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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第6章・奴隷悶着からの神殿訪問
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ハイクラスのステータス

 昨日の狩りはロクな魔物と遭遇出来ず、誰もレベルが上がらなかったこともあって、早々に打ち切り、宝瓶温泉で過ごすことになった。

 そこで場所が悪いんじゃないかって話が出たから、もっと外海を進んでみようってことになり、明日は朝からハイディング・フィールドを解除することにもなったな。

 沈まないとはいえ、魔物を警戒しないといけないから、朝から緊張が続くってことで、その後はみんなヤる気で大変だったが。

 それでもアリス以外は早々に撃沈してるし、そのアリスも最終的にはダウンしてるんだが。


「ねえお兄ちゃん。新しい奴隷を買うつもりはないの?」


 移動中、突然ルージュにそんなことを聞かれた。

 新しい奴隷って、なんでまた急に?


「なんで?」

「だって、ねえ?」

「ええ。私達5人では、そろそろ体が……」

「優しくして頂いているのはわかりますが、ハイクラスの体力や精力を受け取めるには、5人では不足していると言いますか……」


 それは俺も気にしてたんだが、奴隷なんて簡単に増やすもんじゃないと思う。

 5人と契約してる俺が口にしても、説得力には欠けるとも思うが。


「確かに浩哉やあたし達との相性もあるけど、あと4人ぐらいは増やしてもらわないと、こっちの身が持たないわよ」


 具体的な人数をアリスが口にするが、それだとみんなの相手をする回数が減るんだが?


「進化すれば別かもしれませんが、現状では辛いので。アリスが早く進化したがっているのも、そういった理由もあると思いますし」

「そうなの?」

「皆無とは言わないわよ」


 そうだったのか。

 これは今夜から、少し抑えておいた方がいいかもしれない。


「あと奴隷を増やした方がいいかもって思った理由だけど、東大陸や南大陸の情報を得るためっていう理由もあるわよ」

「ですから、今すぐに奴隷を増やして頂かずとも、しばらくは大丈夫です」

「だけど辛いんだよね?」


 アリスとエリザの提案は、俺にとっても悪くはないと思える。

 みんなは北大陸出身だし、東大陸や南大陸の存在なんて考えたこともなかったんだから、そっちの情報なんて知ってる訳がない。

 だから現地で奴隷を買うっていうのは、情報を得るための手段としてはアリか。

 他の大陸でも、奴隷はトレーダーズギルドが管理しているし、通貨も言語も同じだから、戸惑うこともない。


「辛い時もある、と言うのが正確ですね。体調によっては遠慮させて頂くこともありますけど、辛いのはそれで人数が減った時が多いですから」


 ああ、なるほど。

 魔法で避妊しているとはいえ、生理の周期はちゃんとあるから、日によっては一緒に寝ないこともある。

 周期には個人差もあるけど、何人かの周期が重なることもあるから、その場合は負担が大きいってことか。

 もちろん俺の気分が乗らない日もあるんだが。


「それは分かったけど、無理に奴隷を買うつもりはないぞ?俺はもちろんだけど、みんなとも相性悪かったらギスギスするし」

「私達もそれは望みませんよ。ですけどゼーレテンペルにもトレーダーズギルドはありますから、見て頂くだけでも考えてもらえませんか?」

「それはもちろん」


 そういう事情なら、新しい奴隷を買うことも検討しないとな。

 アリスが言う4人っていう基準は分からないが、買うとしても1人か2人ぐらいになるが。

 あとは相性の良い奴隷がいるかどうかだけど、こればっかりは直接見てみないと何とも言えない。

 俺だけじゃなくみんなとの相性もあるから、絶対に手は抜けないな。


「奴隷についてはゼーレテンペルに着いてからになるし、今はこっちが優先だな。丁度来てるし」

「1匹だけか。これはちょっと期待できるかもしれないわね」


 アリスが不敵な笑みを浮かべているけど、実は俺もそう思ってる。

 1匹だけってことは単独でも敵を蹴散らせる個体っていう可能性が高いし、そういった魔物はランクも高いことが多い。

 外海でランクが高い魔物となると、筆頭となるのはサウルス種だが、他にも候補がいない訳じゃないから、何が来てるかは姿を見るまでは判断できないっていうのは相変わらずだが。


 海中から迫ってきている魔物は、そのままアクエリアスに向かって突っ込んできたが、侵入不可の効果で弾かれる。

 それに怒り狂ったのか、魔物は海面に浮上し、その姿を現した。


「エラスモサウルスか。これは良い魔物が現れてくれたわ」


 アリスが満面の笑みを浮かべて、ディバイン・ジェミナスを構える。


「悪いけど、これはあたしが貰うわよ?」


 こいつを倒せば進化できるかもしれないから、アリスのやる気がすごい。

 みんなもそれは理解しているから、完全にアリスに任せるつもりになってるな。

 俺もそうだし、アリスが進化できるかどうかなんだから、ここは任せよう。


「無理だけはしないようにな?」

「分かってる。じゃあ、行くわよ!」


 言うが早いか、アリスはディバイン・ジェミナスのアタックスキル:ジェミナス・トルネードを使った。

 単体攻撃ではあるが、渦巻く風の刃は水中の魔物にも効果が高い。

 だがアリスはそれだけに留まらず、ジェミナス・トルネードで発生している竜巻に第4階梯雷魔法サンダー・ストームも重ねた。

 風刃と雷刃に晒されたエラスモサウルスは、海面をのたうち回りながら苦しんでいる。

 ジェミナス・トルネードによって発生した上昇気流に逆らえず、海中に潜ることもできない。


「アタックスキルと魔法を同時に使ったのか」

「アタックスキルは強いですけど、癖も強いですから、魔法と同時に使うのは難しいですよね」

「ジェミナス・トルネードだからっていうのもあるけどね」


 それはあるかもしれないな。


「みんなも、使えるかどうかは確かめといた方がいいわよ?」

「アリスの言う通りね」

「そうですね。後程試してみましょう」

「ええ。それじゃああたしは、このまま一気に倒すとするわ!」


 そう言ってアリスは、第6階梯火魔法エクスプロージョンまでも重ねた。

 風と雷の竜巻の中に放たれた真紅の炎は、それらすらも吸収し、エラスモサウルスに命中すると同時に大爆発を起こす。

 侵入不可が無かったら、アクエリアスにも被害が出てたんじゃないかって思えるほどすごい爆発だったな。

 そんな魔法の直撃を受けたエラスモサウルスは、木端微塵っていう言葉が相応しいほど原型を残していなかった。


「……ごめん、やり過ぎたわ」

「まあ無事に倒せてるんだし、別に売るつもりがあった訳じゃないから、次から気を付けてもらうってことで」

「ええ、それはもちろんよ」


 さすがに木端微塵だとブルースフィアでも買取出来ないと思うが、念のためにやってみよう。

 あ、できるのか。


「買取も出来たし、特に減額もされてないな。さすがはチートってとこか」

「それはそれですごいですね」

「俺もそう思う」


 原型を留めてないばかりか本当に粉々だから、いくらブルースフィアでも無理だと思ってたんだが、倒した魔物の買取ってことになるから、一部でもあればいいってことなのかもしれない。

 それでも減額すらないとか、デタラメ過ぎるんじゃないかな。

 助かるからいいんだが。


「ところでアリス、レベルはどうなった?」

「上がったわ。無事にハイアルディリーにも進化できたわよ」


 ステータス画面を開いて確認していたアリスだが、とても嬉しそうな顔をしている。

 良かった、進化できたか。


「レベルは101ね。だけどステータスも、今までの1,2倍ぐらいになってるから、今までとは感覚が違うわ。進化ってすごいわね」


 俺もそうだったし、ハイクラスに進化すると多くのステータスがレベル100の数値の約1,2倍になるから、進化前と後ではステータスに大きな差が生じる。

 しかも俺達の場合、ブルースフィア・クロニクルの装備品で更にブーストしてるんだから、さらにとんでもないことになってるし。

 こんな感じで。


挿絵(By みてみん)


 レベル100のステータスは、個人差もあるが、平均して70~90ぐらい、装備によるブーストがかかっても100前後らしい。

 素の状態だと、アリスは一部が平均よりちょい上ぐらいのステータス値だったかな。

 ところが俺達は、ブルースフィア・クロニクル装備群のブーストもあるから、一番レベルの低いエリアでも、レベル100と同等どころか、ハイクラスに匹敵するステータスもあったりする。

 その上でアクエリアスやアクアベアリなんかに乗って狩りをしてるし、装備も壊れたりしないから、命の危険を感じることはほとんどないな。


 ちなみにLUK値のみ極端に低いが、このステータスは上昇どころか下降する可能性もあり、最高値は100なんだそうだ。

 運気は人の意思じゃどうにもできないから、運の悪いことがあった直後に幸運が舞い込むこともあるし、その逆だってあるため、日によって変動する数値でもある。

 実際みんな、奴隷に落ちた直後はLUK値1桁になったらしいが、俺と契約したことで上昇したそうだからな。

 エレナが少し低いが、これはお父さんのことがあったからで、これでも回復してきてる方なんだよ。


「アリス、おめでとう」

「ありがとう、姉さん。じゃあ次は、姉さんもレベル上げましょっか」

「もちろん上げるけど、私はそんなに急いでないわよ?」


 進化した妹を祝福するエリアだが、確かにエリアはあまり積極的にレベル上げをしようとはしない。

 普段の狩りでも一歩引いてるし、トドメを刺すことも皆無に近い。

 現状に十分満足してるし、ヘリオスフィアの常識を覆す勢いでレベルが上がっていくから、そんなに慌てなくてもいいって考えてるみたいだ。

 実際その通りだし、エレナもそんなところがあるな。

 エリザもどちらかといえばエレナやエリア寄りの考えだが、狩りの際は積極的に前に出るし、何より今は進化が見えてきてるから、いつもよりさらに積極的だったりするし、ルージュ何をするのも一生懸命だ。

 それがレベルにも表れてるだけなんだが、ちゃんとみんなレベルは上げてるし、常識じゃ考えられない程のスピードでもあるから、俺としても特に強要するつもりはない。


「アリスも無事に進化できたし、今晩はいつもより豪勢にいこうか」

「え?本当に?」

「当然じゃないか」


 進化なんておめでたいことなんだから、これを祝わずして何を祝う?

 ブルースフィアでも高級料理は売ってるが、一度買うと数週間は店に並ばなくなるから、こういったお祝い事に使うべきだろう。

 ああ、酒も良いのを用意しないとな。

 ちなみに日替わりなんてのもあるが、こっちは定番のメニューが少し安くなるぐらいだから、食おうと思ったらいつでも食える。


「ありがとう、浩哉」

「お礼はいらないって。俺としても、助かるんだから」


 ゼーレテンペルの神殿で創造神様に感謝を捧げた後は、東大陸に向かう予定だ。

 東大陸は、ここ数百年争いもなく平和が続いているが、魔物は当然のようにいるから、そっちへの対応が優先されている。

 だから俺達も厄介事に巻き込まれる可能性は低いんだが、もう1つの南大陸はそうじゃない。

 人族至上主義のノウム・インフィニタス帝国と竜族至上主義のリヴァイアス竜帝国という二大帝国が覇権を争い、常にどこかで小競り合いが起きている。

 しかも獣族や妖族は奴隷同然の扱いを受けてるから、厄介事に巻き込まれるのはほとんど確定だ。

 南大陸に行くのはまだ先だが、それでもアリスが進化してくれたから、厄介事に巻き込まれても切り抜けやすくなったのは間違いない。

 南大陸のハイクラスは、ノウム・インフィニタス帝国のハイヒューマンとリヴァイアス竜帝国のハイドラゴニュート、そしてハンターをしているハイハーピーの3人しかいないから、むしろ俺やアリスを取り込もうと躍起になっている可能性も低くないな。

 どっちの主義も相容れないから、絶対に断るけど。

 できれば南大陸には行きたくないんだが、創造神様からは行ってほしいって言われてるし、文化拡散もあるから、行くという選択肢しかない。

 行くとしても、しっかりと準備をしてからだな。

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