パワーレベリング終了後
フォルトハーフェン沖から外海に出て5日経った。
この5日間、パワーレベリングをしたりイチャイチャしたりしながら過ごしたが、そのおかげでみんなのレベルもかなり上がったし、ゴールドもそこそこ稼げたな。
俺はレベル69になったし、アリスはレベル52、エレナがレベル40、エリアがレベル36、ルージュがレベル34、エリザもレベル42になったから、ステータスだけなら下手なハンターより強くなったんじゃないかと思う。
アビリティ:侵入不可に守られながらの安全な狩りだったし、トドメのほとんどは俺かアリスだったから、実際に戦っても勝てるかは分からないが。
ゴールドの方は、最初のエラスモサウルスを含めて1,265万ゴールド稼げた。
昨日もう1匹エラスモサウルスを狩れたから、半分ぐらいはエラスモサウルスのおかげなんだが、他にも小型の魔物が群れで襲ってきたこともあるし、中型種の番いみたいなのも狩ったから、全部で60匹ぐらいは狩ったと思う。
大改装っていう目標もあるからみんなの士気も高いし、このペースで狩り続ければ数ヶ月もせずに改装出来るだろう。
俺達の主戦場は海になるから、目標があるとやる気も出てくるし、俺も楽しみにしてるから、このままでいきたい。
だけどエレナとエリザの契約を達成しないといけないから、いつまでも狩りをしているわけにはいかない。
なので狩りは今日で一度終わりにして、明日の夕方にはフォルトハーフェンに入港する予定だ。
フォルトハーフェンまではアクアベアリで向かうから、今夜はアクエリアスの宝瓶温泉で、みんなでまったりイチャイチャしながら過ごすことにもなってる。
「思ってたより稼げたけど、普通にハンターズギルドとかに持ち込んだら倍の値が付いたって考えると、ちょっと残念よね」
「さすがに仕方ないわよ。それぐらいの制限がないと、ただでさえとんでもないブルースフィアが、さらにとんでもないことになるもの」
宝瓶温泉に浸かりながら、アリスとエリアの姉妹が今日までの狩りを思い出している。
アリスの言うように、今回狩った魔物をギルドとかに持ち込めば、ブルースフィアで換金した額の倍近くで買い取ってもらえるだろうが、エリアの言う通りこれぐらいの制限がないと、海に来たってことも踏まえると町とかに立ち寄らなくなる気もする。
食べ物も飲み物も、果ては娯楽までブルースフィアで用意出来てしまうんだから、買い出しとかの必要も無いし、煩わしい人付き合いも無縁なのもいい。
今でも似たようなものだが。
「あたし達のレベルも、とんでもないことになってきてるよね」
「そうですね。何度か護衛付きでレベル上げに行った事がありますが、騎士達はもちろん、護衛として雇ったハンター達もかなり大変そうでしたし、上がったレベルも2つか3つが精々でした」
ルージュの言うように、レベルがとんでもなくなったのも否定しない。
だけど魔物や盗賊の蔓延っているこの世界だと、強いに越したことはないし、寿命も延びるわけだから、悪いことじゃない。
さりげなくエリザが王女様時代のパワーレベリングを口にしたが、本来はそんなもんみたいだ。
なにせ攻撃した魔物は必ず倒さなきゃならないし、なのに護衛はしっかりとしなきゃいけないから、護衛として騎士はもちろんハンターも雇ってるためか、レベルも上がりにくい。
経験値が隠しパラーメーターで設定されていて、入手できるのが人数の頭割りだと考えると、護衛の人数によっては微々たるものしか得られないし、参加人数が多ければそれだけ移動にも時間を取られるから、効率という面ではよくないどころか悪いと断言できる。
まあ、安全にパワーレベリングをしようと思ったら、ブルースフィアを使う以上の安全策は無いんだが。
さすがに王侯貴族に頼まれたとしても、絶対にやるつもりはない。
「そりゃそうでしょ。浩哉のスキルがバレるだけじゃなく、各国が浩哉を巡って戦争を起こしかねないわ」
「特にグレートクロスは、ほぼ確実に狙ってくるでしょうね」
その予想は俺もしてる。
ゼーレテンペルにある世界樹に剣を突き立てたってことで、当時のグレートクロス皇帝は退位しているんだが、譲位された現皇帝は、他国への侵攻こそ控えているが、かなりの野心家だと言われてるからな。
元々は先代と同じく領土拡張主義者らしいが、神罰からまだ20年ぐらいしか経ってないから国内の安定を優先していて、スフェール教の広まり具合も神経質なぐらい確認してるみたいだ。
だからスフェール教の混乱が落ち着き、国内が安定したら、本格的に兵を挙げるんじゃないかと言われていたな。
ヘリオスフィア統一、この場合だと北大陸統一になるんだが、それが建国時からの悲願らしい。
迷惑でしかないから、考え直してくれないかね。
「考え直すことはありませんね。さすがに神罰が怖いでしょうから、ヴェルトハイリヒを狙うことはないと思いますが、フロイントシャフトやカルディナーレ、エーデルストは確実に狙われます。特に隣接しているエーデルストは、王太子妃のせいで国内が荒れていますから、グレートクロスにとっては格好の獲物でしょう」
エリザが鋭い予想を口にするが、俺もそんな気がする。
さすがに今日明日どころじゃないし、グレートクロス帝国が挙兵すればフロイントシャフト帝国も絶対に気が付いて警戒するから、数ヶ月から数年は先の話になるだろう。
「それでも万が一が無い訳じゃないから、早めにシュラーク商会で魔導船を見せてもらって、エーデルストからの亜人を受け入れてもらえるかを確認してみよう」
エーデルスト王国はヒューマン至上主義者の王太子妃が政策に口を出しているため、亜人と蔑まれている人達が徐々に隣国に逃げ始めていると聞く。
当然だがその人達が逃げ込むのは、エーデルスト王国に隣接している国だから、その国々は受け入れに手いっぱいになりつつあるんじゃないだろうか?
フロイントシャフト帝国に逃げ込む人達もいるが、逃げてくる人達は100人どころか1,000人単位になってるから、受け入れるのだけでも一苦労だし、近隣の貴族領にも振り分けを行っているぐらいだってシュロスブルクのトレーダーズギルドで聞いたな。
「手一杯になっているのは北の貴族領ですから、南のフォルトハーフェンならば問題はないと思います。むしろそういった貴族領から、避難された方々の輸送を依頼されるのではないでしょうか?」
「あー、その可能性もあったわね。エレナ、村の人って、確か40人ぐらいだっけ?」
「既に逃げた人もいるかもしれないけど、それぐらいになるわ」
アリスと同様に、俺もエリザが上げた可能性は全く想定していなかった。
だけど言われてみれば、数十人単位の人間を輸送できるんだから、その可能性は否定できない。
さすがに外海に出る訳にはいかないし、ハイディングフィールドも張れないから、アクエリアスは使いにくいな。
やっぱり資材運搬船を改装して、アクアベアリで曳航するのが無難か。
「それなんだけどさ、資材運搬船じゃなくて、後々あたし達が海の上で使える拠点になるような大型船ってダメなの?」
「と言うと?」
「さすがにアクエリアスは無理だと思うけど、アクアベアリぐらいなら搭載出来るような大きな船なら、移動もだけど小回りも効いて良いかなって思ったんだけど?」
ルージュの提案は、俺にとっては盲点だった。
ブルースフィア・クロニクルは、島が活動拠点になっているが、移動拠点を持つプレイヤーも多かった。
というより、活動拠点になっている島を船に改造して、移動拠点にしてしまうことが出来ると言うべきだな。
拠点の島は群島で、ストーリー上その島を使っているのは自分だけってことになってるし、確かその島は全体が浮遊石の鉱脈になってたはずだから、島全体じゃなくて拠点の周囲だけを上手く切り出して、大型船すら格納可能な空飛ぶ移動拠点として使えたはずだ。
飛空艇が実装された時も、その浮遊島への移動が仄めかされていたぐらいだ。
いや、確かそのパッチは、今度発売される追加シナリオでアップデートされるはずだったから、俺がヘリオスフィアに転移した時点じゃまだ実装されていなかったんだった。
そうなると、可能なのは100メートルクラスの大型船を改装して、アクアベアリを格納なり搭載なり出来るようにしてしまうことか。
それはそれでアリだが、そうなってしまうとアクエリアスを使う機会が減るかもしれない。
「あー、そっかぁ」
「悪くない提案だけど、さすがにアクエリアスを使えなくなるのは、俺としても痛い。だからルージュには悪いけど、大型船を移動拠点代わりに使うつもりはないよ」
「うん。あたしもアクエリアスは気に入ってるから。それに大きな船になったら、移動するのも大変だよね」
それはあるな。
アクエリアスの時点でそんな気配がするのに、倍以上も大きな船になったら移動どころかみんなを探すだけでも一苦労だ。
拠点島を改造する浮遊島なら考えたが、実装前ってことで俺のブルースフィアじゃ使えないし、そもそもその拠点島はヘリオスフィアには無いから、どっちにしても無理だ。
まあ、アクエリアスでも十分な大きさだし、ゴールドに余裕が出てきたら温泉を設置するから、十分なんだけどな。
「まだ先の話だけど、余裕が出来てきたら拠点設備を設置するから、それまで待っててくれよ?」
「うん!あっ!」
さりげなくルージュを抱き寄せて、胸に手を当てる。
発育途上ではあるが、膨らみがあるのは間違いないし、可愛い反応してくれるから俺もついつい手が伸びてしまった。
「もう、お兄ちゃんのエッチ……」
最近ルージュは、俺のことをお兄ちゃんと呼ぶようになった。
ルージュに兄はいなかったんだが、俺といると安心するからってことで呼ばせてほしいって言われて、俺も承諾している。
「浩哉がエッチなのは、今に始まった事じゃないわよ」
「そうですね。わたくしも、最初は純潔を奪っていただくだけのつもりでしたが、今では皆さんと同じく、浩哉様無しでは生きていけなくなりましたから」
アリスとエリザの言葉が耳が痛い、というか、俺にそんな意図は無かったぞ?
ヘリオスフィアは性知識に関してもほとんど広まっていなかったから、それが原因じゃないか?
「だからこそ、なんですよね」
「そうね。まさか年下の男の子に、あそこまでいいようにされるなんて思わなかったもの」
エレナとエリアもか。
みんな俺と契約を結んだ奴隷なのに、この場で俺の味方はいないようだ。
「浩哉さんに意図があろうとなかろうと、私達はそう感じてしまいましたし、離れるつもりはありません。浩哉さん自身もですけど、ブルースフィアも魅力的ですから」
はっきりと口にするエレナだが、まあ俺としても、物で釣ってるんじゃないかって感じてるし、事実その通りだから、それは構わない。
変に愛だの恋だのと言われるより、そっちの方が付き合いやすいと思ってるぐらいだ。
「エレナとエリザはまだ契約が履行中だけど、あたし達は問題ないから、遠慮もいらないしね」
「それはそれ、これはこれです。それにわたくしの契約内容は、エレナさんと違ってカルディナーレに行くだけなんですから」
アリスは契約を達成したし、エリアとルージュは俺との契約が目的みたいなものだった。
対してエレナは村人を連れ出すこと、エリザはカルディナーレに行くことが条件だが、エリザの方は行って話をするだけだから、ぶっちゃけた話そこまで大変な話じゃない。
行ってから女王様や王女様と謁見する可能性はあるし、エリザを解放するように圧力をかけてくるかもしれないが、それはそれだ。
「確かに私の条件の方が大変ですね。ですがそのために大型船を購入してくださるんですから、他の誰よりも達成は容易でもあります」
連れ出す村人は40人だから、中型の資材運搬船でもいいかなと思ってるけどな。
中型船は20メートル以上50メートル未満の船だから、40人ぐらいなら十分だと思うし、費用も半額以下で済む。
さらに資材運搬船の実物を見るいい機会でもあるから、俺にとってもメリットは小さくない。
ブルースフィア・クロニクルの資材運搬船は、大きさの違いこそあるが、見た目も内装も同じだから、どんな感じなのかを知るには丁度いい。
中型資材運搬船の速度は20ノットだが、アクアベアリでも十分曳航できる大きさだから、多分30ノットぐらいで航行できるだろう。
資材運搬船は空母に近い感じの船だから、マスターズルームこそあるものの、デッキはメインデッキとアンダーデッキしかない。
改装するとしたらアンダーデッキだが、メインデッキも手を入れた方がいいから、フォルトハーフェンを出るまでに案を纏めておかないとな。




