」
「あなたが学生時代に過ごした街はどこですか?」
「〇〇です。妻とはそこで会いました。あなたもご存じですよね? 妻を初めて抱いたのはつきあってから一か月後でしたね?」
「そんなこと言われなくてもわかります」
「二人で鍋をつついていました。お酒を飲みながらおなかいっぱいになっていい感じでした。その後でしたね?」
「もうそんなことを話すのは、やめましょう」
「どうやって脱がせるのだろうとか考えていましたね? 押し倒されて彼女はとても恥ずかしそうにしていましたよ」
「もうやめようと言ったじゃないですか?」
「あなたが言い出したことではないですか?」
確かに彼は私と同じ記憶を持っているようだった。他人には恥ずかしくて言えないことも知っていた。そう考えると益々彼の存在が許せなかった。きっと彼も私と同じことを考えているのだろう。彼は私なのだから。やはり彼が存在していることは許し難いことだった。だがそれは彼にしても同じことなのだろうと思った。




