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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第3章・契約履行から始まる奴隷契約
28/77

シュロスブルクまでの道程

 エリアリアさん、ルージュ、エリザベッタ王女に自己紹介を終えた後、アリスとエレナにルーフデッキの案内を任せて、俺はマスターズルームの私室に入った。

 アリスに一緒に入ろうと言われたが、さすがにエリアリアさんやエリザベッタ王女までいるから、全力で遠慮させてもらった。

 ちょっと後悔してる自分がいるが、それでも王女様と一緒に大浴場なんて、さすがに俺にはハードルが高すぎるし、今後のこともあるから無理としか言えない。


 マスターズルームの私室は、畳敷きの和室となっている。

 日本で暮らしてたアパートも畳敷きだったから、この部屋がないと落ち着かないんだよ。

 それにゴロゴロ出来るから、お気に入りの部屋でもある。


 その和室でゴロゴロしながらブルースフィアの画面を開き、ビークルショップを選択する。


 エリザベッタ王女のことはシュロスブルクまで先送りにするが、次の目的地はエレナの故郷、エーデルスト王国の辺境にある村の予定だ。

 ナハトシュトローマン男爵がどうなったかを確かめてからになるから最低1ヶ月は先になるが、エレナとの契約内容は家族を含む村の亜人の移住だから、アクエリアスじゃちょっと厳しい。

 不沈効果があるから沈む事は無いし、詰め込めば40人でもいけると思うんだが、アクエリアスの最大搭乗数は10人だから、部屋数が圧倒的に足りていない。

 移住のために改装するのも違う気がするし、何か使う機会もあるかもしれないから、いっそのこと大型船を買うのもアリなんじゃないかと思ってる。

 一応前々から考えてはいたんだが、そんなに使う機会があるかも分からないし、普段使いするならアクエリアスで十分だから、一度使ったらそれっきりなんていう可能性も低くないから、購入には二の足を踏んでる状態だ。

 それでも乗りながら航海している様を想像すると心が躍るから、どうしようか考えながらも楽しんでいる自分がいる。


 そのまま1時間程ブルースフィアの画面を眺めていると、和室のドアがノックされた。


「どうぞー」

「失礼します。浩哉さん、みなさん上がられました」


 入って来たのはエレナだった。

 アリスと一緒にエリアリアさん、ルージュ、エリザベッタ王女を大浴場に連れていってたんだが、上がったってことは俺もいかないとだな。


「分かった」


 3人が使う部屋を案内しなきゃいけないから、俺が行くしかないんだよな。

 別にそれぐらいは構わないし、船主として当然のことだから、全く問題ないけど。


 アンダーデッキの部屋を1人ずつ使ってもらおうかと思ってたんだが、脱出できたとはいえ1人だと不安だから、3人とも同室を望んでいる。

 エリアリアさんとルージュは、身元が判明したエリザベッタ王女と同室は恐れ多いと言ってたが、たった2日とはいえ同じ境遇の同僚だったし、1人だと心細いから、是非にと言って同室が決まった。

 なので泊まってもらう部屋は、メインデッキにあるデラックスルームだ。

 施設の案内を兼ねて、アリスも同じ部屋に泊まる予定だったんだが、エレナが気を利かせて交代してくれたから、今夜は俺とアリスは2人っきりになることも決まっている。


「メインデッキは自由に使ってもらって構わないけど、アンダーデッキは一部立入禁止になっていて、マスターズデッキより上は俺の許可がなければ入れないから、大浴場に入りたい場合は、面倒だけど言って下さい。取り込み中でなければ、許可を出すので」


 メインデッキは特に問題ないが、アンダーデッキにある駐車場は、下手に立ち入られても困るから、立入禁止にさせてもらっている。

 マスターズデッキとルーフデッキは、マスター以外は許可がなければ立ち入れないから、こっちも同じく立入禁止だ。

 ただルーフデッキには、メインデッキとマスターズデッキの階段を昇ればいいわけだから、マスターズルームに入る必要はない。

 俺が入ってることもあるし、アリスやエレナとヤッてる可能性も否定できないから、悪いとは思うが許可制にさせてもらう。


「ほ、本当に、こんな部屋を使わせてもらってもいいんですか?」


 エリアリアさん、ルージュ、エリザベッタ王女の3人は、デラックスルームに驚いているが、アンダーデッキにある部屋は少しグレードが落ちるし、3人だと少し狭いだろうから、ここ以外の選択肢は無いんだが?

 奴隷だからっていう感情があるからなんだろうが、俺にとってはその程度の理由は理由にならないですよ。


「勿論。今日はエレナもここに泊まってもらうから、分からないことがあったら遠慮なく聞いて下さい」

「あ、ありがとうございます!」


 お腹も膨れたからか、ルージュが笑顔になった。

 エリアリアさん19歳、ルージュ13歳、エリザベッタ王女15歳と、ルージュが一番年下なんだが奴隷歴は一番長く、2年近くもあの離れで暮らしていたそうだ。

 ルージュが奴隷になった経緯も聞けていないが、こっちもシュロスブルクに着けば聞けるだろう。

 どうせロクでもない理由なんだろうけど。


「アリス、俺は風呂に入ってくるから、しばらくはここにいてもいいよ」

「ありがとう。後であたしも行くわね」


 お姉さんと積もる話もあるだろうからってそう言ったのに、そんなこと口にしたらあらぬ誤解を招くぞ。

 3人とも意味は分かってるみたいで、顔が赤くなってるし。

 ご想像の通りですよ、こんちくしょう。


 逃げるようにデラックスルームを後にした俺は、真っ直ぐに大浴場を目指した。

 俺も顔が赤くなってる自覚はあるからだが、せっかく再会した姉妹の会話に水を差すつもりもなかったし、たまには1人でのんびりするのもありだと思うから、アリスが来るまでは堪能しよう。


 そういえば、いつまでも大浴場っていうのも味気ない気がするな。

 せっかくだし、何か名前を考えてみよう。


 ジャグジーや打たせ湯を楽しみながら大浴場の名前を考えていると、アリスがやってきた。

 多分30分近くは考えてたと思うが、思ってたより早く来たな。


「アリス、もういいの?」

「ええ。シュロスブルクまではまだまだ掛かるから、話す機会はあるしね」


 イークイッピングを使って服を脱ぎ、腰を下ろしてから俺に背中を預けてくる。


「2人っきりで入るのって初めてだけど、なんか緊張するわね」

「分かる。慣れたっていうのもあるんだろうけど、いつもエレナも一緒だったから、ちょっと気恥ずかしいな」


 いつもはエレナも一緒だし、少ししたら2人とも俺を捕食にかかるから、こうやって過ごすっていうのは初めてかもしれない。


「お姉さんとは話せた?」

「ええ。ただ契約の関係で、まだあたしにも話せないことはあるそうなの。辛そうな顔をしてたから、きっとロクでもない内容ね」


 ナハトシュトローマン男爵の目論見は、奴隷契約を結んだエリアリアさんを人質に、アリスに奴隷契約を強要しようってとこだと思うが、こんな形で2人が再会することなんて露ほども思ってないだろう。

 なのにエリアリアさんの口から話すことを禁止してるなんて、確かにロクでもない理由や内容しか想像できないな。


「シュロスブルクまで、どれぐらい掛かるんだっけ?」

「この湖を抜けるのにどれぐらい掛かるかによるけど、マップを見る限りじゃ5日ぐらいかな」


 距離は表示されてないが、ナハトシュタットまでの道中と速度からの予想だが、この湖を突っ切るのに2日、そこからシュロスブルクまでは1週間ぐらいだろう。

 40ノットという快速のアクエリアスでさえ、縦断するのに最低2日掛かるなんて、とんでもなく広い湖だな。

 しかも夜も自動操縦で航行してだからな。

 40ノットは時速約74キロだから、単純な移動距離は2日で3,500キロを超えてしまう。

 日本列島より断然広いってことだぞ、これは。

 実際問題として、丸2日航行し続けるわけじゃなく、明後日の昼前には到着できそうな感じだから、2,000キロちょいってとこだと思うが。


 陸に上がったあとはサダルメリクの出番になるが、予定してる上陸地点からシュロスブルクまでは300キロぐらいか。

 最高速度時速80キロのサダルメリクなら、頑張れば1日で到着出来ない事も無いんだが、そんな速度を出せる魔導車は存在してない可能性が高いから、帝都なんてとこで乗り回してたら皇帝に取り上げられる可能性が否定できない。

 だからシュロスブルクに近付いたら速度を落として、さらにカモフラージュフィールドっていう偽装結界で簡易魔導車っぽい見た目に偽装する予定だ。

 大きさも少しなら小さく見せられるし、ヘリオスフィアにもミラーリングっていう空間拡張魔法があるから、見た目より多く人を乗せたり荷物を積んだりっていうのは、怪しまれる心配はない。

 カモフラージュフィールドでサダルメリクの全長を3分の2ぐらいに見せつけ、後部座席がミラーリング付与のミラールームだと偽装すれば、何とかなるんじゃないかと思う。

 見た目だけしか偽装できないから、乗り込まれたりしたらアウトなんだが、そこはアビリティ:侵入不可に頑張ってもらおう。


「すごく早く到着できるけど、アクエリアスでも2日近く掛かるって、すごく広いわね、この湖」

「だよな。しかもジャイアント・フィンみたいな魔物もけっこういるみたいだから、普通の魔導船だと何日掛かるか分からないぞ」


 ナハトシュタットの港に停泊していた中型魔導船を鑑定してみたが、最高速度は20ノットと、アクエリアスの半分だった。

 しかも自動操縦なんてもんもついてないから、夜は停泊しなきゃならない。

 そうなると、抜けるのに1週間近く掛かるんじゃないか?


「湖を迂回しなきゃいけないから面倒だと思ってたけど、時間が少し掛かるけど、安全面だと陸路の方が断然マシね」


 それでも対岸から1週間ぐらいでシュロスブルクに到着できるのは分かってるから、迂回するより湖を突っ切った方が数日は早く着けるのは間違いない。

 道中の安全と天秤にかけたら、ほとんど100%の人が湖を迂回する方を選ぶが、これは当然の話か。


「ところで浩哉、さっきからあたしのお尻に、ナニかが当たってるんだけど?」

「……ごめん」


 振り返ったアリスが、ニヤニヤしている。

 こんなシチュエーションは俺も初めてだから、興奮してました。

 真面目な話で誤魔化せるかと思ってたけど、全然無理でしたよこんちくしょう。


「謝らなくてもいいわよ。あたしとしても、望むところなんだから」


 そのまま唇を押し当ててきたアリスを後ろから抱き締め、俺は無言でアリスの体中をまさぐる事で応えることにした。


 ヘリオスフィアにも娼婦とか娼館とかはあるんだが、そっち方面の知識もほとんどないらしいから、相手の話を1時間ぐらい聞いて、最後の方でヤって終わりなんだとか。

 俺もヘリオスフィアに来るまでは経験無かったが、伊達に日本人をやってたわけではなく、知識だけはそれなりにあったつもりだ。

 だからアリスだけじゃなくエレナも、初めての時は考えた事も無かった感覚に戸惑い、怖がっていた気がする。

 今じゃ慣れてきてるから、すごく喜んでくれるな。


 可愛く喘いだかと思えば大きく体を跳ねさせたり、物欲しそうな顔をしたかと思ったら甘えた顔を見せたりと、アリスは俺の手の中で目まぐるしく表情を変えている。

 アリスは間違いなく美少女だし、リスの獣人アルディリーってことで、リスミミはもちろんリスシッポもある。

 耳は触るとくすぐったそうにするが、大きなシッポはフワフワしているし、アリスも気持ちいいらしい。

 そのシッポもアリスにとっては弱点のようで、付け根辺りを優しく触ると蕩けた表情も浮かべてくれる。

 今日はこのまま大浴場でアリスの体を堪能させてもらって、その後でマスターズルームに雪崩れ込ませていただきます。


 はい、朝になりました。

 目を覚ましたらいつものようにアリスに唇を塞がれてしまったが、初めてアリスと2人っきりで過ごしたこともあって、互いにちょっと照れてしまった。

 しかも初めてのシチュエーションでもあるから、お互い歯止めが利かず、エレナが来るまで2回も交わってしまいました。

 朝っぱらからナニをしてるんだと思わなくもないが、それだけアリスが魅力的だったんです。

 ただ今夜はエレナも交えて、さらにエレナを優先的にという約束を取り付けられてしまったから、さらに頑張らないといけなくなってしまったが。


 大浴場でひとっ風呂浴びてからしっかりと身だしなみを整え、メインデッキのリビングに下りる。

 既に3人も起きていて、俺達が下りてくるのを待っていたみたいだ。

 待たせてしまって申し訳ない。


「遅くなってすいません。早速朝食にしましょう」


 3人にはブルースフィアのことは話してないから、アリス、エレナと一緒にキッチンに行き、そこでブルースフィアを開いてから朝食を購入する。

 ヘリオスフィアではストレージに食料を詰め込んでるし、出来立ての料理が野営に並ぶことも珍しくないから、3人も特に疑問を感じるは無かった。

 今日の朝食はサンドイッチとサラダ、目玉焼きに唐揚げだ。


「美味しい……。こんな料理、初めて頂きました」


 昨日の夕食もだが、3人とも驚きながらもパクついていたな。

 エリザベッタ王女は上品だったが、ルージュは手当たり次第にって言葉がピッタリだった。

 エリアリアさんが嗜めていたが、そのエリアリアさんも自分の皿に多めに確保してたぐらいだ。

 今朝は1人分をちゃんと取り分けて出しているが、それでもルージュはあっという間に平らげてしまったし、エリアリアさんの皿もそろそろ無くなりそうだ。

 エリザベッタ王女も俺より早いペースで空になっていってるから、おかわりを用意した方がいいかもしれない。


「姉さんがそんなに夢中になるなんてね。気持ちは分かるけど」

「そうね。契約のこともあるし、私達は運が良かったわ」

「正直、羨ましいっていう気持ちはあるわ。私達が粗末な食事を食べている間、あなた達はこんな、貴族でさえ食べたことがないようなお料理を食べてたんだから」


 ブルースフィア・クロニクルの料理は、地球の料理と似たメニューが揃っているし、材料も似たようなものだ。

 だから味もほとんど同じだし、俺達はそれを毎日食べているから、今更町の食堂や料理店で食べたいとは思わない。

 俺にはお役目があるから、そういう訳にはいかないんだが、まずは自分で作れるようになってから、フォルトハーフェン辺りから広めていきたいと考えている。


「シュロスブルクに着くまでは、遠慮なく食べて下さい」


 資金に余裕はあるし、昨日狩ったジャイアント・フィンもブルースフィアで換金してるから、遠慮はしないでほしい。

 一応ジャイアント・フィンは、市場に流すか検討したんだが、どこで倒したのかとか根掘り葉掘り聞かれることになるだろうし、肉は不味くて食えないらしいから、鋭いヒレと歯ぐらいしか高値が付かないそうだ。

 しかもジャイアント・フィンは、確かに手強い魔物ではあるんだが、実はGランクモンスターでしかないから、希少な素材ってことを鑑みても50万ゴールドに届くかどうかみたいだ。

 大金ではあるんだが、高レベルのハンターにとっては稼ぐのは難しくない額だから、今回は資金繰りに回させてもらった。

 ちなみにブルースフィア・クロニクルでの換金額は、42万ゴールドだった。

 水上での戦闘が多いから、水棲の魔物の換金額は渋めに設定されてるっぽいのが残念だったな。


「今後の予定ですけど、明日の昼前には対岸に着きますから、そこからは昨日使った魔導車に乗り換えます」


 乗り換えると言ってもサダルメリクはアクエリアスから発進できるし、夜はまたアクエリアスに泊まるから、手間もかからないし危険も無い。

 あ、でもサダルメリクのトランクルームが少し手狭になってきたから、少し改装しておくか。

 この際サダルメリクも、水陸両用にしてしまおう。

 こんな大きな湖がそうそうあるとは思えないが、アクエリアスが使えない大きさの湖ならそこそこあるだろう。

 喫水の問題でアクアベアリも厳しい湖や池もあるかもしれないから、サダルメリクを水陸両用に改装すれば、その分ショートカットも出来る。

 よし、あとで改装を覗いて、どうするかしっかりと考えよう。

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