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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第1章・転移から始まるプロローグ
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ルストブルク到着

 森に近付いてもハンターらしき人影は見られなかったため、俺はアクエリアスを召喚し、一夜を明かすことにした。

 陸上でもあるから、ルーフデッキのジャグジーは使わず、マスターズルームに備え付けの浴槽に浸かったが、いい湯だったな。

 ベッドも柔らかくて、寝心地抜群だった。

 飯はブルースフィアで購入したが、さすがに金も食料も無いんだから、これぐらいは許してほしい。


 念願のアクエリアスで過ごせるとあって、俺のテンションは真夜中になってもレッドゾーンをぶっちぎっていた。

 だから眠りにつくのはかなり遅く、目が覚めた時には太陽は思いっきり空の天辺にあった。


 テンションがレッドゾーンをぶっちぎっていた理由は、アクエリアスの改装を考えていたからだ。

 陸上には喫水線なんてもんは存在しないため、アクエリアスの後方デッキは地上2メートル半程の高さになってしまっている。

 創造神様にレベル50まで引き上げてもらってるため、簡単に飛び乗る事が出来るんだが、それでも何かあるたびに飛び乗るのが手間だし、そんな余裕があるかもわからないから、ブルースフィアのアイテムショップに何かないかと思って探してみたら、丁度いい物が存在していたから即買いした。

 ブルースフィア・クロニクルには飛空艇も存在しており、自分の船を飛空艇に改造する事も出来る。

 普通の船を改造する訳だから、陸上に停泊する事だって珍しくないんだが、その場合はどうやって乗り込むのかという問題が出てきてしまう。

 そのために、船の一部を改装し、ステップを取り付けるのが一般的だな。


 ついでって訳じゃないが、スカトやサダルメリクも使えるように、ハッチも改装することにした。

 後方デッキの左右に昇降用ステップが装備され、魔導車用搬出入口は開閉式のスロープを取り付ける事で、簡単に出入りが出来るようになる。

 スカトやサダルメリクも、ブルースフィアから直接召喚できるから必要ない気もするんだが、格好いいっていう理由もあるし、いつか使うかもしれないからな。

 購入費、改装費合わせて374万ゴールド掛かったが、俺のブルースフィア・クロニクルの資金は2億ゴールド近いから、必要経費としても割り切れる。


 ちなみに改装は、アクエリアスを送還して、ブルースフィアの画面で操作すれば、一瞬で行ってくれるという素敵仕様だ。

 さっき送還してからやったから、次に使う時はステップで上がれるぞ。


 そんなわけで、やらかしたと思いながらもセイクリッド・ブリンガーとマルス・ブレイブアーマーを装着し、朝を兼ねた昼食を食ってから、俺は南にある街道を目指すことにした。


 魔物はゴブリンをはじめ、狼や鹿、熊なんかもいたが、全部倒しているんだが、人には出会わなかったな。

 アクエリアスの事がばれないで済んだと思うべきか、狩りをしてる人と出会えなくて残念だと思うべきか、微妙な所だ。

 前者だったと思う事にしよう。


 狩った熊と鹿は、ルストブルクでもそこそこの値が付くと思うんだが、どれぐらいになるか分からない。

 ゴールドはブルースフィア・クロニクルの通貨だから、ヘリオスフィアの通貨は1オールも持ってないんだよな。

 創造神様に聞いた話では、ヘリオスフィアは剣と魔法の世界で、冒険者と同じ立ち位置にハンターってのが存在している。

 そのハンターは、魔物を狩る事を生業としているから、多くの町にギルドが存在し、魔物を買い取ってくれる。

 ストレージには熊と鹿の魔物があるし、特に熊の魔物は強いんじゃないかと感じたから、二束三文で買い叩かれる事も無いと思う。


 だけど狼は大して強くなかったし、いきなり数を持ち込むのもどうかと思うから、狼とゴブリンはブルースフィアの両替機能を試すために使ってみた。

 画面で設定すると、狼とゴブリンが魔法陣に包まれて消えていき、全部で6,500ゴールドを手に入れたというポップアップが浮かんだが、内訳は出てこなかったな。

 狼が3匹、ゴブリンが5匹だから、多分1匹辺り狼は2,000ゴールド、ゴブリンは100Gなんだろう。

 ヘリオスフィアの評価額の半額になるとはいえ、思ったより金にならなくて残念だ。


 1時間ぐらい歩いたんだが、魔物も出てこないし、景色も大きく変わる事は無かったっていう理由もあるが、このままだと今日中にルストブルクには辿り着けないと感じた俺は、魔導三輪のスカトを召喚する事にした。

 バイクには乗った事ないが、三輪という事もあって安定感があるから、不慣れでもなんとかなるだろうと考えながら、俺はちょっと興奮しながらスカトに跨った。

 お、思ったより簡単に動かせるな。

 音もしないから、騒音で迷惑をかけたり気付かれたりする事が無いのはありがたい。

 スカトもブルースフィア・クロニクルの乗物だから、目的地を設定すれば自動運転で動いてくれる。

 だけど運転はしてみたいから、今回は自動運転は使わず、自分で運転してみよう。


 実物のトライクがどんな感じかは知らないが、ブルースフィア・クロニクルの魔導三輪は、右足にアクセルが、左足にブレーキがある。

 魔導車どころか船もこんな感じなんだが、多分これはシステム的なものが原因だろうな。

 おかげで乗物ごとに運転・操縦方法が違うって悩まなくて済んでるし。


 アクセルをゆっくり踏み込むと、スカトがゆっくりと動き出した。

 少し力を強めると、速度が上がっていく。

 三輪って事で安定感もあるから、転倒する心配もない。


「よし、このまま安全運転で行こう」


 不懐で壊れないし、結界のおかげで俺も風やらから守られているが、それでも何が起こるかは分からない。

 時速40キロまで出して、後は様子を見ながらだな。


 そのまま進む事15分程で、街道が見えた。

 街道は土を固めただけだが、スカトが4台は並んで走れるぐらいの広さがあるから、けっこう広いな。

 人の通りはないが、地面には轍の跡が見られるし、中には太いタイヤっぽい跡まである。

 もしかして、魔導車は存在してるのか?


 いや、実物を見るまでは安心できないな。

 だけど人通りは無いから、もう少しスカトで距離を稼ごう。


 結局誰にも出会う事なく、俺はルストブルクに到着してしまった。

 ゴブリンや狼が何匹か出たが、スカトに乗りながら攻撃できたから、倒すのは楽だったな。

 一度だけ判断をミスって攻撃を受けてしまったが、結界のおかげで攻撃は届かず、無傷で済んだのは驚いた。

 これ、とんでもないチートなんじゃないのか?

 強い魔物の攻撃だとどうなるか分からないから、油断は禁物だが。


 遠目でルストブルクを囲う城壁が見えてからスカトを送還し、ゆっくりと向かう。

 同時に装備も、クロム合金を使っているハードスチール・ソードと、リザード系の皮を使ったハードレザー・アーマーコート一式に変更し、ゴブリンと狼はブルースフィアで両替した。

 どっちもブルースフィア・クロニクルだと中級者向けの装備でステータス補正は合わせても+20程だが、見た目は地味だから、セイクリッド・ブリンガーやマルス・ブレイブアーマーに比べると目立たないで済むだろう。


 そのまま歩くこと1時間、ようやくルストブルクの門に到着した。

 城壁の規模から、かなり大きな町だと思えるが、誰も並んでないな。

 いや、早くルストブルクに入りたいから、空いてる分には文句も無いが。


「身分証を」


 門兵に身分証の掲示を促されたが、俺はそんなもんは持ってない。

 だけど身分証を持ってない人は、それなりの数いるらしいと聞いてるから、ここは正直に答えよう。


「すいません、持ってないんです」

「分かった。ではステータスを確認させてもらう。構わないな?」

「お願いします」


 門兵がライブラリングという魔法を使うと、聞いていた通り俺のステータスが、名前と年齢、レベルが開かれた。


「レベル53か。それでいて身分証を持っていないとは、珍しいな」

「色々ありまして、その……」

「ああ、済まない。犯罪者でもないのに、込み入った事情を聞くつもりはないんだ。通っていいぞ」


 おお、助かった。

 北の山脈で修行してたことにしようと思ってたんだが、下手な嘘だとバレるだろうから、事情説明をしなくて済むのはありがたい。


「ありがとうございます。あ、ちょっと教えてもらいたいんですけど。ハンターズギルドや宿ってどこにありますか?」

「ハンター登録をするのか?高レベルのハンターは、ルストブルクとしてもありがたい。ハンターズギルドは、中央の通りを真っ直ぐ行くと見えてくるぞ。宿はちょっと歩くが、グリズリーの巣穴っていう宿が、飯も美味くてお勧めだ」


 グリズリーの巣穴って、字面だけだと危険地帯でしかないな。

 だけど飯が美味いってのは重要だから、そこにしてみよう。


「分かりました、ありがとうございます」


 門兵に礼を言って、俺はルストブルクに足を踏み入れた。


 ルストブルクの町並みは、ザ・異世界都市といった期待を裏切らなかった。

 中世ヨーロッパ的な雰囲気もあるが、異臭はしない。

 魔法のおかげで、風呂やトイレもしっかり完備されてるからだな。

 日本の町並みに比べると古風な雰囲気で、観光地に来たような気分になる。

 景色を楽しみながら歩いていると、中央広場に出た。

 1時間近くかかったから、結構大きな町なんだな、ルストブルクって。

 獣人やエルフなんかも見かけるから、マジで異世界に来たっていう実感も沸く。

 あと聞いてた通り、女性の方が多く感じるな。


 ヘリオスフィアに住んでいる種族は、大まかに分類すると人族、獣族、妖族あやかしぞく、竜族の4種族になる。


 人族には俺と同じヒューマン、ライトエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、オーガが含まれている。

 ヒューマンは説明不要だと思うが、ヘリオスフィアで最も多く、総人口の半分を占めているそうだ。

 ライトエルフは森に、ダークエルフは水辺に住んでいるが、種族同士でいがみ合っている事はなく、住み分けが出来てるため、むしろ協力して生活しているみたいだ。

 ドワーフは鉱山の近くに多く住んでおり、テンプレ通り鍛冶をはじめとした職人として生活している。

 オーガは最も体格が大きく、成人男性の平均身長は2メートルあるんだが、性格は温和な人が多く、農業や林業を営む者がほとんどらしい。


 獣族はいわゆる獣人で、狐のフォクシー、狼のウルフィー、猫のリクシー、虎のタイガリー、兎のラビトリー、リスのアルディリー、熊のベアリー、鹿のディアリーと、全部で8種族だ。

 元となった動物の特徴が強く出ているが、人間に動物の耳や尻尾が付いた容姿をしているし、10種族合わせるとヒューマンに次ぐ人口になるから、獣族のみの国家もあり、多くはその国で生活しているみたいだな。


 妖族は女性のみの種族で、ヴァンパイア、ウンディーネ、ハーピー、ラミア、フェアリーの5種族がいる。

 種を存続させるために、他種族の男性と縁を結ぶ必要があるんだが、小さな村だと血縁だけじゃなく出生率の問題もあるため、多くはヴァンパイアの女王が治める国で暮らしている。


 そして竜族は、ドラゴニュートとディノサウロの2種族で、未確認ならがドラゴニアンっていう種族もいるとされている。

 ドラゴニュートは半竜人で、背中の翼で空を飛ぶ事も出来る。

 腕力ばかりか魔力も強いため、ドラゴニュートが建国した国にはヒューマン至上主義国家も手出しはしていないと聞く。

 ディノサウロはトカゲの鱗を持つ種族で、力はドラゴニュートより劣るが、器用さや敏捷性は上回るため、同じくドラゴニュートの国に多くが暮らしている。

 能力的に互いを補う関係のようで、ディノサウロが下に見られるような事もないみたいだな。

 残るドラゴニアンは、どこからともなく出た噂らしく、実際に見た事がある人はいないと言われている。

 ただ妖族と同じ女性のみの種族っていう噂もあるし、ドラゴニュートやディノサウロとは一線を画す種族とも言われているみたいだが、実在を怪しんでいる人も少なくない。


 そのドラゴニアンだが、実は俺は創造神様から話を聞かせてもらっている。

 ドラゴニアンは実在し、竜族という人間として扱われてはいるが、正体はヘリオスフィアでも12人しかいない最上位ドラゴンだ。

 人が竜になるんじゃなく、竜が人になるっていうのが正確らしいから、ドラゴニアンは厳密に言うと人間じゃなくドラゴンになる。

 ヘリオスフィアの創世から生きており、ヘリオスフィアの守護を担っているため、人前に出てくる事はまずない。

 稀にドラゴニアンの住処に人間が入り込む事があるそうだが、気紛れで手助けをする事もあるし、命を救う事もあるから、ドラゴニアンの噂はそういった人間が広めたっていうのが真相だって言ってたな。


 創造神様も、ドラゴニアンは竜族に間違いないって言ってたから、ドラゴニアンから人間を襲う事はないが、危害を加えられた場合は別になる。

 また、万が一ドラゴニアンが命に関わる重傷を負ったり、命を落としてしまった場合は、ドラゴニアンの神が降臨し、新たなドラゴニアンが誕生し、成長するまでは代わりにヘリオスフィアを支える事になるんだそうだ。

 今の所ドラゴニアンがそんな事になった事はないが、今後もないとは言えないから、万が一の保険としてそうなってるらしい。

 そのドラゴニアンの神は、創造神様が最初に創造した箱庭世界を管理している守護神の妻だとも言ってたな。

 守護神の話もちらっと聞いてるが、ガチで正面からやりあったら、創造神様でも勝てないとか言ってたから、俺としてはお会いしたくない気持ちでいっぱいだぞ。


 まあ、創造神様とも会う事はもうないだろうから、守護神やドラゴニアンの神とも会う機会は無いんだけどな。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん・・・まだ仲間が居ないから仕方ないとはいえ 説明説明説明・・・きついっす 勝手に盛り上がってる人のうんちくをずっと聞かされてる感じ スカトとサダルメリクもまだ思い入れも無いのに頻出し…
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