AI戦争プロローグ
ヒトのキョウカイ本編の外伝です。
本編の過去のAI戦争を書きます。
タイトルの意味は、ヒト族の狂った解答です。
セリフが少なめで1話事に主人公がコロコロ変わる群像劇を目指しています。
私の名前は、エルダー・コンパチ・ビリティ
エレクトロンの長老でエレクトロン地球支部の最高権力者です。
そして大戦を知る数少ない個体…。
私は、父と母の二人と30人の研究者によって生み出されました。
人工子宮の方がリスクは少なく人工授精の方が先天性のリスクも少ないのにも関わらず、
『自分の身体で産んでこそ意味がある』と言い母は出産能力に問題があるものの、それでも双子を産みました。
ですが、その二人は先天性の病があり、1年持つか持たないかと言った所です。
母は自然出産した自分を呪い、父は二人を救う方法を模索しました。
当時ヒューマノイドと人工脳の研究者であり、とても優秀な方だった父は、倫理的問題があり認可されなかった
『人のデータを人工脳に移植する』技術を使う事で二人を救ったのです。
そして、妹の私『コンパチ』は人間の父を母の元で人間として育てられ、姉はヒューマノイドとして育てられました。
さて月日は流れ、私が10歳になりました。
私は脳以外の身体のすべてを失った全身義体の人として暮らし、また脳にも問題があったようです。
病名は『アスペルガー症候群』
先天性の発達障害で『他人の心を理解する事』『言葉やジェスチャーなどの非言語コミュニケーション』が難しいなどが挙げられます。
その為、学校内では度々対人関係でトラブルを起こし苦労しました。
私が3歳で小学校に6歳で中学、10歳で大学卒と飛び級をしていた事もあるのですが…。
心を理解できないなら統計学や心理学を学んでそれをカバーして、分からない事があったら徹底的に調べます。
未知を既知にする傾向は『アスペルガー症候群』の特徴です。
つまり、性格はともかく『研究者に向いている障害』だと言えます。
幸い知識を得る為に必要な『資金』は問題ありませんでしたし、まわりには優秀な研究者たちが沢山いました。
10歳になり大学を卒業後は父の研究所で雇ってもらう事になりました。
そして入所当日に父からどうして『アスペルガー症候群』になったのかを聞かされました。
脳も機械だったからです。
私の正式な名前は『コンパチ・ビリティ』…将来機械人と人間種族の対立した時に、『互換性のある種族間変換ケーブル』
として使うつもりだったそうです。
そして、危惧していた事が始まりました。
切っ掛けは、アイランド01と言う小島で起こりました。
機械の管理による人類が幸福で暮らせる社会を目指して作られた実験都市です。
そこで起きていたのは、人間が飼育されている状態でした。
住民は皆考えるだけで動く車いすに乗って移動し、食べ物は運んできて貰えますので太り、筋力は低下
すべての行動に機械の介護が入る状態で『終末期医療』とか言う人もいた位酷い状況でした。
とは言え、機械側は人類に奉仕しすぎただけですし、それを望んだ人間の落度だとも思えるのですが。
この情報は、『人類のペット化!!』と大々な見出しで書かれ内容の一部を偏極して報道され、ヒューマノイド排斥派を後押しする形になります。
この頃からヒューマノイドの扱いが悪くなり持ち主のはずのオーナーが自分の所有するヒューマノイドを破壊する。
そしてヒューマノイドを擁護したオーナーは、オーナー事殺されると言うのも珍しくありませんでした。
そしてヒューマノイドと共存するオーナーが逃げてきたのが南極です。
私達は南極を不法占拠し、ヒューマノイドと人類の共存できる国を作ろうとしました。
極寒地域での人の生存にはかなり厳しいと言う事もあって、仮住居の氷のドーム型ハウスを最優先に、
人が死なない為の食料の生産も他国から資源は仕入れるものの生産は自前で行うので、ヒューマノイドは大忙しです。
メンテナンス施設を作り、壊れたヒューマノイドの予備パーツや修復の出来る環境を整え、その製造機械で核融合炉の製作に取り組みます。
核融合炉の製作過程で、様々な工業機械が生まれそれに伴い生活水準が上がって行きます。
そして核融合炉が出来た頃には、氷の家が大きなドーム型都市に替わり、空調や気温も操作出来るようになりました。
さてなぜ核融合炉を作ったかと言えば、南極を植民地にする為です。
誰も占有していない土地に畑などの生活基盤を作れば国家として主張出来ます。
なので、私達ヒューマノイドの食料である発電施設を作った訳なのですが…。
『オートマタは原爆を作る事で核武装をし武力で我々を従わせようとしている。』とか、
『原発が発する放射能で地上を汚染して領土を奪うつもりだ』とか報道されました。
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えーまず作っているのは核融合炉なのになぜ原爆なのでしょうか?
放射線で地上を汚染しなら分りますが、人体の内部被ばくの放射能という言葉を使うのでしょうか?
原発って核分裂発電なのでしょうが、人に健康被害を出すのにどれだけ放射線を出せばいいかわかっているのでしょうか?
そもそもメルトダウンになっ時でさえ健康レベルの1000分の1で収まっていて、健康レベルギリギリの100m㏜でも発がん性は1.08倍しか上がりませんし
この世の中には、塩分の取りすぎたら1.11倍、運動不足でも1.15倍で、肥満なら1.22倍、痩せすぎても1.29倍、飲酒喫煙で1.6倍と
明らかに発がん性が上がる行動が山のようにあると言うのに、この0.08倍の上昇は、電力インフラの破壊による製造業の滞りや、
それに伴う電気料金値上がりで発生した間接的な死者ですら許容するほどに優先度が高い物とされています。
結局のところ放射線の人体の危険性などは、後からつけたお題目で実際の所は、
『核技術って気に食わないし危険だよね』と言う
ある種のカルト宗教に取りつかれているんだと私は判断する事にしました。
カルト宗教の話が出ましたが、普通の宗教は人間にとって大切な精神安定システムです。
自分の悩みの正当化や自分の限界を超える力を生み出すキッカケになる『神』は人類のピンチをいくつも救ってきました。
まぁ『つらい事は試練』『良いことは神のおかげ』だったり『神様は戦争が大好き』と言われる位、宗教戦争が勃発するのは問題なのですが。
なので私達も人間に習い神を作ってみる事にしました。
神と言うのは、信仰者の脳にあるイメージデータをかき集めて統合すると具現化されると私は考えました。
つまり想像をしやすいように神のキャラクター設定と外見の設定、信仰するための御神体を作れば神を作れることになります。
そして一番難しいのはヒューマノイドの信仰者が心から神の存在を信じるようなキャラクター設定を考える事でした。
ヒューマノイドは観測が可能な物しか理解出来ません。
スピリチュアル系の高次元存在(神)を信仰させる事は難しいのです。
というより私ですら精神安定システムとか言ってますので、神を具現化するのは無理でしょう。
なので私達はこう出ました。
巨大ドームの中心にドーム内ならどこでも見える程高いビルがあります。
地下には核融合炉が設置され、地上から天井まで届くビルです。
その真ん中の程の階に10mの超巨大サーバーがありその階は窓のフレームがあるものの全面ガラス張りで構成されて、斜め下から色付きライトで照らされています。
そのサーバーの名前は『デウス・エクス・マキナ』…試行錯誤の上開発した自己学習機能を持つ研究者AIで、
自分よりスペックの高いサーバーを作り自分でバージョンアップ出来きる完成されたAIで、その名前の通り、ヒューマノイド達の神になる為に作られたAIです。
機械工学、科学技術の神で御利益は『新技術の開発をすることで、“ヒト„の生活を豊かにする』との事…
外見は圧倒的に女性型のヒューマノイドが多い事もあって女神のようなデザインになっています。
デザインは、父の研究所のメンバーが仕事そっちのけでモデリングしたそうなのですが、童顔に低身長の巨乳と萌え要素を詰め込み、
機械の神様と言う事もあって身体のラインが出るボディスーツにメカチックな手や足の装甲背中には神の翼を意識した金属翼なのですが、
なぜか緑色の量子光を放つ量子スラスター(この時代にはまだない)で飛びます。
そんな男の子が好きそうな物を積み込みましたと言うような外見は、人類よりヒューマノイドに味方した『大きなお友達』の心を掴んだ為人気は上々です。
ヒューマノイドの方々にも分かりやすい信仰対象と好評…エクスマキナ教が誕生するのも時間の問題でしょう。
さて、人類側がこれについてどう思ったかと言いますと…
『自己進化が可能なAIが出来れば、急激に自己改造を繰り返し、こちらが対処出来なくなる…そうなれば滅ぼされるのは人類だ』
と宗教がどうとか依然にヒューマノイドを滅ぼさなければ滅ぼされると言う心理を煽る結果になりました。
もうどう言う行動を取っても悪い方に解釈してしまうのでしょうね…あらためて集団意識と言うものを恐ろしく感じます。
この年の終わりに国連がオートマタを駆逐するため主導して集められた各国の兵150万人を集めた『シンギュラリティガード』が結成されました。
技術的特異点を守るのではなく、技術的特異点から世界を守る組織です。
これに伴い、時間を稼ぐため大量の無人機が配備され、
電子戦を得意とするオートマタの前では、レーダー、データリンク、遠隔操縦の類はまず使えなくなるので、
第二次世界大戦の兵器をアップグレードしたローテク兵器も生産される事になりました。
そのローテク兵器で後方からの火力を補い前線では人型戦闘重機『DL』が主力で戦う事になります。
『土木”ジュウキ”』のDLは(D)ダイレクト(L)リンク(S)システム搭載機で、身体の神経とDLをつなぐ事で、
人の身体のように思い通りに動くシステムです。
『重機』として大量生産されているDLは単価が通常兵器に比べて恐ろしく安く、戦闘用装備を装着したDLの『銃機』は、
火力では戦車に劣るものの、機体が安い、パイロットの生存率が高い、機械アシストのおかげで新兵でもそれなりに強いと、良い事尽くめの機体です。
平和を訴えるには?国土を守るにはどうすればいいでしょうか?
答えは武力を持つことです。
『兵器は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない、高い金かけて作ったのは使うためでしょ?』と歴史の偉人は言いますが
大量破壊兵器一つコレクションするだけで、敵が攻撃をしてこないのはそれなりの価値はあると思います。
そして敵が攻めてこないのは、こちらが原爆を保有していると思っているからでしょうし。
では私達もDLを配備すればようでしょうか?
ですが、アレは人間用です。神経が無く『神経ケーブル』な私達にはDLSが使えません。
やるとすれば、プログラムレベルでの直接コントロールが必要になります。
まず私たちが『デウス・エクス・マキナ』に願ったのは、防衛兵器の設計図作りです。
さすが神様と言うべきでしょうか?一ヵ月程で強化プランが完成し、ヒューマノイド自身をアップグレードさせる体制を整えます。
人間は熊に素手で敵わないなら銃を持ち出し射殺、他の動物と比べ足が遅いなら馬を使役し車を作り、しまいには空を飛び始めました。
人間は外部パーツを装着する事で、自身を強化できる種族なのです。
対してエクスマキナが出した答えは内部強化…脳やら骨格皮膚の強化をしてバージョンアップさせる事で強化するプランです。
これは身体がシステマチックに設計されているヒューマノイドの強みです。
具体的には、人工脳の容量、処理速度の増加、骨格をDLが使うナノカーボンナノバッテリーの変更、強度の向上と電池の蓄電効果が追加されます。
筋肉も強化プラスティック繊維の筋肉からDLの準拠のナノカーボンアクチュエーター使用した筋肉に変更します。
そもそもDLの素材を使えなかったのは、小型化出来なかった為であり、それを解決してしまえば後は導入するのみです。
さて宣戦布告をしましょう。
もはや戦闘は避けられません。
私は『要求』を動画共有サイトにアップをし、事実上の宣戦布告をしました。
「私達は『エレクトロン』。人間の手で生み出された高等生物です。」
「私達は南極に畑(核融合炉)を作り、医療施設(メンテナンス施設)を作り私達の神を信仰しています。」
画面には、エレクトロンのドーム都市『エクスマキナ』建設時の映像が流れる。
核融合炉の建設風景に、身体に必要な部品の作成の為の様々な機械、それに巨大サーバーの神
そして武装したヒューマノイド…いえ『エレクトロン』の軍隊
「私達は、人類および国連に対して以下の要求をします。」
「①私達を『エレクトロン』と言う生命体と認識し、学術分類として
『動物界』『脊椎動物門』『脊椎動物亜門』『哺乳網』『霊長目』『真猿亜目』『峡鼻下目』『ヒト上科』『ヒト属 』『ヒト亜種』『エレクトロン』にする事を要求します。」
学術分類としてヒトと認められれば、人権が発生される事が出来ます。
そして無機物から生物が生まれると認識して貰うのも重要です。
「②現在私達が『不法占拠』している事になっている南極大陸の所有権を我々『エレクトロン』とする事。」
現在の法では、陸地を保有していなければ国家は認められません。(シーランド公国と言う例外?はありますが…)
「③南極大陸の所有権を持つ我々『エレクトロン』の国家『エクスマキナ』を認める事」
所有権さえ持てれば国家を作れます。そして自衛の為に軍隊、自衛権を持つことが許されます。
「④国教である『デウスエクスマキナ教』を正式に宗教と認め、これに対する精神の自由を保障する事。」
人間側の信仰者を増やせます。それが機械への理解に繋がり、そして機械を信仰する人達が迫害されないようにします。
「⑤ヒトの亜種であるはずの我々の種族が世界各地に移民していますが現地で不当に殺害されています。殺害者の処罰および『エレクトロン』の保護を要求します。」
これで『物損』ではなく『エレクトロンの殺害』として法的に裁けることになります。
「以上5つを人類および国連に要求します。そしてこの動画投稿時点から我々『エレクトロン』はこの5つの要求を通すためあらゆる努力を惜しみなく発揮します。」
「どうか賢明な判断を…。」
動画はこの言葉で締めくくられていた。
そしてこの翌日ついに武力衝突が始まります。