第3話 始まり
創造したナイフを片手にしばらく森を歩いていると、リンゴとマンゴーを混ぜたような果物がなっている木を見つけた。
祐樹「お、この果物食えそう…鑑定使ってみるか。鑑定!」
〈タイラハの実〉
栄養素が豊富だが、人間が摂取すると少量で下痢、腹痛、嘔吐を伴う。
祐樹「うーん、残念。…ん?でも俺のスキルに毒物無効ってのがあったよな…」
少し考え、とりあえず最終手段として、何個か採取しておく事にした。
スキルがあるとはいえ、もし毒物無効のスキルで対処出来なかった場合はまだ飲み水すらない状態で下痢や嘔吐で水分を奪われると危険と判断した。
祐樹「収納っ…と。おお、何か次元の裂け目的なやつ出て来た!ここに入れれば良いのか?」
タイラハの実を5個入れてみる。
祐樹「おー、消えた…スキルって本当すごいな。これって中身とか確認出来るのかな…?」
ステータスを開いてみる。
するとウィンドウにインベントリタブが出来ていたので押してみると、タイラハの実×5と表示されていた。
祐樹「ん、保存出来てるな。出す時はコレを選択すれば良いのか。」
収納の使い方が分かったので、そこら中に有る植物を鑑定しながら収納しつつ歩いていると水の流れる音がしてきた。
祐樹「ラッキー!川か!」
水の流れる音の方向へ向かうと、日本の清流100選に選ばれてそうなきれいな川に辿り着いた。
祐樹「これで飲み水の心配は要らないな、良かった。」
川岸に近付き、とりあえず飲んでみる。
美味い。森の中を1時間ほど歩いたので身体に染み込んでいくような感覚を覚える。
祐樹「ぷはぁー!水ってこんなに美味かったっけ…生き返るわ〜」
水を飲み終わり、少し休憩して今後について考える事にした。
祐樹(とりあえず川があるって事はこの川の下流に行けば町とか集落くらいは有りそうだな…
流石にこのまま森でサバイバルする訳にもいかないし、何よりもこの世界についての情報が欲しい。)
と、川を眺めながら今後について考えていると何か流れて来た。
祐樹「ん?何だあれ?……………人ぉ!?」
流れて来たのは12歳?位の子供だった。
まだ生きているかもしれない、結城はスーツの上着を脱ぎ捨て、一心不乱に着の身着のまま川に飛び込むと子供を抱え上げ、川岸まで運ぶ。
祐樹「はぁっ…はぁっ…おい!大丈夫か!?」
ペチペチと頬を軽く叩くが反応は無く、呼吸もしていない。
脈をとってみると弱々しいが、確かにまだ生きていた。
祐樹「と、とにかく水を吐かせないと…」
気道を確保し、鼻をつまみ人工呼吸を試みる。
すると、何度か息を吹き込んだ所で、子供が水を吐き、呼吸を取り戻した。
祐樹「なんとか息を吹き返したか…中学の時に習った人命救助の授業がまさか異世界で役に立つ時が来るとはな…」
とりあえず一安心するが、まだ子供の意識が戻らない。濡れた服は体温を著しく奪い危険な為、子供の服を脱がす。
すると、男の子だと思っていたが、アレが無い。
祐樹「!……女の子だったか…すまん、でも人命救助の為だ、許せ。」
祐樹は、脱ぎ捨てていたスーツの上着を女の子に掛けると、暖を取るために薪を集め川原の石で薪を囲み、簡易的な焚き火を組む。
祐樹「こんなもんでいいか、頼むからMP足りてくれよ…クリエイト!」
創ったのはマッチ、MPの消費は5。
祐樹「足りたか…やっべ、何かくらくらする。」
残りのMPを確認すると2だった。
どうやら、MPが切れかけると気分が悪くなるようだ。
祐樹「とりあえず、火を…」
薪に火を点け、火が安定した所で濡れた服を干し、安心したのか祐樹も眠りに落ちてしまった。
1時間後ー
祐樹(ん…なんだ…?揺れてる?)
ゆさゆさと、身体が揺れる感覚がする。
祐樹「地震か!?」
寝惚けながらも跳び起きる。
???「きゃあ!」
隣を見ると、全裸でスーツを羽織る女の子が涙目で尻餅をついていた。
第4話へ続く。