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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第2章・奴隷契約から始まる友人関係
20/77

小型船購入

 立ち去ったハンターをしばらく監視した後、俺達はリビングに戻った。

 少し予定は狂ったが、これから3人で、新しく購入する小型船を決めることになる。

 小型船と言っても全長15メートル近くあるし、居住性を追求すればフォルトハーフェンでも宿代わりに使えるんじゃないかと思う。

 今日中に買うつもりだが、カスタマイズは本当にキリがないから、ある程度は見切りが必要だし、乗って見て初めて分かる問題もあるから、その都度改装する事にもなるだろう。

 フォルトハーフェンまではルストブルクから徒歩で1ヶ月半程かかるが、サダルメリクを使えば10日ぐらいで着けると思うし、どれだけ時間を掛けてもそれまでには完成させたい。


 その前に、レベル4になったブルースフィアについて、少し話をしておきたい。


 ブルースフィアのレベルが4になった理由は、アリス、エレナの2人と奴隷契約を結んだことで間違いなかった。

 なんで奴隷契約がレベルアップの条件なのかと思ったが、正確には装備スロットの開放が条件だったから、普通にパーティーを組んでもレベルは上がってたみたいだ。

 その時点でレベル3になり、レベル4になった理由は装備スロットが開放されたメンバーと一緒に、2種類以上の乗物を召喚して移動する事だったから、これもスカトとサダルメリクを乗り継いだことで達成された。

 最終的にアクエリアスに泊まった訳だから、スカトで移動してても、昨日中にはレベル4になってた事になるが。


 レベル3、レベル4共に新しいショップが開放され、既存のショップでも購入できるアイテムが増えたが、他にもいくつか機能が開放されている。

 レベル3では、装備スロットが開放されたメンバーも、ブルースフィアの画面を見る事が出来るようになり、アビリティ:侵入不可の対象外に自動で設定されていた。

 侵入許可は俺しか出せないんだが、その都度許可を出さないといけないし、それはパーティーメンバーであっても変わらないから、何気に嬉しい。

 装備スロットは、俺が許可を出さない限り開放される事は無く、開放した後で取り消す事も可能みたいだ。


 レベル4では、ショップで購入出来るモニターに、ブルースフィアの画面を映す事が出来るようになったみたいだ。

 相変わらず俺しか操作は出来ないが、より大きな画面で確認出来るし、画面が開く俺の目の前でしか確認できないという制限も無くなったから、ソファーにふんぞり返りながらアイテムなんかも選ぶ事が出来るようになった。

 一種の娯楽にもなるし、なかなか面白いんじゃないかと思う。

 ハイディングフィールドを売っているショップも、レベル4になった事で開放されいたみたいだ。


 画面を大きく出来るから、液晶テレビそっくりの大型モニターを購入してリビングに設置した。

 大型の名に相応しく、100インチのモニターを買ったから、細部もよく見えるようになっている。

 ブルースフィア・クロニクルだと、地図を移したりテレビ電話みたいに使ったりする事が多かったが、リプレイ動画なんかも再生可能だったな。

 さすがにヘリオスフィアだとリプレイ動画の再生は出来ないが、ヘリオスフィアの地図を写す事は出来るし、装備スロットなんかもこっちで確認出来るようになったから、アクエリアスにいる時はこのモニターを使うことにするつもりだ。


 レベル4まででも有用性の高い機能が多かったから、この先もかなり期待できる。

 スキルレベルは10まであるが、そこまで行くとどんな機能が開放されるのか想像もつかない。

 まずはレベル5が目標だけど、いつかレベル10まで到達したいもんだ。


「画面が大きいし、浩哉の後ろに回らなくても良いから楽になったわね」

「座ったままでも確認できるし、浩哉さんがブルースフィアを閉じても内容は記録されているみたいですね」

「俺を介さなくても、2人も確認出来るようになったのは便利だな」


 ブルースフィアの履歴も、過去1週間分までは自動で保存されるし、任意の画面を保存しておくことも出来るから、後から確認出来るようになったことも大きいし、確認だけなら俺を介する必要がなくなったのも地味に助かる。

 とりあえず、俺達3人の装備スロットと、アクエリアスのカスタマイズを記録しておこう。


「それじゃあ、小型船を選ぼう。これが俺が買おうと思ってる小型船の外観と内装だ」


 飲み物を用意してから、船舶販売店を開き、仮登録していた小型船を呼び出す。


 デッキの数はアクエリアスより少なくなっているが、外観はよく似ているため、アンダーデッキからリアデッキに上がるようになっている。


 リアデッキは5人掛けのベンチソファーとテーブルしかおけない広さだが、フロントデッキへの通路、ルーフデッキへ上がる階段、キャビンへの入口が用意されている。


 フロントデッキには5人掛けのベンチソファーしかないが、内部から操作する事で左右に開き、ガラス張りの天板が姿を見せる仕組みがある。

 マジックミラーみたいなもんだから、アンダーデッキの様子を見る事は出来ないが、板張りの雰囲気を一変させる役割も担っている感じか。

 ベンチソファーも大きく、3人ぐらいまでなら横になれると思う。


 ルーフデッキには屋根がついていて、強い日差しや雨を遮る事が出来る。

 必要がなければ後方に倒す事も出来るため、その日の気分で使い分けてもいいかもしれない。

 大きなベンチソファーにテーブルも備え付けられているし、操縦席の隣にもゆったりとしたソファーがあるんだが、後方のベンチソファーとテーブルは撤去して、浴槽に変更する事も検討中だ。


 キャビンはシックな感じの空間で整えられており、入ってすぐの所はキッチンになっている。

 その奥にダイニングを兼ねたリビングがあり、もう1つの操縦席やアンダーデッキへ下りるための階段もある。

 リビングには40インチ程のモニターも設置しておいた。


 アンダーデッキはマスターズルームとゲストルームが2部屋、トイレが2つ、そしてバスルームとなっている。

 マスターズルームには大きなベッドとソファー、テーブル、シャワー、トイレが備え付けられている。

 天井の一部はガラス張りとなっていて、フロントデッキのベンチソファーを動かす事で外の光を取り入れる事が可能だ。

 2つあるゲストルームは、ベッドが2つに椅子、テーブルというシンプルな内装にしている。


 基本的な内装はこんな感じだが、ゲストルームが必要になるかは分からないから、とりあえず潰してしまって、必要になったら改装するという手もある。


  小型魔導船:☆☆☆☆☆

  最高速度:40ノット

  全長:17,3メートル

  全幅:5,2メートル

  喫水:1,4メートル

  排水量:3トン

  最大搭乗数:7名

  アビリティ:不懐、不沈、不倒、侵入不可、自動操縦


 カタログスペックはこんな感じになっている。

 カスタマイズするから☆は5つになるが、この性能の小型魔導船なら、本来は☆3つだな。

 低いように感じるかもしれないが、ブルースフィア・クロニクルはほとんどが海だから、船は一般的な乗物になっていて、ヴェネツィアみたいに水路を張り巡らせている町も多い。

 その関係もあって魔導船技術は発達しているから、推進機関のない船が☆1つ、モーターボートみたいな船が☆2つ、小型魔導船が☆3つ、中型魔導船が☆4つ、大型魔導船でようやく☆5つとなる。

 居住空間の有無も、☆の数に関係している感じだな。


「こんな感じだけど、2人はどう思う?」

「やっぱりルーフデッキにジャグジーが欲しいわ」

「一緒に入りたいですから、3人で不自由なく入れるぐらいの大きさだといいですね」


 やっぱりそうなるか。

 ならルーフデッキの後方にあるベンチソファーとテーブルは撤去して、ジャグジーに変更しよう。

 ジャグジーは……相変わらず種類があるな。


「この中から選ぶんだけど、大きさも変更できるから、よっぽどの物じゃなければいいよ」


 木造の浴槽もあれば、大理石の浴槽もあるし、滝みたいな感じの浴槽もある。

 外観も竜や樹木を模した意匠が施されていたり、木や氷が生えてたりもするから、あんまり奇抜なのは勘弁してほしい。

 普段使いが前提の船だから、目立ちすぎると問題になるに決まってるから。


「分かってるわよ。そうね、これなんかどう?」

「いいわね。船の雰囲気にも合ってるし、小型のアクエリアスっていう感じになって素敵だわ」


 2人が選んだのは、女神が瓶を持ち、その瓶からお湯を注ぐタイプの浴槽だった。

 アクエリアスの由来はみずがめ座だから、設置するのが小型魔導船とはいえ、俺の好みにも合っている。

 浴槽そのものは、大理石製か。

 周囲から注目を浴びるだろうが、基本的に俺達3人しか乗らない予定だから、これぐらいなら問題ないと思う。


「じゃあこの浴槽を設置して、女神像はこんな感じかな」

「女神像は、両側に置いた方が良くない?」

「もう少し浴槽を左右に広げておけば、尚いい感じですね」


 言われて気が付いたが、確かにそうだ。

 女神像は進行方向を向く形で、ルーフデッキの奥に設置されている。

 その女神像が持つ瓶からお湯が流れてくるわけなんだが、この位置だと真ん中に座った人、俺になることが多いと思うが、頭から思いっ切りお湯を被ってしまう。

 だから浴槽の幅も少し広げて、コーナーに女神像を設置すれば、水を被らなくても済むようになる。

 ルーフデッキの幅ギリギリ近くにまで広げる事になるから、女神像は2体設置する事も鑑みて、少し小さくしておけば大丈夫だろう。


「それじゃあ……こんな感じでどう?」

「素敵ですね」

「ええ、いい感じだわ」


 よし、風呂はこれでオッケーだな。

 予想より大きくなってルーフデッキを圧迫している気もするから、浴槽の中は水棲魔物の皮で作られたマットレスみたいなのを敷いて、お湯を張っていない時でも使えるようにしておこう。

 マットレスを浴槽の底に合わせて調整して……よし、ピッタリだ。

 排水溝にも干渉してないから、これなら大丈夫だろう。


「他は何かある?」

「ええ、あるわ。マスターズルームは、本当に寝るためだけの部屋にしてもいいと思うの」

「大きなベッドですけど、3人で寝ると少し手狭な感じがしますね。普段は私達しか乗らないですし、リビングもありますから、椅子とテーブルは撤去して、その分ベッドを大きくした方がいいと思います」


 そうなりますか。

 けっこう大きなベッドだが、3人で寝るには少し狭いかもしれないとは俺も思っていた。

 特に問題ない大きさでもあるんだが、アクエリアスのマスターズルームのベッドと比べてしまうと小さいのは間違いないから、昨夜のことを考えると大きい方がいいって事なんだろう。

 思い出すと顔が赤くなってニヤけてくるから、考えないようにするのが大変だ。


「じゃあ……こんな感じかな?」

「ええ、十分だと思うわ」

「私もそう思います」


 もう少し時間掛かるかと思ってたけど、基本的に俺が前から考えてた形で、ルーフデッキとマスターズルームを少し調整しただけで済んだか。

 それならこれで最終確認をして、早速購入だ。

 購入費、改装費合わせて680万ゴールドだったが、資金的にはまだまだ余裕がある。

 さすがにこのペースで使ってたらすぐに底を尽くから、狩りの方もしっかりとしないといけないな。


「これでよし。あとは実物を見るだけなんだけど、物が物だからすぐってわけにはいかない」

「外に出ないといけないものね」

「それもあるし、さっきのハンター達がまだ近くにいるかもしれないから、もう少しここにいるよ。時間潰しも兼ねて、アクエリアスの内装を変更しようと思ってるから、2人も手伝ってくれないか?」

「勿論よ」

「楽しそうですね」


 アクエリアスの改装は2人にも伝えてあるから、すごく乗り気だ。

 そうは言っても、メインデッキとアンダーデッキはいじるような所も無いし、その必要性も無いから、ルーフデッキとマスターズデッキぐらいになるだろう。

 そのマスターズデッキも、ベッドルーム以外は特に改装する必要は無さそうだから、ベッドを一回り大きく変更するだけで終わった。

 あと俺のこだわりとして、リビングの一部を和室に改装させてもらった。

 住んでたアパートは昔ながらの作りだったから、部屋はフローリングじゃなく畳敷きだったから、畳があった方が落ち着けるんだよ。


 あーでもない、こーでもないと議論を繰り返しているが、なかなか話が纏まらない。

 浴槽を大きくするのは確定してるんだが、どれぐらいの大きさにするのか、ジャグジーの数はどうするのかという問題もあるし、設置場所も決まっていない。

 さらにルーフデッキは屋根なんてもんもないから、日差しや雨もダイレクトに降り注ぐ。

 雨は結界で弾けるかもしれないが、日差しはどうしようもないから、それもどうにかしたいと思うし、俺的には滝風呂に惹かれてるから、出来れば設置したい気持ちもある。


 たっぷり2時間議論を続けた結果、このままでは話が纏まらないと感じた俺達は、一度落ち着くという意味も込めて、昼食にすることにした。

 早速モニターの保存機能が役に立っているが、ブルースフィアを閉じても見られるのって本当に強いと思う。


 ヘリオスフィアには昼食っていう文化はないから、アリスもエレナも驚いていたが、小腹が空いていたのも間違いないから、美味しそうにピザを食べている。

 俺はシーフードピザが好みだが、アリスは照り焼きチキン、エレナはマルゲリータが気に入ったみたいだ。


 少し食休みを挟んでから、議論を再開する。

 2時間かけてようやく結論が出たため、こちらも最終確認をして改装を依頼しておく。

 こうしておけば、アクエリアスを送還した際に改装が行われ、次に召喚した時には既に完成している。

 ゲームのシステム上改装は一瞬だったし、ヘリオスフィアに来てからも同じく一瞬だったから、送還してすぐ再召喚しても問題はく完了しているだろう。


 まずは屋根だが、これはルーフデッキの中央に作り付け、必要な時は展開できるようにした。

 収納式のサンシェードだから視界は悪くなるが、海の上で太陽の光はかなり強いから、これぐらいは仕方がないと思う。

 屋根はマスターズデッキに繋がっている階段の上まであるから、雨が降っていても濡れずに上がってこれるだろう。

 結界があるから、雨対策は必要ない気もするが、見た目の問題もあるし、実際に体感できた訳じゃないから、備えておくのは悪い事じゃないと思う。


 そして浴槽だが、これは大きく変更がされることになった。

 ルーフデッキの前半分全てを浴槽にしたことで、20人以上が同時に入ってもまだ余裕がある。

 屋根の一部から滝が流れているため、俺の希望した滝風呂も楽しめるし、アリスとエレナが希望したジャグジーは両側に5つずつ設置することになった。

 最前部にはお湯の中でもゆったりと座れるソファーとテーブルがあるから、風呂の中でも食事を楽しめる。

 全体的に大理石庭園風に改装し、屋根を活かして神殿みたいな柱もいくつか建ててあるから、景観を損なってはいないと思う。

 屋根の真下に台座があり、その上には瓶を持った2メートルほどの女神像を3つ設置して、常にお湯が流れるようにもなっている。

 大きな風呂になったため、常にお湯が入っている状態になってしまったが、水量を調整する魔導具も女神像の台座に内臓してあるし、温度も保たれるから、いつでも入れるようになったのが嬉しい。

 排水の問題があるが、これも台座に内臓した濾過洗浄の魔導具があるから、循環させる事で無駄遣いせずに済む。

 水の循環は、魔導船ではありふれた魔導具だから、手頃な値段で購入出来るのがありがたい。

 台座の中央には水を生み出す魔導具も設置しているから、浴槽のお湯を全て抜いてしまっても新しくお湯張りが出来る。

 空気中の水分を集める魔導具だから、魔力を流せば半永久的に使えるのも良いよね。


 さらに後部は、グリルやベンチソファー、テーブルを撤去し、大きなベッドを置くことにした。

 寒い日はさすがに無理だが、暑い日はここで寝ても良いし、風呂上りに休憩も兼ねて横になることも出来るから、使い勝手は悪くないと思う。

 購入費、改装費合わせて250万ゴールドほど掛かったが、これも必要経費だと思って割り切っている。

 ブルースフィア・クロニクルをやり込んでて良かったと、心から思う。


 それじゃあハイディングフィールドの効果を確認するために外に出て、そのついでに場所を移動して、そこで小型魔導船を召喚して、しっかりと確認してからアクエリアスを召喚しよう。

 あ、その前に小型魔導船の名前を決めなきゃだった。

 みずがめ座関係で統一してるから、これもそうした方が良いよな。

 何かいい名前があるかな?

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