パイロット版 仮2
やはり罪人は裁かれて然るべきだと、ぼくは思うのです。
そう、ぼくは生まれながらの人殺しさ。
初めての殺人はまさにぼくがこの世に生まれ落ちた、まさにその時に行われたのです。
ぼくが母さんの股ぐらから頭を出した時、首にへその緒が絡まっていたから産声を上げなかったそうです。それでもお医者さんが慌てふためいて考えうる限りの手を施して、どうにかぼくは生き永らえました。でもそれと引き換えに(等価交換みたいに)母さんは死んでしまいました。可哀想な母さん。自分で息もできない子供を産まされ続けて、衰弱して死んでしまった。
ぼくが力強い産声を上げる一方、愛する人を失った父は複雑な心境で涙したと聞きます。ええ、そうです。あの時ぼくが泣いたのは、この世に産まれ落ちてしまったことを知ったからなのです。母さんはぼくを愛していたから頸を絞めたのです。(でも、ぼくがデキたのはあんたが親父とセックスしたからだぜ?)ぼくは責めません。ぼくらはただ遺伝子の乗り物であって、自由意志なんてものも存在しないのです。(これは一説に過ぎないよ。誰も自分が生まれた時のことなんて分からない。子供は親や周囲から聞かされて初めて自分の“その時”を知るのさ)
捻くれた男だと思うかい? ああそうさ、ぼくはぼくであることをやめられない、やめたくない。親父はそんなぼくを憂うあまりピストルで自殺してしまったけどね。(映画『ソナチネ』のラストシーンみたいに。あんな風に笑顔だったらいいな)
ぼくは色々なニュアンスの青が好きなんだ。ゴロワーズの青、睡眠薬も青、恋だってみずいろさ。でもぼくを流れる高貴な血を好きになれないのはどうしてだろうね。それにしてもブルーブラッドだなんて! 不思議だね、血が濃くなったら真紅になるはずなのに!(近親交配を繰り返して発生した君の肉体はメラニンが欠落していて、白い肌の下に静脈が透けて見える。知ってるだろ?)
Domine, quo vadis?
Утомлённое солнце.
tunc adfuisses.
54 61 6b 65 20 4f 6e 20 4d 65