出会い
最近忙しくて、片手間で書いてるので変なところが多いかもしれません
黄色い果実の着ぐるみが派手に転んだことで、周囲の注意はその者へと変わった。
しかし、突き飛ばした当の本人たちは周囲の変化に気が付くことなく、未だに押し問答を続けていたが、この争いは突然おさまった。
一人の女性の声の黄色い果実によって。
「いい加減にしなさいっ!!周囲の迷惑になっているのがわからないの?第一、貴族が他人にぶつかって謝罪の一つもないなんて、貴族の品位を疑うわ。自身の家の悪口を言われて不快な気持ちになるのはわかるけど、場所を弁えなさい。他人にどんなに悪く言われようと、自分が信じる事を信じなさい。賄賂を受け取っているかどうかなんて本人にしかわからないのだから」
黄色い果実は腕組をしながら、二人に向かって堂々と怒りを露わにした。
その後すぐに、学院の先生方が駆けつけ事態は鎮静化を図っていった。集まっていたやじ馬たちも散らばり、舞踏会は再び幕を開けた。
ゼリウスは一人で会場全体を会場の隅っこから眺めていた。そして、先程からゼリウスの視線は黄色い果実に向けられていた。ゼリウスは黄色い果実に興味を抱いていた。
(どうして、そんな考えをもてるのだろう…)
貴族社会は周囲からの評価がかなり重要視される。この事はゼリウスが身をもって知っている。今回の騒動の原因もゼリウスには理解できた。しかし、黄色い果実はそんな考えを微塵も感じさせない発言をした。多くの貴族はあの言葉を馬鹿にしたり、無視したりするだろうがゼリウスは違った。純粋な興味を抱いたのだ。
ゼリウスは同じく一人で会場の端で立っている黄色い果実の隣まで移動したが、話しかけるタイミングを伺っていた。
「さっきからチラチラ見てくるけど、何か用?」
「ふぇ、い、いや。面白い衣装だなって思って」
黄色い果実はゼリウスの視線に気がつた様で、話しかけてきた。
突然話しかけられたゼリウスは驚き、変な声を出してしまった。
「これはバナナって言う果実らしいわよ。丁寧に教えてくれた人がいたわ。私はあなたの衣装の方が面白いと思うわよ」
バナナは淡々とした口調で話をする。ゼリウスは自分の衣装を鏡で見ていないので、後で見る事を心に決めた。そしてゼリウスは自身の疑問を聞いた。
「さっきの喧嘩なんだけど、どうして周りを気にするな見たいな事言ったんだ?周りから悪い事を言われたら色々苦労するだろ」
「それは確かに苦労するわね。でも、世の中全員に理解されて、良い様に思われようなんて不可能なのよ。だったら、本当に理解してくれる人を数人作って、その人たちに信じてもらえれば問題ないわ。貴族なんだからそれくらいの心構えじゃないと大変なんじゃないの?」
「そう思えるのは君が強い人だからじゃないの?きっと君が良い家族や、友人が居るからそう思えるんだよ」
ゼリウスは素直に自分の感想を述べた。バナナはその感想に穏やかに答えた。
「別に私は強くなんないわよ。だた、私を私として見てくれる人達がいるだけよ…」
「そっか….」
「周囲の噂にばかり気を取られて生きていくなんて、辛いじゃない….。だから、あなたももし変な噂を立てられているなら気にしない事ね」
バナナはそう言うと、じゃね、と言って離れていった。
「ま、まって」
ゼリウスはなぜかバナナの腕を掴んで引き留めた。ゼリウスの中で“答え”が欲しかったのだろう。彼女は悪い噂に対する心構えを教えてくれたが、本当に信用できる人の見つけ方は教えてくれなかった。
「君はどうやってその人たちと出会えたんだ?もし良かったら俺にも教えてくれ!!」
「多分、探して見つかるものではないと思うわ。もし、今あなたに仲の良い人がいるなら、その人がなぜ自分と仲良くしてくれているのかを考えなさい。もし、地位や財力目当てなら何となくわかるはずよ」
ゼリウスは掴んでいた腕を話すとバナナは、今度こそじゃね、と言って人ごみの中に姿を消した。
ゼリウスの頭の中には暫く彼女の言葉がグルグル回っていた。