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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第1章・転移から始まるプロローグ
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装備の選択

 グリズリーの巣穴は、ハンターズギルドのある中央通りから1本西に入った通りにあった。

 道行く人に尋ねたらすぐに答えが返って来たが、グリズリーの巣穴はルストブルクでも有名みたいだ。

 石造りの武骨な構えをしていたが、3階建てで敷地も広そうだから、けっこうな数の宿泊客を抱え込めそうだな。

 というかここ、高級宿屋なんじゃないのか?

 入るのに勇気がいるが、門兵さんのお勧めなんだから、そこそこリーズナブルなはずだよな?

 確かに金はあるが、それとこれとは別の話だぞ?


「いらっしゃい」


 意を決してグリズリーの巣穴に入ると、中は普通の宿屋って感じで、受付にはクマミミのお姉さんが座っていた。


「すいません、泊まりたいんですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。1人?」

「はい」


 グリズリーの巣穴の部屋は、1人部屋、2人部屋、4人部屋、スイート、デラックスがあると説明された。

 当然俺は1人部屋を頼んだが、後で変更も可能だと続けるのはどうなんですか、お姉さん?


「1泊2食付きで7,000オールだよ」


 思ったより安く感じるのは、俺が金を持ってるからだろうか?

 まあ、安く感じるなら、それでいいか。


「それじゃあ2泊でお願いします」

「はいはーい。支払いは現金とライセンス、どっちにする?」

「ライセンスでお願いします」

「じゃあこっちにお願いね」


 クマミミお姉さんに言われた通り、水晶が嵌め込まれた台座にライセンスを近付けると、ポンって音が鳴り響いた。


「はい、2泊分14,000オール、確かに頂きました。これがカギだよ。外出する際は受付で預けてね」


 これがライセンス支払いか。

 マジで電子マネーみたいだな。

 音が鳴るとは思わなかったから、ちょっとビクッとなったが。


 ちょっと驚いてると、お姉さんにカギを手渡された。

 部屋番号が記入されたタグも一緒に付いてて、俺が泊まる部屋は205号室のようだ。


「分かりました。あ、夕食はどうしたらいいですか?」

「6時から食堂で食べられるよ。朝食も6時からね。遅れても返金はしてないから、注意してね」

「ありがとうございます」


 お姉さんにお礼を言ってから、部屋に向かう。

 中はベッドの他は小さな椅子と机があるだけのシンプルな造りで、本当に1人で使うことが前提の部屋だな。

 驚いたのはベッドで、木枠の上に薄い布団が敷かれているだけだ。

 マットレスに慣れ親しんでいる現代人にとっては、すげえ寝辛そうだな……。

 そう思いながら腰を下ろすと、思ってたより柔らかかったから驚いた。

 軽く横になってみたが、マットレスよりは硬いが、十分許容範囲だから、ぐっすり眠れそうだ


 ようやく宿に入ったとはいえ、夕食までは1時間ぐらいある。

 昨日はテンション上がってたから夜も朝も遅くなったが、街灯が無い事や異世界テンプレートから考えても、ヘリオスフィアの人々は日の出と共に起きて、日の入りからしばらくして寝静まるんだろう。

 あんまり夜更かししないように注意しながら、昨日確認しなかった項目を見てみるか。

 そうだな、アクセサリーがまだだから、それにしてみよう。


 ブルースフィア・クロニクルの装備スロットは、全部で10部位存在している。

 メインウェポン、サブウェポン、アッパー、ロウアー、ヘッド、アーム、フット、そしてアクセサリーが3種だ。


 サブウェポンはそんなに数はなく、盾、投擲武器、ジョブ専用補助武器、メインウェポンが装備出来る。

 メインウェポンっていうのが意味不明だと思うが、サブウェポン・スロットに限り、ジョブ専用装備であっても、ステータス補正無しというデメリットに目を瞑れば、ジョブに縛られずに装備出来るため、使い勝手はかなり良い。

 ステータス補正が無くても他の装備で補えるし、事前に鍛えてあればスキルも使えたからな。

 俺もサブウェポンに弓を選んで使ってたが、魔法以外で遠距離攻撃が出来たから、大変重宝したよ。

 さらにヘリオスフィアに来た事で、俺は武器戦闘(全)というスキルを頂戴している。

 スキルレベルこそ3だが、これは剣術のみならず弓術スキルも含まれた統合スキルだから、実際に使った事のない俺でも使えるはずだ。


 という訳で俺は、サブウェポン・スロットを開き、弓の項目をタッチした。

 本来なら弓はAGI、つまり敏捷性に補正が掛かるんだが、サブウェポン・スロットに装備させた武器はステータス補正がかからないから、どれを選んでも大差ないだろう。


 ユグドラシル・ピアッサー

  長弓:☆☆☆☆☆☆

  基本ステータス2倍

  鳥獣特攻、時々風属性攻撃付与

  アタックスキル:ピアシング・ストーム(STR+AGI、5倍補正)


 例外として、専用アタックスキルを持つ最強の弓、ユグドラシル・ピアッサーがあるが、派手な装飾が施されてるから、こんなの装備して町を歩いてたら、絶対に絡まれるに決まってる。

 空を飛ぶ魔物への特攻に風属性のバフまであるから、人目がなければ喜んで使うが、町中だとハイスチール・ソードやハードレザー・アーマーコートと同じように、中級者向けの弓にしといた方が良い。

 という訳で俺が選んだのは、ハイコンポジット・ボウという、見た目が地味な弓だ。

 中級者向けだから、十分実用に耐えるだけの性能は持っていると思う。

 サブウェポン・スロットに装備させるから、性能はあんまり関係ないんだが。


 ブルースフィア・クロニクルでは、☆の数が多い程性能が高い。

 武器だと攻撃力や命中率が高くなるし、防具だと防御力や回避率なんかに補正があるな。

 乗物も同様だが、個人でカスタマイズした魔導船は☆5つ、水陸両用は☆3つ、水上か陸上専用だと☆2つになっている。


 だが最強装備でもあるユグドラシル・ピアッサーは、☆が6つもあるし、セイクリッド・ブリンガーやマルス・ブレイブアーマーも同様だ。

 これはステータス補正値ももちろんだが、専用アタックスキルの存在が大きい。

 現在☆6つのアイテムは最強装備群のみだから、ステータス補正値はもちろん、攻撃力も防御力も頭一つ抜けているな。

 しかも耐性効果も、☆の数が多いほど効果が高くなる仕様だから、☆4装備でもかなり弾けるし、☆6の最強装備群なら抜けてくるデバフはボス級ぐらいだった。


 翻ってハイコンポジット・ボウ、ハイスチール・ソード、ハードレザー・アーマーコートは、中級装備って事で☆は4つだ。

 最強装備には劣るが、最前線で使用してもそれなりに使えるから、実用性も高い。

 ☆5つの上級装備にしなかった理由は、派手な意匠のが多いからだ。

 派手どころか奇抜なのもあるから、さすがに躊躇われたんだよ。


 弓を使うにあたって、問題となるのが消耗品の矢の存在だが、ヘリオスフィアでもブルースフィア・クロニクルでも魔法で作り出す事が出来るから、特にブルースフィア・クロニクルでは生産自体がされていなかった。

 ヘリオスフィアだと買えるようだが、魔力が尽きた時の保険に持つのが一般的らしいから、明日買いに行こうと思ってる。


 さて、次はアクセサリーだな。

 アクセサリー・スロットは3つで、俺が装備した武器や防具も装備スロットに表示されてるから、4つ以上を装備する事は出来ないだろう。

 ただアクセサリーは、ステータス補正よりアビリティで選ぶのが基本だから、数多くあるアクセサリーでも、実際に使うとなるとかなり限られる。

 鉄板なのは、やはりこの3つかな。


 サクリファイス・リング

  アクセサリー(腕輪):☆☆☆☆☆

  賦活(発動後破損)、即死耐性


 サーベイ・リング

  アクセサリー(腕輪):☆☆☆☆☆

  鑑定、魅了耐性


 ガード・ネックレス

  アクセサリー(首飾り):☆☆☆☆☆

  結界


 3つともステータス補正はないが、☆5つという上級装備だ。

 サーベイ・リングの鑑定効果は、物品はもちろん人や魔物、地形すら対象だったから、ヘリオスフィアでも使えるなら今後が楽になる。

 人に使うのは、個人情報の問題もあるから控えるが、物品や魔物、地形には遠慮なく使っていこう。


 ガード・ネックレスの結界は、敵の攻撃を防ぐ効果がある。

 似た効果を持つアクセサリーは他にもあるが、ガード・ネックレスはその中でも最高の性能で、1日に☆の数だけ発動できる優れものだ。

 ブルースフィア・クロニクルのドラゴンの攻撃ですら、回数分はキッチリとシャットアウトしてくれた。

 ヘリオスフィアでそこまでの効果があるかは分からないが、無いに比べたら遥かに安心だ。


 そして絶対に手放せないのが、サクリファイス・ネックレスだ。

 HPが0になった瞬間に発動し、HPとMPを全回復してくれるという、まさに命綱と呼ぶに相応しい性能を持つ。

 発動したら壊れてしまうため、使い捨てるしかないんだが、ガード・ネックレスと合わせて装備しておけば、余程の事があっても命を落とさないで済むだろう。


 ただサクリファイス・ネックレスは、俺もあと2つしか持っていない。

 下位互換装備ならブルースフィア・クロニクルでも売ってたんだが、ブルースフィアのスキルレベル2だと開放されてなかったから、しばらくは入手できないな。

 合成ショップを使えば作れると思うが、素材は自分で集めないといけないし、その下位互換装備も合成素材だから、そっちも試すのは先になる。

 ブルースフィアのおかげでステータスは向上しているが、それでも慎重に行動しよう。


 あとサクリファイス・ネックレスとサーベイ・リングの耐性効果は、マルス・ブレイブアーマーとダブってしまってるんだが、さすがに耐性効果は重ならないから、残念ながら死にアビだ。

 ハードレザー・アーマーコートには火と風耐性があるだけだから、こっちでなら十分有効だが。


 他にも確認してみたが、ガード・ネックレスの下位互換装備やステータス補正装備がほとんどだったな。

 イベント装備もいくつかあったが、イベントで全ユーザーに配布してただけあって、性能は微妙だったが。


「とりあえず、こんなもんか。合成ショップも試したいけど、素材はヘリオスフィアで集めないとダメっぽいから、これも使うのは先か」


 まだ夕食までは20分ぐらいあるから、アイテムショップでも覗いてみるか。

 そうだな、まだビークルショップは見てないから、そこにしよう。


「予想通りだが、ブルースフィア・クロニクルと同じだな。いや、☆1つや☆2つが消えてる?なんでだ?」


 ビークルショップにある乗物は、☆2以下の乗物が消えていた。

 ☆1つも☆2つも陸上か水上どちらかに特化していて、違いは☆1つは1人乗り、☆2つは最大で5人まで乗れる。

 俺は☆3つの魔導三輪スカトと☆2つの魔導車サダルメリクを所有しているが、1人乗りの魔導三輪を買ってもいいかもと思ってたから、これは完全に予想外だな。

 ☆1、☆2の乗物が消えてしまった理由は分からないが、もしかしたら同等の性能を持つ魔導車や魔導船があるって事か?

 まだ見てないから何とも言えないが、そう考えた方が良さそうだし、そう思っていたい。

 もしそうなら、スカトやサダルメリクが使いやすくなる。


 明日は買い物に情報収集、余裕があったら狩りに行こうと思ってたが、狩りは明後日以降に回してもいいかもしれない。


 ちなみに武具店も覗いてみたが、こっちは普通に☆1の武具も売ってたから、魔導車や魔導船がヘリオスフィアにもあるんじゃないかという望みが絶たれた気もしなくはない。


 気を取り直して、今度はカスタムショップを覗いた。

 アクエリアスにステップとスロープを取り付けた際に見ているが、やっぱりカスタムショップが一番テンションが上がるな。

 椅子やテーブルはもちろん、風呂にシャワー、トイレもあるし、暖炉や噴水、畳までありやがる。

 調度品だけじゃなく、部屋割りの変更や床材、壁材も選べるから、ここまで来ると家のリフォームと変わらないんじゃないだろうか?

 ブルースフィア・クロニクルの魔導船は移動手段でありプレイヤーの家でもあったし、地球のクルーザーも高級ホテルみたいな感じのがあったから、あながち間違いってわけでもないか。


 カスタムショップを見ながら、将来の妄想にニマニマしてたら、夕食が終わる時間が差し迫っていた。

 慌てて部屋を出て食堂に行き、謝罪してから飯を食う。

 グリズリーの巣穴の飯は、門兵さんに聞いてた通り美味かったんだが、調味料は塩と胡椒、ハーブを少々といったところみたいで、俺としては少し物足りなかったな。

 調理方法も焼いたり炒めたりが主流で、蒸したり揚げたりっていうのはなく、コメも無かった。

 パンは硬いし、スープも塩味のみだったから、早めに市場辺りで食材や調味料も見てみよう。

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