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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第3章・契約履行から始まる奴隷契約
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ヘリオスフィアの大陸

 女性陣が宝瓶温泉を楽しんでいる間、俺は和室に籠り、サダルメリクの改装に頭を悩ませている。


 あ、ルーフデッキの大浴場は、宝瓶温泉と名付けた。

 モチーフが宝瓶宮で、そこにある大浴場だから宝瓶浴場や宝瓶の湯っていう案もあったんだが、なんか銭湯みたいな気がしたから、この際ってことで決めてみた。

 宝瓶温泉は常にお湯が張られているから、温泉って言ってもいいはずだ。

 魔導具で作り出したお湯だから、厳密には違うし、多分成分なんかも入ってないと思うが、それでも温泉だと言い張りたい。


 そういや寒くなっても宝瓶温泉を使えるように、ルーフデッキも改装しなきゃいけなかったな。

 だけど今はまだ暖かいし、寒い所に行く予定も無いから、後回しでいいか。


 サダルメリクの改装だが、まずはトランクルームを拡張しよう。

 トランクルームは大人5人が寝転がれる広さがあるが、移動は自動操縦にするし、今は6人になってる上に男は俺だけだから、もう少し広げておいた方がいいと思う。

 だいたい8畳ぐらいの広さだから、10畳ぐらいにしておくか。

 げ、広さの設定って畳何畳とかじゃなく、平米なのかよ。

 あ、今のトランクルームの広さって、15平米なのね。

 それなら20平米にしてしまおう。

 キッチンはそのままでいいとして、あと移動中に自由に食べられるように、時間停止機能のついた食料庫も置いておくか。

 寝転がることもあるだろうから、椅子やテーブルは折畳収納式にして、床はそのまま雑魚寝もできるようにしておくべきだな。

 ああ、それなら毛布も必要か。

 モニターは台座を用意して、その上に置こう。

 とりあえず、こんなもんかな。

 インテリアとかは、あとでアリスやエレナにも聞けばいいし。


 続いて後部座席を2列にし、トランクルームへの出入りが楽になるようにどちらも2人掛けに改装する。

 運転席と助手席はそのままだから、これで6人乗りになった。

 全長は変えてないから、内部拡張をすることで何とかなったと言える。


 そして水陸両用車への改装だが、ブルースフィア・クロニクルの水陸両用車は、車体下部も水が入り込まないようにしっかりと覆われている。

 これは見てすぐに分かるようにというゲーム的な理由が大きいが、内部に水が入り込まないようにという理由も存在する。

 なのでサダルメリクの改装する場合、その処理が最重要だ。

 さらにタイヤを収納した後、水が入らないようにしっかりと塞がないといけないし、ハイドロジェット推進機も取り付けるから、取り付け位置の調整も必要になる。

 水上で乗り降りすることもあるだろうから、ドアを開けても浸水しないように足場もいるな。

 改装するための指定とかは楽だったんだが、改装費がかなり高くつき、最初から水陸両用車を買っても大差ないぐらい掛かってしまった。

 サダルメリクは俺の大切な愛車だから、仮に別に買った方が安くても、躊躇なく改装しただろうな。


 ここまでで、総額1,300万ゴールドになってしまったが、後悔はしていない。


 そして次は、アクエリアスの改装だ。

 といっても、神殿風の柱を4本から6本に増やして、位置も少し調整するぐらいか。

 侵入不可のおかげで雨風は気にしなくていいし、ハイディングフィールドがあるから周囲から見られる恐れもない。

 それでも新しくハイディングフィールドを購入して、ルーフデッキ全体を覆うように調整している。

 寒いところでも入れるようにしたかったんだが、暖房とかは存在してないんだよな。

 ただブルースフィア・クロニクルでは、寒い所で軽装に着替えても、凍えたりはしなかったから、もしかしたら大丈夫なんじゃないかって思う。

 ゲームだからって言ってしまえばそれまでだが、そのゲーム的な性能が存分に発揮されてるわけだから、少しは期待したいところだ。


 アクエリアスの改装は宝瓶温泉ぐらいしかするつもりがないから、これで終わりになる。

 すぐに改装を実行したいところだが、さすがにこんな湖のど真ん中で送還なんかしたら死ぬしかないし、みんなは宝瓶温泉を楽しんでるんだから、残念だが陸に上がってから驚いてもらうことにしよう。


 改装も決定ボタンを押したから、あとは送還すれば終わりなんだが、やることが無くなってしまった。

 ブルースフィアのおかげで楽な旅が出来ているが、逆に暇な時間も増えてきているから、時間を潰す方法も考えないといけないな。

 いつもなら俺も宝瓶温泉に入るんだが、さすがにエリアリアさん、ルージュ、エリザベッタ王女がいる中に突っ込む度胸はない。

 マスターズルームには書斎があって、300冊ぐらい本があるから、勉強も兼ねてマスターズデッキで読みながらお茶でも飲むか。


 書斎で適当に本を見繕って、マスターズデッキに出る。

 本をテーブルに置いてから、ブルースフィアでレモンティーと軽食を購入して、位置を決めてから腰を下ろし、おもむろに本を手に取り、ページをめくる。

 これは魔物図鑑、しかも東大陸編か。


 ヘリオスフィアには俺が今いる北大陸の他に、東と南にも大陸が存在している。

 北大陸が一番大きく、だいたい中国とロシアを合わせたぐらいか。

 その次に大きい南大陸は北アメリカ大陸ぐらいで、東大陸はオーストラリアと同じぐらいとなっている。

 他にも大小様々な島があり、特に南大陸には多い。

 なのに全部の大陸を合わせても、俺が確認出来るマップの3割ぐらいしかない。

 しかも海には巨大な魔物も多いから、外海に進もうとする人達もほとんど現れない。

 だからそれぞれの大陸では、自分達の住んでいる大陸こそがヘリオスフィア唯一の大地だと思われていて、他に大陸があるなんて考えられた事も無い。

 距離も、一番近いところでも1万キロは下らないから、魔導船の速度を20ノット、1日に移動できる時間を8時間として計算しても1ヶ月も掛かってしまう。

 食料なんかはストレージに突っ込んでおけるが、魔物の襲撃も警戒しないといけないし、海の上には目印も無いから、しっかりと方位を知るための知識を身に着けておかないと遭難してしまう。

 そこまでして航海し、新大陸を見つけたとしても、無事に帰って来られる保証も無い。

 だからヘリオスフィアの船は、魔導船も含めて陸地が見える位置までしか沖に出ない。

 それでも漁はできるし、外海に比べれば比較的安全だ。

 俺の予想だが、多分新しい大陸が見つかるのは、空を飛ぶ技術が発達してからでないと無理じゃないかと思う。

 とはいえ、既に技術や発想が行き詰っているヘリオスフィアで、空を飛ぶ乗物なんていう発想が出てくるかは疑問だ。


 肝心の魔物だが、基本的には同じようだが、生息しているのは亜種になり、大陸特有の魔物も存在しているようだ。

 北大陸の魔物でさえロクに知らないためにあまり楽しめなかったから、暇を見つけてしっかりと調べておこう。


 魔物図鑑東大陸編をテーブルに置き、代わりに別の本を手にする。

 今度は南大陸で一番大きな国の歴史本か。

 国名はノウム・インフィニタス帝国で、建国してから20年目に発行されているな。

 今が何年なのかは分からないし、北大陸と南大陸じゃ暦も違うだろうから、今で建国何年目なのかは分からないが、比較的新しい国なんだろう。

 前身となったインフィニタス王国は、元々南大陸でも大国だったが、新しく即位した王が外征に乗り出して周辺国を瞬く間に征服し、最大国家になったことで国名をノウム・インフィニタス帝国と改め、皇帝として即位した、か。

 これだけ見れば地球でもよくあった話だが、問題なのはノウム・インフィニタス帝国が人族至上主義国家ってことだな。

 ヒューマン、ライトエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、オーガが人族に分類されていて、ノウム・インフィニタス帝国ではその5種族が非常に優遇されているみたいだ。

 逆に獣族はほとんどが奴隷で、妖族に至っては娼婦扱いされている。

 竜族はほとんど住んでいないようだが、ノウム・インフィニタス帝国をも凌ぐ戦力を持っているとされる南大陸のもう1つの帝国、リヴァイアス竜帝国とはそれなりに友好的な付き合いをしているみたいだから、人族と同じ待遇で暮らせているとある。

 そのリヴァイアス竜帝国は、逆に竜族至上主義国家で、ノウム・インフィニタス帝国と友好的な付き合いをしているから人族はそれなりの待遇だが、獣族と妖族の扱いは変わらないみたいだ。

 というより、南大陸の獣族と妖族は、奴隷としてこき使われている感じだな。

 どちらの帝国も、水面下では相手国を見下しているから、いつか正面からぶつかるんじゃないかって書かれていた。

 ノウム・インフィニタス帝国の歴史書だから、最終的にはノウム・インフィニタス帝国が勝つだろうとまとめられていて、そこで本は終わっていた。

 俺には差別意識はないし、獣族のアリスに妖族のエレナとも仲良くやってるから、南大陸とは相性が悪いな、これは。

 南大陸に行く気が削がれてしまったが、いずれは行かなきゃいけないから面倒だ。

 少なくとも行く前に、俺はもちろん、アリスとエレナのレベルも上げておかないとな。

 ここは湖のど真ん中だし、結界を解いても見つかる心配はないから、エリアリアさん達には悪いが、狩りをさせてもらおう。


 南大陸でこれだと、北大陸や東大陸の歴史も気になってくるな。

 持ってきた本には無かったから、書斎を探してみるか。


「あ、浩哉。ちょっといい?」


 書斎に行こうと立ち上がったところで、アリスがルーフデッキから下りてきた。


「どうかした?」

「ええ。せっかくだから、みんなで宝瓶温泉に入らないかと思ったの。姉さん達も賛成してくれてるわよ」


 魅力的な提案だが、さすがにそれはマズいだろう。

 エリザベッタ王女もいるんだから、尚更だ。


「そう言うと思ってたわ。だから邪道ではあるんだけど、水着を買ってもらおうと思ってね」

「水着を?ああ、確かにそれなら、俺も一緒に入れなくもないか」


 アリスもエレナも、風呂に水着は邪道だと言い切り、初めてアクエリアスを紹介したときでさえ、奴隷という立場を強調することで、すぐに全裸になったぐらいだ。

 そのアリスが邪道だと認めつつも水着を求めるということは、俺だけが宝瓶温泉に入れないという現状をなんとかしたいと考えてくれたってことだろう。


「姉さんはあたしと同じ考えなんだけど、さすがに男と一緒に入浴っていうのは初めてだし、エリザベッタ殿下となんて問題でしかないから、仕方なくだけどね」


 ここでルージュの名前が出てこない事が気になるが、ルージュは特に気にしてないらしい。

 それはそれで問題な気もする。


「分かった。だけど水着っていっても、けっこう種類があるけど?」

「シュロスブルクで姉さん達を降ろしたら、使わなくなると思う。だから適当なやつで構わないわ」


 確かにエリアリアさん達をシュロスブルクで降ろしたら、また3人での旅に戻ることになるから、水着は使わないか。

 エリザベッタ王女をどうするかはまだ決めてないから、使う可能性も微弱ながらあるのが気になるところではある。


「ああ、水着はセパレートタイプでね」


 セパレートタイプっていうと、ビキニじゃないか。

 なんでだよ?


「泳ぐんならまだしも、お風呂に入るために着るんだから、布地が多くても意味がないでしょう?」


 そう言われてしまうと、そういうもんかと納得してしまいそうになる。


 ヘリオスフィアにも水着はあるが、男は地球と同じく海パン一丁で、デザインは短パン型のみなんだが、女性用水着はワンピースタイプか上下に別れているセパレートタイプかになる。

 セパレートタイプはビキニのことなんだが、ビキニっていう言葉は存在していないし、そのセパレートタイプも上は胸より上の半袖シャツみたいになっていて、下は男と同じ短パン型だから、へそ出しっていうのが近いか?

 翻ってブルースフィア・クロニクルの水着は、水辺での活動が多い事もあって、豊富に存在している。

 男物でさえブーメラン、短パン、半パン、長パンとあるんだが、女性向けはワンピースやビキニはもちろん、パレオ付きやフリル付き、モノキニにハイレグ、マイクロやVラインなんていう際どいものまであったし、運営の悪ふざけの賜物なのか、スクール水着もあったな。


 その中から、しかもセパレートタイプ限定で選ぶとなると、比較的大人しめなホルターネックかチューブトップ辺りが無難か?

 さすがに俺じゃ判断できないから、アリスに選んでもらおう。

 あ、その前に、自分のを買っておこう。

 ブーメランはあり得ないし、短パンだと短すぎる気がするから、黒の半パンでいいや。


「アリス、みんなの水着選びは任せた」

「いいけど、あたしが選ぶと際どいのを選びかねないわよ?」


 自分で言うなよ。

 仕方ない、それならホルターネックを色違いで買おう。

 肩はフリルが、腰には太ももの真ん中辺りまであるパレオが付いてるから、露出は抑えられてると思う。

 色はアリスが赤、エレナが青、エリアリアさんが緑、ルージュが黄色、エリザベッタ王女がピンクだ。

 名前的にルージュは赤系にしたかったんだが、それだとアリスと被るから、一番年下ってこともあって黄色にさせてもらった。


 その水着はアリスに持っていってもらったんだが、みんな殊の外気に入ってくれたようで、すぐに俺もお呼ばれする事になった。

 全員同じデザインなのが残念だったから、今度アリスとエレナに水着を買おうと思う。

 初めて着るからイークイッピングも使えず、少し時間が掛かったのは仕方がない。


「楽しんでるところ、お邪魔してすいません」

「こちらこそ。浩哉さんの船なのに、私達が占領してしまっているようで申し訳ありません」

「俺が勧めたんですから、気にしないでください。それより、相談したい事があります」


 昼食時にでも、と思ってたんだが、早い分には助かる。


「相談、ですか?」

「ええ。現在アクエリアスには、結界が張られています。だけどこれだと人ばかりか魔物も寄ってこないんで、狩りができません。ここは湖の真ん中だから、見られる恐れも無いんで、狩りのために結界を解除したいんですよ」


 俺が口にすると、エリアリアさん、ルージュ、エリザベッタ王女の顔色が悪くなった。

 うん、説明が悪かったな。


「解除するのは人除け、魔物除けの方ですから、衝撃とかを防ぐ結界は張ったままです。絶対に沈められることはないんで、そこは安心してください」


 その衝撃を防ぐ結界って、アビリティ:侵入不可のことだから、解除できないんだけどな。

 許可を出せば船内に入ってこれるようになるが、不懐、不沈のアビリティもあるから、船上で暴れられても沈むことがないのもチート過ぎる。

 アクエリアスの真下から襲ってきても、不倒のアビリティまであるから、倒れることもないしな。

 さすがにそこまで説明するつもりはないから、魔物の攻撃を完全にシャットアウトできる結界が張られてるってことで押し通すが、それはそれで問題を引き起こすに決まってるから、シュロスブルクに着いたら契約魔法を使ってでも口外禁止を徹底してもらわないと。


 アリスとエレナも説得に加わったことで、一応納得はしてくれたので、午後からは狩りの時間になる。

 3人は見学だが、アリスとエレナは買ったばかりのアンカとシトゥラを使う予定だ。

 初めてだから、振り落とされないようにしっかりとシートベルトで体を固定してもらわないとな。

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