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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第5章・妖王国から始まる魔導大海戦
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精霊の卵

 昨日はみんなの本音を聞けたせいか、いつもより色々と頑張ってしまった。

 正直そんなに想われてるとは思ってなかったけど、心から嬉しかったのも事実だ。

 俺も、自分じゃ分からなかった心の内がはっきりできた気がするから、歯止めが利かなくなるのは仕方がないと思うんだ。

 そのせいで昼近くまで寝こけてしまったが、こんな日もあるだろう。


 今日はトレーダーズギルドで、エリザとの契約達成の手続きを行い、その後で狩りに出る事を伝える予定だ。

 ああ、トレーダーズギルドにはフロイントシャフト帝国でも伝えた味噌と醤油の製法、新しい料理のレシピもいくつか伝えておこう。

 その後はハンターズギルドに寄って、何か依頼があるか見てみるのもいいな。

 ちなみにカタリーナ女王には昨日のうちに伝えてあるし、戦闘が始まるまでは俺もやる事はないから、ちゃんと了承してくれている。


「すいません、トレーダーズマスターに取り次いでもらいたいんですが」

「トレーダーズマスターにですか?え?この封書は……す、すぐにお取次ぎ致します!」


 受付でカタリーナ女王から預かった手紙を渡すと、受付嬢をしているディノサウロさんが慌てて後ろに引っ込んでいった。

 ちなみにエリザの顔は知られているから、今回はフードを被ってもらっている。


 ディノサウロさんは10分もしない内に、同じ女性ディノサウロさんを連れて戻ってきた。

 年配のようにも見えるし、この人がトレーダーズマスターか。


「待たせたわね。案内するからこちらに来てもらえる?」

「分かりました」


 トレーダーズマスターらしきディノサウロさんに連れられて、俺達はトレーダーズギルドの奥に入っていく。

 案内された部屋は奴隷契約で用いられる部屋で、入るなりディノサウロさんはエリザに対して頭を下げた。


「ご無沙汰しております、エリザベッタ殿下」

「はい、お久しぶりです、トレーダーズマスター」


 フードを外して、エリザも軽く頭を下げる。

 ギルドマスターは王家とのやり取りもあるからな。


「陛下よりお話は伺っております。あまり広めてもよいお話ではありませんので、今回の契約は私が行いますのでご了承下さい」

「分かりました。お手間をお掛けしますが、よろしくお願いします」


 トレーダーズマスター自ら手続きをしてくれるのか。

 カタリーナ女王は、関係者には契約魔法を使って口止めをするって言ってたが、契約魔法には穴もあるから、確かに知ってる人は少ない方がいいかもしれない。

 だから俺も契約魔法じゃなく、奴隷契約を使ってるぐらいだしな。


「あなたがマスターね。ライセンスを出してもらえる?」

「分かりました」


 契約達成手続きにはライセンスが必要だが、契約未達成の奴隷はライセンスを持つ事が出来ない。

 俺と契約している奴隷の中では、エリザ以外の4人はハンターズライセンスを持っているが、エリザは今日手続きを終えてからトレーダーズライセンスを作る手筈になっている。


「5人目か。その若さで5人も契約を達成しているなんて、さすがはハイヒューマンね」

「運が良かったっていうのもあると思いますよ」


 正確には運が良かったっていうより、スキルが良かったっていうべきだが。


「はい、手続きは終了よ」

「ありがとうございます」


 あっさりと手続きは終了した。

 まあ、魔法を使って情報を書き換えるだけだから、時間が掛かる理由もないんだよな。

 そう思っていたら、突然俺のライセンスが光出した。

 え?何なの、これ?


「もしかしたらと思っていたけど、本当に光るとはね」

「これ、何なんですか?」


 みんなも驚いているが、トレーダーズマスターはこの光が何なのか知ってるっていう感じだ。

 これがなんなのか、是非とも教えて下さい。


「これは奴隷契約を達成した人への、神々からの褒賞よ。あなたみたいに複数の奴隷との契約を達成した人が多いけど、1人だけであっても賜ったっていう話もあるわ」


 そんなもんがあったのか。

 エリアとルージュは契約そのものが条件みたいなもんだが、その2人を含めると俺は5人の奴隷契約を達成した事になる。

 それでも絶対にご褒美が貰える訳じゃないし、そもそも条件が分かっていないから、貰えたら運が良かったっていうレベルの話になるらしい。

 ただ言えるのは、ご褒美を貰ったマスターが不正をしておらず、それどころか信用に値する人間だという証拠になるそうだ。


「神々からのご褒美って、そんなものがあったんですね」

「賜れる人は、本当に少ないのよ。少なくとも私がトレーダーズマスターになってからは、あなたが初めてね」


 マジですか。


「あ、光が収まってきたわ」


 お、マジだ。

 ゆっくりと光が収まると、俺のライセンスの上に楕円形の玉?みたいなのが浮かんでいた。


「……なんだ、これ?」

「まさか……精霊の卵?嘘でしょう……」


 トレーダーズマスターの呟きが耳に入ると、俺以外の全員が目を見開いた。

 その名の通りのものなんだろうけど、そこまで驚くもんなの?


「精霊の卵は、神々から賜る褒賞の中でも、最上級の代物よ。私が知る限りじゃ、片手の指で足る人数しか賜った事はなかったはずだわ」


 どれほどの人数が神からの褒賞を貰ったのか知らないが、それでも精霊の卵は片手の指で足りる人数しか貰ってなかったのか。


「神々の褒賞は金銭、武具、魔導具がほとんどなのよ。もちろん金銭の場合は一生遊んで暮らせる額らしいし、武具や魔導具も超一級品ばかり。だけどそれらは、人の手でも何とか出来なくもないわ」


 武具や魔導具の場合、ヘリオスフィアには存在していない素材が使われているらしいが、それ以外の性能や技術的にはAランククラフターなら不可能っていう訳でもないらしい。

 金銭なんて、名のあるギルド登録者はそんな生活をしているぐらいだ。

 だが精霊の卵は、人間にはどうする事も出来ない代物だし、他の褒賞と違って譲渡する事もできない。

 しかも生まれる精霊は卵を貰った人間の魔力も受けているから、成長すれば確実に聖属性か冥属性の精霊なる。

 聖属性と冥属性は複合属性でもあるため、成長すれば3つ以上の属性を使いこなすことも可能みたいだ。


「そ、そんな貴重な物なんですね」

「貴重どころの話じゃないわよ。はあ……、あなたには文句の一言も言いたかったけど、こんな物を賜ったりしたんじゃ、何も言えないわ」


 そりゃ王女様を奴隷にしてて、解放しないばかりか黙ってろっていう契約まで結ばされたんだから、文句の一つも言いたくなるよな。

 俺の都合でしかないから申し訳なく思うが、こればっかりは勘弁してくださいとしか言えない。


 その後、フロイントシャフト帝国でも伝えた味噌と醤油の製法、新しい料理のレシピを伝えてから、俺達はトレーダーズギルドを後にした。

 ハンターズギルドに寄って依頼も見てみたが、今が戦時中という事もあってあまり大したのはなかったな。

 なので俺達はアクアベアリに戻り、そのまま出航する事にした。


 精霊の卵だが、俺が魔力を与え、それでいて相応しい場所で孵るらしいから、早ければ即日、遅くても数ヶ月で孵るだろうって話だった。

 出航したアクアベアリで魔力を与えながら、俺は今後の事について考える。

 精霊の卵なんて代物が手に入るとは思っていなかったが、精霊と契約出来るかもしれないっていう現状はありがたい。

 精霊は実体化出来るが、精霊だけあって姿を消すなんて事は造作も無いし、自然を操る事も出来る。

 精霊の階級によっては微々たる力しか持っていないが、階級が上がっていけば強くなっていき、大精霊ともなると災害をもたらす程だ。

 さすがに大精霊にまで進化させるのは無理だと思うが、その下の上級精霊まで進化させた人はそれなりの数が存在している。

 聞いた話だと、精霊の卵から孵った精霊は進化しやすいらしいし、聖属性か冥属性になるのも確実みたいだから、目標はそこが妥当だろう。

 精霊魔法士っていう精霊使いもいるし、今の俺だと直接的な攻撃とかは何とか出来るが、偵察とか監視とかに使われてたりするとどうする事も出来ないから、そっちの観点から見ても助かる。


「魔力を上げると光るのね」

「なんか可愛いかも」


 精霊の卵に魔力をやってると、アリスとルージュが微笑ましそうな顔で寄ってきた。

 可愛いかどうかと聞かれたら、正直答えに困るぞ。


「精霊の卵を見る事が出来るなんて、さすがに思ってもいませんでした」

「エリザは話ぐらいは聞いた事あるのか?」

「はい。とはいえ、わたくしも噂程度しか聞いた事がありません。ヴェルトハイリヒならば詳しいと思いますが」


 神々からの褒賞って事だし、確かにスフェール教の総本山でもあるヴェルトハイリヒ聖教国なら知っててもおかしくはないか。


「私は精霊が卵から生まれるなんて知りませんでした」

「私もです。てっきり自然の中で、偶発的に生まれるとばかり」


 俺もそう思ってたな。

 その辺はヴェルトハイリヒ聖教国に行ってから聞いてみよう。


「ねえお兄ちゃん、触ってもいい?」

「触るって、精霊の卵にか?」

「うん。一生に一度見られるかどうかなんだし、興味あるんだ」


 確かにルージュの言うように、一生に一度見られるかどうかっていう代物だし、興味を持つのも当然か。

 見ればルージュだけじゃなく他のみんなも興味津々だし、別に触るぐらいなら問題はないだろう。


「ああ、構わない。みんなもどうだ?」

「え?いいの?」

「よろしいのですか?」

「せっかくの機会だしね。遠慮しなくていいよ」


 みんなとの契約を達成した褒賞って事なんだし、それぐらいは当然の権利じゃないかと思う。


「あ、思ってたより柔らかいんですね」

「本当ね」

「絹織物のような手触りですね」


 確かに精霊の卵は、絹みたいな感じの滑らかな手触りがする。

 柔らかいのは怖いが、ゴムボールとかみたいに凹んだりするわけでもないし、弾力があるってわけでもない。

 実体があるから落としたりしたらどうなるかが気になるが、さすがに試してみるなんて罰当たりな真似はしたくはないな。


「あれ?あたしの魔力も吸ってる?」

「本当だわ」


 ん?ルージュ達の魔力を吸ってる?

 なんでだ?


「大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

「はい。喜んでくれているのかまではわかりませんが、嫌悪されてるとかそういった事はなさそうな感じです」


 無理矢理って訳でもなさそうだし、ひとまずは安心か。

 なんでみんなの魔力も吸ってるのかは分からないが、悪い影響がないんなら構わないだろう。


「なら卵が孵るまで、みんなも少しずつで構わないから魔力を上げてくれるか?」

「これは浩哉が賜った物なのに、あたし達がやってもいいの?」

「悪影響があるっていうならさすがに遠慮してもらうけど、そうじゃなさそうなんだし構わないさ」


 トレーダーズマスターが知ってる限りではあるが、精霊の卵を賜った人以外が魔力を与えたっていう話は無いみたいだった。

 奴隷契約達成の褒賞でもあるが、俺みたいに奴隷を友人として扱う人はおらず、労働力とみなす人がほとんどだから、精霊の卵なんていう貴重品に触れさせようなんて、考えもしないって事だろう。


 俺の予想だと、精霊の卵は契約している奴隷なら魔力を与えられるんじゃないかと思う。

 多分でしかないから万が一の可能性は残っているけど、卵自体が嫌がっているわけでもないから、悪い事にはならない気がする。

 精霊の卵がいつ孵るかは分からないけど、早ければ今日中、長くても1年かからないみたいだから、ゆっくりと気長にやっていくとしよう。

 ストレージやインベントリには入らないから、管理はしっかりとしないといけないけど、アクエリアスやアクアベアリ、サダルメリクで移動や寝泊まりしているから、そこまで気を張らなくてもいいのは助かる。

 どんな精霊が孵るのか、楽しみだ。

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