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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第6章・奴隷悶着からの神殿訪問
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航海の予定

 まさかの2度目の神罰を見ることになるとは思わなかったが、ひとまずアリスとエレナの問題は何とかなった……のか?

 まあ、どっちも自業自得だったし、俺もけっこうムカついてたから、この結果は当然として受け止めてるが。

 人が死んだり奴隷以下の存在になったりっていう扱いなのに、平然とできる俺がちょっと怖いけど。

 日本にいた頃は、自分が生きていくのに精いっぱいだったし、それなのに周囲には冷たい人も多かったから、感覚が少しおかしいんだろうな。


 だけど翌日には、ハンターズギルドや騎士団からも取り調べを受けないといけなかったし、本当に無駄な時間を使わせてくれたもんだよ。

 神罰だから俺達に非がないことはわかってるんだが、それでも状況は把握しておかないと、次の被害が出てしまう可能性もあるからなぁ。

 さすがにこの短期間で2回も神罰ってのは、フロイントシャフト帝国の歴史上でも数えるほどしかないらしいが、事情が事情だからハンターズギルドからも騎士団からも同情されてしまった。

 その取り調べに2日もかかってしまったから、ヴェルトハイリヒ聖教国に行く予定がまた狂ったな。

 明確な予定を立ててた訳じゃないんだが、それでも1週間も予定がズレると、なんか調子が狂うというか、やる気が削がれる。


 だけどようやく解放されたから、明日は買い出しに充てて、明後日出航しようと思う。


「それはいいけど、買い出しはだいたい終わってるわよ?」


 アクアベアリのルーフデッキの温泉で寛いでいると、アリスにそんなことを言われてしまった。


「え?マジで?」

「はい。矢も十分な数が買えましたし、食材も同様です」

「しいて言えば調味料ですけど、そちらも無理に買う必要はないですね」


 そうだったっけか?

 ちょっと思い返してみよう。

 矢は例のバカに絡まれた日に、ハンターズギルドでミスリルの矢を150本買えている。

 本音を言えばもうちょい欲しかったが、これ以上はハンターズギルドの在庫が不足するかもしれないって言われたから、フォルトハーフェンで買うのは無理になってたな。

 食材も、エレナを慰めている間や取り調べの帰りに買ってたから、確かに十分な数がある。

 調味料は、元々ヘリオスフィアには種類が少ないし、シュロスブルクのトレーダーズギルドに伝えた味噌や醤油もまだ出回っていないから、ぶっちゃけるとブルースフィアで買った方が楽だ。

 ……うん、確かに準備できてるって言ってもいいな。


「それじゃあこの後、っていうのも時間的に不自然だし、明日出航するか」

「これ以上フォルトハーフェンにいてもやることないし、それが良いわね」

「ですがヴェルトハイリヒまでは、どれぐらいかけて行くのですか?」


 明日出航には誰からも反対意見が出ないが、何日かけていくのかってことでエリザから疑問が呈された。


「1ヶ月の予定だよ。もう少し早くてもいいんだろうけど、少しゆっくりしたいから、これぐらいが無難だと思ってる」


 エレナの故郷ベイル村までは、普通の魔導船で2週間ぐらいだから、実際にヴェルトハイリヒ聖教国まで行くとしたら3週間ってとこだろう。

 だけどここ数日はあんまりのんびりできなかったから、1週間ぐらいは外海で、誰からの邪魔もない状態でゆっくりしたい。

 落ち着いてきたとはいえ、エレナはまだお父さんの仕出かしたことを引きずってるからな。

 アリスもなんだが、相手のことを良く思ってなかったから、あんまり気にしてないみたいだが。


「なるほど、1ヶ月ですか。確かにそれぐらいかけてもいいですね」


 さすがにエリザは、俺の意図がわかったか。

 なにせエレナは、お父さんの件があってから、本当に辛そうにしてたからな。

 お母さん達も40歳を超えてるから、今後の生活のために俺の奴隷から解放されて、お母さん達と生活しようと考えてたぐらいだ。

 年齢的にも再婚は出来ないし、特にエレナの実のお母さんの方はアンジェリーナ達に面倒を見てもらうわけにはいかない。

 だからって訳じゃないんだが、エレナのお母さん達はシュラーク商会に頼み込んで、住み込みの仕事を紹介してもらうことになったんだよ。

 シュラーク商会の職人は、機密保持のために家族も含めて住み込みで仕事をしているんだが、夫婦そろって職人っていう一家も少なくない。

 だから子供の世話をする託児所みたいなところを作って、そこで働いてもらったらどうかと提案してみた。

 ヘリオスフィアで託児所があるのは東大陸だけだから、ネージュ支店長もしっかりと検討してくれて、それで効率が上がると判断してくれたから、お母さん達は施設が完成次第、シュラーク商会内の託児所で働くことになったんだよ。

 しばらくは様子見ってことで、職人の子供達だけが対象になるけど、業務が捗るようならシュラーク商会の店員の子供達にも解放するって話だ。

 そこまでやって、ようやくエレナも思い留まってくれたから、俺としても一安心だった。


 その後でアリスの元パーティーメンバーのあれだったから、本音を言えばすぐにでもアクエリアスに引き籠りたかったぐらいだ。

 ようやく解放されたんだから、1週間ぐらいゆっくりしてても罰は当たらないと思うんだよ。

 さすがにアリスやエレナには言えないが、エリザは察してくれたようだし、多分アリスもエレナも薄々勘付いてる気がするけど。


「でもさ、実際に行くとしたら、その半分ぐらいの時間で行けるんだよね?」

「半分というか、多分10日ぐらいで行けるんじゃないかな?」


 アクエリアスの最高速度は50ノットだし、外海だろうとなんだろうと構わず、しかも自動操縦で昼夜問わず進めるから、最短距離を突っ切れば1週間もかからない可能性もあるな。


「あ、そっか。夜でも関係なく進めるもんね」

「夜でも進めるって、本当にすごいですよ。しかも魔物や海賊に襲われる心配も無いですから、安全も確保されていますし」


 本当にチートだと思う。

 しかも移動中も、ゲームなんかはもちろん宝瓶温泉もあるし、何よりみんなもブルースフィアが一部とはいえ解放されてるから、暇潰しの手段には事欠かないしな。


「夜の移動をどうするかは、移動中に考えるよ。あとは狩りもだな」


 夜も移動できるのは確かに強いが、早く到着しても困ることになるから、どうするかはその時の気分次第でもいいだろう。

 航行中と停泊中だと宝瓶温泉も雰囲気が変わるから、その違いを楽しむためにっていうのもアリだと思う。

 あとは魔物だが、全く狩りをしないっていうのも問題だし、金策をしない訳にもいかないから、何日かは全力でやることになるか。


「狩りはしたいわね。もしかしたらヴェルトハイリヒに到着するまでに、あたしも進化できるかもしれないし」


 そういえばアリスのレベルは、既に100になってたんだった。

 レベル101になればハイクラスに進化できるんだから、アリスからしたら狩りをしたいよな。


「私達も、遠くないうちに進化できそうですからね。頑張れば、東大陸に行くまでに進化できるかもしれません」


 そういえば、他のみんなも結構なレベルになってたな。

 俺の現在レベルが110、アリスが100、エレナが81、エリアが73、ルージュが75、そしてエリザが93だから、アリスだけじゃなくエリザも、上手くすれば東大陸に行く前に進化できそうだ。

 進化すれば寿命も延びる上に老化も抑えられるし、一緒に過ごせる時間も増えるから、俺としてもみんなには進化してもらいたいと思ってる。


「確かにそうだな。だけど急いでる訳じゃないし、進化できるかどうかは運任せってことにしよう」

「それもそうね。東大陸までとなったら、多分1ヶ月ぐらいは掛かるんでしょう?」


 えーっと、確か北大陸から東大陸までは、最短距離でも2万キロぐらいあるから、アクエリアスの最高速度で24時間航海を続けるとすると……。


「ノンストップだと10日ほどだな。夜は停泊ってことにするなら、その倍以上かかるけど」

「アクエリアスだからこそ、ですね。普通なら、1ヶ月でも無理なのではありませんか?」

「微妙なとこだけど、魔導船なら何とかってとこだと思う」


 アクエリアスの最高速度は50ノットで、しかも自動操縦で寝てる間も動かすことができるから、ヘリオスフィアの常識から考えたらあり得ない程早く到着できる。

 まあ、寝てる間に陸地が見えたりしたら感動も何もないから夜は停泊させておくつもりだし、最短距離だと何もない岬に到着ってことになるから、実際はもう何日か余分に見ておく必要があるし、それも踏まえて1ヶ月ってのが妥当だろう。


 ちなみに南大陸はその半分ぐらいの距離になるから、大陸間の交流が始まるとしたら、北大陸と南大陸の方が早いだろうな。


「あ、そっか。確かに新大陸発見ってことになるんだし、寝てる間に着いてもありがたみも半減するよね」

「確かに、それはちょっとどうかと思いますね」

「だろ?」


 ルージュとエリアは、俺と同意見みたいで何よりだ。


「確かにそうか」

「せっかくの船旅ですし、ハイディング・フィールドがあれば魔物に襲われることもないんですから、急がずゆっくりっていうのは、私も賛成です」

「できることも多いですから、退屈もせずに済みますしね」


 アリス、エレナ、エリザからも反対意見は出ないから、今後もアクエリアスで移動する場合は、夜はしっかりと停泊して、ハイディング・フィールドを張っておくことに決まった。

 さすがに何か緊急の用とかがあったら、話は別だけど。


「じゃあヴェルトハイリヒで礼拝を終えたら、予定通り東大陸に向かおう」

「ええ、楽しみだわ」

「浩哉さんの世界だと、国が変わると言葉も変わると聞いていますけど、ヘリオスフィアは共通言語のようですから、そこは楽ですね」


 それは俺も、エリアの言う通りだと思う。

 地球で何が大変かって言ったら、国ごとに言語が違うことじゃないだろうか。

 海外からの旅行者全員が日本語を喋れる訳じゃないし、その逆も然りだから、高校時代は英語は必須だったし、俺の通ってた高校は更にフランス語の授業まであったぐらいだ。

 だから言語が共通のヘリオスフィアだと、他国どころか他大陸でも言葉が違うってことで悩まなくてすむのはありがたい。

 万が一違ったとしても、俺には全言語理解スキルがあるし、パッシブスキルってことでみんなにも恩恵があるから、少なくとも会話で困ることはないだろう。


「それじゃあ明日からの予定も決まったし、今日は誰からスる?」

「それじゃあ、今日は私から……」

「あたしあたし!」

「浩哉様、わたくしからお願いしますね?」

「私は後でも大丈夫ですから」


 いつものことだが、話がひと段落したら、その後はお楽しみタイムに突入する。

 今日も今日とて、みんな我先にと俺に体を寄せてくる。

 至福のひと時ではあるんだが、最初に誰がってことになると、いつも頭を悩ませる大問題だ。

 不公平が無いように考えないといけないし、それでいて順番を決めるのも何か違うって言われてるから、本当に大変なんだよ。

 特にここ数日はエレナを慰めるために最初にってことが多かったし、こないだはアリスもだったから、エリアにルージュにエリザの勢いがすげえ強い。

 だけど幸せな悩みだと思うから、誰からにするかはしっかりと考えよう。

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