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マイティーの秘密

 聖が、マシキにきてどれだけ日が経ったのだろうか?


「えーっと、多分7日ですか?」


「······。」


 マイティーは、聖のスマホを見ながら色々な画像を記憶している。勿論、ここは圏外で使えないのだが、撮影した動画や写真は見る事は出来る。


「お前が、魔法を使えるのはわかった」


 マイティーらマシキに住むマシキ族は、それぞれ色々な魔法を使える。その大半は、生活に関わる日常、医療、狩猟魔法位だが···。


「はい、使えま〜す! こうかな?」


 スマホの操作も覚えるのか速かったマイティーは、学校の友達と写した写真を見ては、何やら呟いて聖の服を出して(コピー)していた。


「どうですか? 似合いますか?」と今度は自分が可愛いと思ったクラスメイトの着ていた服まで見事に···見事にコピーしてる。


 シャツだけではない、写真では見えていない靴下や···アレまでも···


 聖は、マイティーが出した服の中にピンク色のショーツが出た時は、鼻血が出るかと思った位にドキドキもしたし、固まったりもした。


「そろそろやめたら? また立てなくなるんじゃね?」


 魔力を使い過ぎると立てなくなったり、瀕死の状態になるエルフもいると聞かされて、聖はマイティーが心配になる。


「は〜い。でも、このスマホって凄いですねぇ!」とマイティーはそう言うが、人間からしたら魔法を普通に使える奴らが羨ましいと思うよ、とは言わないでおいた。


 マイティーは、寝転びながらスマホをクルクル回したり眺めてた。


(新しいオモチャに戯れる仔猫みたいだ。エルフだけど!)



 ここにきて2日目の日。


「ちょっと待っててくださいね」とマシキのマーケットへ行く準備をしていた時に、マイティーがニコニコしながらまた奥の部屋へと消えた。


 なんとなく昨日マイティーが、何故自分の制服を?どこから出した?と知りたくなり、コッソリと部屋を覗いた。


「···っな!?」


 聖は、薄暗い···いや、一角だけ眩しく輝く空間から···服と思わしきものが半分出かかっていた。


「あ···っ、あ"ぁぁぁぁぁっ!」


 今にも泣きそうな顔で、マイティーは手を伸ばし服を掴もうとしたが、時既に遅く···


 服は、その光る空間へとまた戻っていき···


「うぅぅぅっ···」と泣き腫らした目で、聖を見る。


「じゃ、じゃ、昨日の売上で好きなもの買っていいから! な!」と言っても機嫌が戻る事はなく、聖は昨日あげたポッチーを目の前に差し出すと、


「いいんですか? 食べても」と聖を見上げ、頷くと2本だけ取り出して食べて機嫌が良くなった。


(単純だけど、女っていつもこうなの?!)


 いまだ女の子と付き合った事がない聖にとっては、マイティーの言葉や行動がどれも新鮮ではあったが···。



「─つか、ほんとにこの魔法だけなんだよな? マイティー」


 聖は、麻袋を前籠に入れながら、マイティーに聞いた。


「うん。そうだよ。私、一般的な魔法と今のしか···」


 言葉を濁したマイティーだったが、自分が昔から使えたのはそれだけだったし、複製の魔法は出来るだけ使わないようにしていた事やそれを知ってるのは二人しかいない事を聖に伝えた。


「その二人って?」


「私のお婆ちゃんと···妹のシルビィだけ。さ、行こっか! 早くしないと売り切れちゃうもの」


「あぁ。そうだな! って、そうじゃねーだろっ! いつになったら、俺元の世界に帰れんの?!」


「さぁ。お婆ちゃんに聞かないとわかんないかも···」


(─っておい。あんたのお婆ちゃん何様?!)


「わかりません。けど、街の悩みとか困りごとがあった時、凄い人がいつも来てましたから···」


(─ってこいつは、また!)


 マイティーは、魔法以外に“透視”が出来る。彼女の父親が、その能力の持ち主で、魔法はマイティーらマシキ族だけ。


「だから、今度連れてきますから。今日は、その為の買い物もしたいです。長いから···」


 家からマシキの街のまでは、5kmはあった。自転車に付いてるメーターで距離を計るとそう出ていた。


「でも、魔法使えるならいつもそんな重いの背負わなくてもいんじゃねーの?」


「駄目です。そういう事で使ったら、罰が当たりますから。って、よくお婆ちゃんが言ってました」


 荷台にマイティーを乗せようとしたら、今日は歩きたいと言い、聖と一緒に並んで歩く。


「ヒジリさんが、住んでるくにってどんな処なんですか?」


 聖のシャツの裾を掴んで歩いているマイティは、見上げて聞いた。


「どんな国って。この世界よりも発達してて、全てを見たらおまえ呼吸困難になりそうな物ばっかあるよ」


 笑いながらそう聖は言ったが、実際心は穏やかでなかった。


(あの日が、15日だから2日経って、今日は17か? だとしたら···)


 聖は、チラッとマイティーを見るも、マイティーは真っ直ぐ前を見て歩いていた。


(テストもだけど、母さん心配してるだろうな)


 ちょっとだけ、センチになる聖。



「自転車···あっち行きましょ」


 マイティーは、聖の先に立って歩くと、聖もその後に付いていった。


「この葉っぱで隠して、結界張ります」


 マイティ。の背丈ほど有りそうな大葉を数枚自転車に被せると、マイティーは目を閉じ何かを呟きながら、指で何かを描いていた。


「これで大丈夫です。行きますよ〜」


 マーケットは、前に来た時よりもかなり賑わっていた。話を聞くと(嫌でも耳に入るのだが)、なんでもマシキ、ニシキ、サシキの3つの街がある“フォレスト”は、若くして国王になったフォレストとその妻の王妃がいる。で、来月その王妃の誕生日らしく祭りをするとか。  


 聖は、チラッと自転車を隠した場所を見たが、だれもその場所に近付こうとする者はいなかった。


「混んでるな···」


 人混みに押されるような形で歩くも、背の小さなマイティーにとっては、動きにくいのか必死に聖のシャツを掴んでいた。


 野菜や果物、パンや麻紐等を買い、それらを麻袋に入れては背負う。


「いや、凄いね。大晦日みたいだ」


 木陰に腰をおろし、吹き出る汗をシャツで拭う聖に対し、マイティーは汗すらかかない。暑さには強いのだろうか?


「オミソカ?」


 マイティーも聖の隣に腰を下ろしながら、聞く。


「オミソカ、じゃなく、大晦日。俺が住んでる国には、毎月何かしらの行事やイベントがある。こっちだと、ほら王妃の誕生祭並みのやつ」


「そうなんですか。賑やかですね」


 ふたりのんびりと行き交う人や必死に商品を売ろうとしてる店主の声を聞いている内に、トンッと肩にマイティーの頭がのしかかる。


「ったく···」


 マイティーは、まつげが長い。視線をその先に合わせると、まぁ···胸も、だけど。身体が小さな割に、かなり発達してるのがよくわかる。


(戻りたい。けど、テストは受けたくない)


 暫くそのままにして、街を眺めてる内に聖までもが眠ってしまい···。


 ふたり夕陽をバックに家路へ。



「そういや、これなんだ?」


 マイティーの家の玄関先に釣らされていたものを指でつつく。カランカランといい音がするから、出入りする度に聖は鳴らしていた。


「お守りです。悪いことが起きないようにって、お婆ちゃんが作ってくれました」


(風鈴の木製バージョン?)


「へぇ。そういや、マイティーにはお父さんとか居ないの?」


「はい。もう二人共いません···」


 聖よりは、幾分年下に見えるも、彼は彼女の年齢すら知らなかった。


「マイティーは、何歳? パッと見、俺より年下には見えるけど。俺、16歳」


「私は、14です」


(14で、あの身体?! やば···)


 マイティーの顔が、紅く染まるのがわかり、聖は慌てて話題をすり替えた。


「俺、腹減ったな。ね、俺に出来る事ってある?!」


 普段母さんや父さんからは、“横着者”だぁ、“怠け者”呼ばわりされてる聖が、自らそう言うとマイティーは少し考えて、


「じゃ、一緒にご飯作りますか?」と誘ってくれた。


 手狭な台所の中に、大小が立つと余計に狭さを感じるが···。


「ホウオウドリ? これが?」


「はい。これを食べると魔力の回復が早くなります」


 虹色の色がついた卵をマイティーが、手慣れた手付きで割ると、中身は普通の卵黄卵白だった。


「鶏よりデカい···」


 ホウオウドリ自体が大きいのか、およそ鶏の卵2個分の大きさがある。


「ムクドのステーキとスープは、ラクラでいいわね」


 麻袋から取り出し、テーブルに並べてある品をしまうもの、使うものと分けながらテキパキと動くマイティー。


 卵の入った器を持ってる聖···。


 結局、この日の夕食もマイティーがほぼ作り、聖は渡されたものを並べただけで終わった。


「マーケット行って思ったんだけどさ、なんか男が少ない気がするんだけど。気のせい?」とムクドのステーキを頬張りながら聞いた。


「マシキでは、オトコになると兵士になりますからね」


 ムセそうになる聖は、グッと堪えながらも、


「オ、オトコ?! ま、まさか···」


「私は、あと6年経つとオンナになりますよ」


「6年? あ、20歳か! あせったわ。つか、兵士って、ここ戦争とかすんの?」


 聖は、戦争は映像や資料でしか知らない。外国の何処かでは行われているが···。


「わかりません。ただ、お婆ちゃんがよく言ってたから。私のここを摩りながら」と頭に生えてる小さな山2つを指さした。


「なんだろうな。角が生えるエルフなんて聞いたこともないし···」と言っても聖の知るエルフは、小説の中のでしかない。


 実際にこうして見ると、人間よりも強い気がする。色んな意味で!


「あと、お願いがあるんですけど···」


「はい?」


「今夜は、満月なんです」


 聖は、コップに注がれたコペン茶を飲もうと口をつけた。


「だから?」


「ですから···その···」


「うん?」


「同じ屋根に住む男女は···はぁっ···一緒にお風呂に入るんですっ!」


 ブホッ···ブハッ···


 飲んでいたコペン茶が···テーブル全体に広がった。マイティーの顔や料理にも···


 だが、マイティーは嫌がる事もせず、紅い顔で聖に問う。


「一緒に···入ってくれますか?」


 男としては、最大のチャンス到来っ!!



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