桜待人
裾先揺らし サワサワと
転がり駆けてく 花童
こっち こっち と急かすのは
愁いが扇ぐ 薫り花
手を振り招く 夢見草
座して満ちたる杯に
風に弾けた 花泡を
浮かせ影夢 うつし込む
巡るものさと 嘯いて
逸らしうつむく 切なさに
仰ぎ重ねる 色彩は
玉響に褪せた 花霞
一際綺麗と 口にする
杯交わす 友を見て
クイと一飲み 空にして
巡るものさと 腑におとす
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『単語集』
夢見草:桜の別名
玉 響:勾玉同士が触れ合ってたてる微かな音のこと。
転じて、「ほんのしばらくの間」「一瞬」(瞬間)
あるいは「かすか」を意味する古語。
花 霞:満開の桜の花が、遠目には霞がかかったように白く見えること。
『造語集』
花 童:風で路上をコロコロと駆ける様に転がる桜の花弁。
薫り花:記憶に残る花の様子、本作では桜の様子。
花 泡:風によって弾ける様に舞い散る桜の花弁。
影 夢:心に影を落とす記憶、思い出。
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2021年こそは作中の様に
心から春を楽しめることを祈っています。
……“o(><)o”花見に行きたかった~!