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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第3章・契約履行から始まる奴隷契約
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帝都からの旅立ち

 エリア、ルージュ、エリザと奴隷契約を結んだ翌日、朝から皇太子と大司教がトレーダーズギルドにやってきた。

 なんでも昨夜のうちに、神罰を下されたナハトシュトローマン男爵がシュロスブルクに転移してきたそうで、今はそちらの対応にてんやわんやなんだそうだ。

 ナハトシュトローマン男爵は生きていたが、体には黒い文字みたいなのが浮かんでいて、意識も失っていたらしい。

 生きているのは分かったから、そのまま牢にぶち込んだらしいが、今朝方意識を取り戻してから喚き散らし、確認にきた皇帝にも、これは何かの間違いだとか、罠に嵌められたんだとかのたまったんだとか。

 神罰が下された以上、ナハトシュトローマン男爵の言葉を信じる者は誰もいないし、既に証言まで得ている。

 さらにエリザというカルディナーレ妖王国のお姫様まで罠に嵌めて奴隷に落としたんだから、どんなに言い繕っても何の意味もない。


 さすがにナハトシュトローマン男爵が転移してくるとは思わなかったが、それも含めて神罰ってことになるみたいだ。

 体に浮かんだ黒い文字は神々からの呪いで、一切の嘘が吐けなくなった上に魔法も全て使えず、死ぬほどの傷を負っても少量のMPを対価にすぐに回復し、魔力が尽きるまで死ぬことは出来なくなっているそうだ。

 ナハトシュトローマン男爵のMPは397なのに対して対価となるMPはたったの1だから、397回は回復出来る計算になるし、一晩寝ればMPは回復するから、いつMPが尽きるのかはまったくもって分からない。

 なかなかえげつない罰だが、神々が決めた契約を悪用したんだし、それを利用して私腹を肥やしてたんだから、ある意味じゃ相応しい罰なのかもしれない。


 皇太子からその話を聞いた俺は、因果応報だと感じた。

 俺にとってアリス達は奴隷であり、同時に友人でもあるから、ナハトシュトローマン男爵みたいな扱いをするつもりは微塵もないが、それでもこの末路は戒めとして覚えておこうと思う。

 ナハトシュタットには騎士団を派遣し、ナハトシュトローマン男爵の一族とトレーダーズマスターを、関係者も含めて捕らえる事になるそうだ。

 一族とトレーダーズマスターはシュロスブルクまで連行され、公開処刑となるが、他の関係者はその場で余罪を追及され、契約奴隷か犯罪奴隷のいずれかになる。

 ナハトシュトローマン男爵領は皇家が接収するため、しばらくは隣接しているルストシュタイン伯爵に、代官を派遣するまでの統治を任せる事になった。

 シュロスブルクからは1ヶ月近く掛かるから、今回は少しでも時間を短縮するため、大型魔導車も使う事になったそうだ。

 フロイントシャフト軍が保有している大型魔導車はトラックのような形状をしており、居住性は一切ない。

 荷台を含めて20人ほどが乗れるらしいが、軽量化のために屋根もついてないから、雨が降ったらずぶ濡れになる。

 それでも獣車の倍の速度が出せるそうだから、日程も半分ぐらいに縮められるか。


 軍は戦争や防衛のための組織だが、治安維持のための警備隊ももちろん存在していて、門兵も警備隊の所属になる。

 そして騎士だが、軍や警備隊の上位組織であり、双方の統合機関でもあるそうだ。

 優秀な軍人や警備隊が昇格する事もあり、完全な実力主義の世界だと聞く。

 さらに騎士にも下級と上級があり、下級騎士は騎士爵、上級騎士は準男爵の爵位を授かっている。

 当代限りだから領地はないが、貴族と同じ扱いをされているらしい。

 これはフロイントシャフト帝国の話で、他国だとまた異なってくるからややこしい話だ。


 大司教も、ナハトシュトローマン男爵によって奴隷に落とされた人達のケアをするため、司祭を数名、騎士団に同行させるんだそうだ。

 その奴隷達は既に解放されているが、気が付いていない可能性もあるし、別のマスターを探すか故郷に帰るかも聞かないといけないから、大型魔導車は2台ほど空のまま進むことになる。

 トレーダーズマスターも新しく任命しなきゃいけないから、今から人選に大忙しみたいだ。


 告発は全て終わったし、ナハトシュトローマン男爵にも神罰が下ったから、俺達がシュロスブルクに滞在する理由も無くなった。

 今日は待機してた方がいいと思ってたんだが、トレーダーズギルドも上へ下への大騒ぎだから、予定を繰り上げてお暇した方がいいな。

 忙しそうなトレーダーズマスターを捕まえて聞いてみたら、それでも構わないと言ってたから、遠慮なく退散させてもらおう。


 トレーダーズギルドの前でサダルメリクを召喚し、全員で乗り込んでからシュロスブルクを後にする。

 思ったより早く済んだが、あんまり早くフォルトハーフェンに着いても問題だから、1週間ぐらいかけてのんびり行くとしよう。


 だけどその前に、エリア、ルージュ、エリザの装備を決めないとな。


 街道から外れてアクエリアスを召喚し、サダルメリクにもハイディングフィールドを張ってから乗り込む。

 わずか4日ぶりだっていうのに、帰って来たって気がするな。


「ようやく帰ってこれたわね」

「ええ。トレーダーズギルドの貴賓室も凄かったけど、ちょっと過ごしにくかったわね」


 アクエリアスでの生活に慣れ切っているアリスとエレナも、俺と同じ感じか。


「前はお客さんだったけど、マスターの奴隷になってからだと、また違った感じになるね」

「そうですね。アリスさんやエレナさんとは少し違いますけど、これからここで生活するわけですから、新居に来たっていう感じに近いでしょうか」

「そうかもしれないわね。ふふ、楽しみだわ」


 ルージュ、エリザ、エリアも、以前とは違ってマスターズデッキやルーフデッキへの侵入許可を出してあるから、もうお客さんじゃなくなっている。

 前も宝瓶温泉は使ってもらってたが、俺も入るから時間制限は設けていた。

 水着着用なら問題なかったが、アリスやエレナに水着で風呂は邪道とまで言われていたから、時間を決めておかないと危険だったんだよ。

 3人も俺の奴隷になったことで、水着は着ない方針で纏まっているから、時間制限は必要ないだろうということになり、本当の意味で自由に使えるようになったわけだ。

 早速入ろうという話になったし、俺もこの4日間ウォッシングで済ませてたから、すぐに入りたいという気持ちはよく分かる。

 だけどその前に、3人の装備も決めておきたい。

 アリスとエレナの時は、風呂に入ってそのままズルズルとだったから、警戒する意味でも先に決めさせてほしい。


「浩哉もスケベよねぇ」


 ところがアリスに、真逆の意味でとらえられてしまった。

 ちょっとはそんな考えがあったのは否定しないが、ニヤニヤしながら言われるのは釈然としない。


 それはともかく、サダルメリクの中で俺のスキルについても説明しているから、驚かれはしたが納得もされている。


「というわけで、装備だけど、エリザは騎士だって言ってたから、盾は確定でいい?」

「はい。ですが剣は、どうするのですか?」


 盾はメインウエポンスロットに装備する形になるが、内側に剣も内包しているから、それを使ってもらうことになるな。


「盾に収納とは、そんな方法もあるのですね」

「その代わり鞘が無いし、盾を壊されたら剣も同時に壊れるから、攻撃力だけじゃなく防御力も下がる。まあ、ブルースフィアの武器は壊れる事が無いから、その心配はいらないけど」


 ブルースフィアで召喚する武器や防具も不懐だから、壊れる心配はないんだが、盾が破損した時点で剣の収納が出来なくなるし、剣を抜かずに盾が壊れてしまったら剣も壊れてしまう。

 形状によっては盾の強度も落ちるから、実際には使いにくいんだろうな。


「あとは防具だけど、騎士ってことだとこれになる。ただ軽いとはいえ金属製だから、水辺では注意が必要になるよ?」

「騎士鎧ですから、それは当然です」


 それもそうか。

 それじゃあエリザに装備させる前に、性能を確認しておこう。


 ウイングエッジ・シールド

  盾:☆☆☆☆☆☆

  基本ステータス2倍

  魔族特攻、時々光属性攻撃付与

  アタックスキル:ウイングライト・ブラスター(VIT+MND、5倍補正)


 ジュピター・ブレイブアーマー

  ヘッド:☆☆☆☆☆☆ ジュピター・ブレイブサークレット

  アッパー:☆☆☆☆☆☆ ジュピター・ブレイブコート

  アーム:☆☆☆☆☆☆ ジュピター・ブレイブガントレット

  ロウアー:☆☆☆☆☆☆ ジュピター・ブレイブブリーチズ

  フット:☆☆☆☆☆☆ ジュピター・ブレイブグリーヴ

  STR+10、DEX+5、VIT+25、AGI+10、MND+20、INT+5

  火風土光闇耐性

  石化、毒物、魅了、麻痺、即死耐性

  徐々にHP、MP回復

  セットボーナス:VIT+10、MND+10、HP補正、MP補正、盾スキル補正


 シルター、リッター用装備の最高峰☆6装備は、フル装備するとこんな感じになる。


 ウイングエッジ・シールドは、広げられた翼があしらわれていて、見た目も美しい。

 収納された剣も、同じく鳥の翼の意匠がある。

 区分としては盾だが、魔族特攻や光属性攻撃付与は収納されている剣にも発動する。

 ただしアタックスキル:ウイングライト・ブラスターは、盾にあしらわれている、広げられた翼から放たれる広域ビームみたいなもんだから、盾を手にしていないと使えない。


 ジュピター・ブレイブコートは肩と胸に金属製の装甲があるが、ブリーチズも金属の装甲が太ももを覆ってるし、ガントレットやグリーヴも金属製だから、全ジョブの中で最も重量がある。

 ブルースフィア・クロニクルに重量システムは無いが、金属鎧という区分は、水に落ちた際の行動時間が半分になるという欠点があるり、ジュピター・ブレイブアーマーも該当しているため、見た目はカッコいいんだが、船上で装備しているプレイヤーは少なかった。

 落ちなければいいだけの問題だし、転落防止のために対策も取るから、エリザの装備はこれでいいだろう。


「あたしは魔法が得意だから、これかなぁ」


 ルージュが選んだのは、予想通り杖だが、短杖じゃなくて長杖の方か。

 コーラー、サモナー用でそこそこの補正はあるんだが、真価を発揮するには召喚獣が必要だから、ヘリオスフィアでは正直微妙な装備な気がする。

 だけどルージュは気に入ったみたいだから、出してみよう。 


 スターリング・ロッド

  長杖:☆☆☆☆☆☆

  基本ステータス2倍

  召喚獣:ステータス2倍

  時々召喚獣属性攻撃付与

  アタックスキル:ワイドリング・スラッシュ(MND+INT、5倍補正)


 サターン・ブレイブアーマー

  ヘッド:☆☆☆☆☆☆ サターン・ブレイブハット

  アッパー:☆☆☆☆☆☆ サターン・ブレイブローブ

  アーム:☆☆☆☆☆☆ サターン・ブレイブグローブ

  ロウアー:☆☆☆☆☆☆ サターン・ブレイブホーズ

  フット:☆☆☆☆☆☆ サターン・ブレイブブーツ

  DEX+10、VIT+10、AGI+15、MND+20、INT+20

  火水風土闇耐性

  即死、石化、毒物、麻痺、魅了耐性

  徐々にHP、MP回復

  セットボーナス:MND+10、INT+10、HP補正、MP補正、魔法スキル補正


 スターリング・ロッドは基本ステータスこそ2倍になるが、真価は召喚獣のステータスも2倍、召喚獣が属性攻撃をすることだろう。

 アタックスキルは、先端の星をイメージした球体の周りにあるリングを巨大化させて撃ち出すから、これは使いやすいか。


 防具もSTR補正が一切ないため、物理攻撃力は皆無に近いし、殴ることもある短杖と違い、長杖は召喚獣を召喚するための触媒でもあるから、直接攻撃扱いなのはアタックスキルぐらいだ。

 だから魔法スキル補正が入ってるんだが、ヘリオスフィアだとスキルレベルに補正が加わっても、対応スキルの魔法が使えるようになるわけじゃないから、威力が少々上がるぐらいが精々か。

 ヘリオスフィアにも召喚魔法はあるんだが、聞いた感じだとテイムに近いし、魔物の世話も必要だから、契約するにしても大型の魔物は厳しいな。

 とりあえずルージュには、魔法使いとして頑張ってもらおう。


 エリアは最後まで悩んでいたが、エルフといったら弓だろうという俺の独断と偏見で、弓にしてもらった。

 武器は俺が装備しているユグドラシル・ピアッサーをそのまま使い、防具はアーチャー、ピアッサー用のヴィーナス・ブレイブアーマーだな。


 ヴィーナス・ブレイブアーマー

  ヘッド:☆☆☆☆☆☆ ヴィーナス・ブレイブキャップ

  アッパー:☆☆☆☆☆☆ ヴィーナス・ブレイブコート

  アーム:☆☆☆☆☆☆ ヴィーナス・ブレイブグローブ

  ロウアー:☆☆☆☆☆☆ ヴィーナス・ブレイブホーズ

  フット:☆☆☆☆☆☆ ヴィーナス・ブレイブブーツ

  STR+20、DEX+15、VIT+5、AGI+25、MND+15、INT+5

  火風雷光闇耐性

  即死、石化、毒物、麻痺、鈍足耐性

  徐々にHP、MP回復

  セットボーナス:STR+10、AGI+10、HP補正、MP補正、弓術スキル補正


 弓使いにとっては垂涎の性能だと思うが、惜しむらくはエリアに弓の経験がないことか。

 今回初めて弓を持ったから、ようやく弓術スキル1が取れたわけだし、先は長いな。

 まあ、装備にも弓術スキル補正があるから、しばらく使ってれば慣れるだろう。

 スキルレベル補正は、全くの素人でも、最低限の動きが出来るようになってるっぽく、戦闘経験がほとんどなかったエレナも、けっこう早く槍を使えるようになってたからな。


 ここで普通なら、ダミー用の☆4装備を選ぶんだが、ブルースフィアのレベルが5になったことで開放されたアイテムの中に、装備品用の偽装結界、プレインズフィールドがあったし、さらに都合のいい事にアクセサリースロットが1つ増えていた。

 プレインズフィールドをアクセサリースロットに装備させると、地味な見た目に偽装してくれるから、ダミー装備を選ぶ必要もなくなり、常に装備出来る事になったわけだ。


 プレインズフィールド

  アクセサリー(ブローチ):☆☆☆☆☆

  装備品偽装、LUK+5


 テキストはこんな感じだが、珍しいことにLUK補正のある装備でもある。

 ブルースフィア・クロニクルのLUK値は、魔物との遭遇やアイテムのドロップ率に影響しているが、倒せば最低限の素材は確保できるため、あまり重要視はされていなかった。

 だがナハトシュタットでも使ったインビジブル・マントやサイレント・リングみたいな時間制限がランダムないアイテムにも影響があることが分かってからは、そこそこ需要が増えてきた装備群でもある。

 プレインズフィールドっていうアクセサリーは存在してなかったが、装備の見た目を変えるシステムはあったから、多分それがアクセサリー化されたってことだと思う。

 他のアクセサリースロットだが、1つはガード・ネックレスが開放されていたため、これを購入して渡しておいた。

 もう1つはサクリファイス・リングがベストだったんだが、こっちはまだ開放されてないから、同じく開放されたばかりのリライフ・リングを装備してもらった。

 本来なら残り1つのスロットは好みのアクセサリーを装備してもらうんだが、リライフ・リングは発動率50%な上、発動してもしなくても壊れるから、保険の意味も込めて2つ装備してもらっている。

 これでも絶対に大丈夫ってわけじゃないから、早く素材を集めて、合成屋で作らないと。

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