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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第2章・奴隷契約から始まる友人関係
19/77

隠蔽結界の効果

 朝、マスターズルームのベッドの上で、俺は目を覚ました。

 昨夜はアリス、エレナとルーフデッキで1戦交えてからベッドルームに戦場を移し、3人とも疲労困憊で眠りについたのを覚えている。

 3人とも初めてだったのに、マジで何回ヤッたか覚えてないぞ。

 アリスは初めの態度に反して受け身だったが、エレナは常に俺の上を取ろうと色々やってたな。

 ステータスの差が大きいから、俺が組み敷く事もあったが。

 奴隷になった際にかけてもらった避妊魔法とやらは、妊娠しないだけじゃなく初めての痛みも緩和してくれるそうだが、本当に初めてかと疑いたくなるほどだった。

 さすがに予想外の事態だったが、俺も気持ちよかったし、思う存分楽しませてもらったから、文句はない。


「おはようございます、浩哉さん。チュッ」

「ん。おはよう、エレナ。よく眠れた?」

「はい。こんなに清々しい朝は初めてです」


 俺が目を覚ます前に既に起きていたエレナが、俺に挨拶と同時にキスをしてきた。

 軽く応えてから眠れたか聞いてみたが、そんな答えが返って来たから、俺としても嬉しいやら恥かしいやら……。

 俺もエレナも全裸だから、朝からかなりドキッとしてしまったのは内緒だ。


「んん……。もう朝?」


 同じく全裸のアリスも起きたみたいだ。

 ちょっと寝惚けてる感じがするが、昨夜のことを考えたら仕方ない気もする。


「おはよう。朝だよ」

「あ、浩哉。おはよう。チュッ」

「ん。おはよう。気分はどう?」

「最高ね。優しくしてくれながらも激しかったから、あたしも思ってた以上に乱れちゃったわ」

「消極的だと思ってたけど、アリスも楽しんでたのね」

「さすがに妖族ほど性欲は強くないからね」


 あー、そういやそんな話も聞いた気がするな。

 妖族は女性のみの種族って事が関係しているのか、性欲が最も強い。

 子供を産むためには他種族の男と交わらないといけないから、妖族の国にもヒューマンやエルフ、獣人は住んでいるし、その国の女王からして結婚はせず、見初めた相手が訪れるたびに関係を持ち、3人の子を産んだって話だ。

 決して淫乱というわけじゃなく、見初めた相手にしか体を許さない潔癖さも持ち合わせているから、多分次世代の子を産むための種族的な本能みたいなもんなんじゃないかと思う。


「とりあえず、風呂に入ろうか」

「そうね。昨夜は3人とも激しかったから、お風呂に入ってスッキリしたいわ」

「ですが浩哉さん、ベッドはどうするんですか?」

「ブルースフィアに清掃サービスがあるから、それを使うよ」


 ベッドの上は、昨夜の戦いを物語るかのような惨状だから、掃除や洗濯にベッドメイキングをしっかりとしないと、今夜はここで眠ることもできない。

 クリーニングっていう生活魔法ライフマジックを使えば、染みとかは綺麗に落とせるんだが、シーツの皺とかはどうしようもないから、洗濯は必要になる。


 だけどブルースフィアのショップには、清掃屋もあったりする。

 魔導船は潮風で汚れたりデッキがベタつくことがあるし、魔導車は車輪に泥がついたりして移動速度が徐々にだが落ちていくという仕様がある。

 それをどうにかするために清掃屋があり、頼むと一瞬で泥とかを落としてくれるし、汚れてないはずの船内や車内も一緒に掃除してくれるんだよ。

 料金は魔導車や魔導船の大きさによって異なるが、魔導三輪なら500ゴールド、中型魔導車で2,000ゴールド、中型魔導船は1万ゴールドとなっている。

 さすがにヘリオスフィアで頼むのは初めてだから、どんな感じになるかは分からないが、自分達で掃除や洗濯をするより早いし、何よりそんな手間を掛けなくて済む。


「ブルースフィアって、そんなお店もあるんですね」

「まだ開放されてない店もあるからね。おかげで楽が出来るし、ゴールドはオール以上に余裕があるから、これぐらいの出費は許容範囲だ」


 というわけで、早速ショップメニューから清掃屋を選び、アクエリアスの清掃を依頼する。

 タッチしたと思ったら、一瞬でベッドが綺麗に整えられ、布団やシーツも綺麗になったから驚いた。

 染みや皺の1つも無いじゃないか。


「凄い……」

「あのベッドが、一瞬で綺麗になっちゃったわ……」


 俺もだが、エレナもアリスも目を丸くして驚いている。

 俺達はまだベッドの上なのに、そんなことは関係ないとばかりの勢いだったし、違和感すら感じなかったから、驚くなという方が無理ではあるか。


「てっきり部屋から出てからだと思ってたな。便利ではあるけど、そこは融通が利かないのか」

「これ以上望むのは、さすがに贅沢だと思うけど?」


 確かにそうか。


「それもそうか。じゃあ風呂に入ってから朝食を食べて、その後は少しゆっくりしながら、これからの事を考えよう」


 本当なら昨夜のうちに、レベル4になったブルースフィアを見てみるつもりだったし、居住性の高い小型船も買うつもりでいたんだが、2人と一緒に風呂に入り、そのままベッドになだれ込んだこともあって、全くの手付かずのままだ。

 小型船を使うのは俺だけじゃないから、いっそのこと2人の意見も聞いてみるつもりでもいる。


「考えるって言っても、確か小型船を買うって言ってなかったっけ?」

「言ったよ。だけど使うのは俺だけじゃないから、2人の意見も聞こうと思ってる。時間が掛かると思うから、飯の後にするつもりだけど」

「確か船の外観から決められるんでしたよね?」

「決められるね。ベースはいくつかあるから、その中から選んでも良いし、組み合わせたりも出来る。もちろん、自分で描くこともね」


 この仕様こそ、ブルースフィア・クロニクル最大の特徴だったからな。

 特に魔導船は大きい事もあって、外観のデザインも変更しやすかった。

 俺は絵心がないから断念したが、絵の上手いプレイヤーは自分でデザインした船を走らせてたぐらいだ。

 見た目からして船じゃなく、海に浮かぶ屋敷っていうのもあったし、大型船のデッキ上に小さなコースを作り、魔導車を走らせてた人もいたぐらいだ。

 カスタムショップは既に何度も目を通しているが、そういった人達がデザインした船もあったし、地球の車両や船舶もけっこうな数があったから、たとえ小型船とはいえ、決めるまではかなりの時間が掛かると思う。

 アクエリアスを買った時も、1週間は悩んだ覚えがある。

 内装は後でも変更できるが、外観は最初に決めたら変更できないし、魔導船は簡単に買うような物じゃないからな。


「私達も選んでいいんですか?」

「せっかく2人もブルースフィアの画面を見られるんだから、一緒に考えた方が楽しいしね。それに自分達が考えた船に乗れるんだから、興味も出てくるだろう?」

「確かにそうね。まさか奴隷になってから、こんな面白い事が出来るとは思わなかったわ」

「本当ね」


 それはあるかもな。


「それじゃあそろそろ、風呂に入ろう。いつまでも裸でいたら、風邪を引くから」

「賛成」

「はい、行きましょう」


 船内には俺達しかいないし、外からも見られる心配はないから、俺達は裸のままルーフデッキに上がり、ジャグジーに入る。

 起きてすぐに使えるように、ベッドルームからでもジャグジーの湯張りが出来るから便利だ。

 イチャイチャしながらジャグジーに入っていたら、そのまま流れで行為に及んでしまったのは反省しないといけないけどな。


 1時間ぐらい、ジャグジーに入りながら楽しんでいたため、朝食を食べ終わったら9時を回っていた。

 いきなり爛れた生活をしてる気もするから、気を引き締めていこう。


 飯を食べたばかりだし、ブルースフィアの確認もしたいから、購入するのは1時間経ってからと伝え、2人には船内で自由に過ごしてもらうように指示を出す。

 2人も特にすることはないが、1時間あれば昨日簡単に案内した船内を見て回れるだろうし、丁度いいんじゃないかと思う。


「浩哉さん。誰か近付いてきています」


 30分ほどブルースフィアの確認をしていたら、リビングに入って来たエレナがそんな事を口にした。


「え?マジで?」

「はい。見学がてら、アリスとフロントデッキを見ていたんですが、話し声が聞こえてきたんです」


 誰が、って、こんなとこに来るのはハンターぐらいか。

 ハイディングフィールドのおかげで見つかる事は無いけど、それでも近くに来られると気になるな。


「分かった、ちょっと見に行こう。フロントデッキだよね?」

「はい。アリスが様子を見ていますけど、アクエリアスに気づいてる様子はありませんでした」


 ハイディングフィールドがちゃんと働いているって事だよな。

 そうじゃなかったら、乗り込んでこようとしてるはずだし、無理だと分かっても船内の様子を見ようとするだろうから、俺達が乗ってることは気付かれてもおかしくない。

 万が一のためにハイディングフィールドを買ったけど、買っておいて本当に良かった。


 エレナと一緒に森側の通路からフロントデッキに向かっていると、確かに人の姿見える。

 何か言い合ってるようにも見えるが、ここからじゃ声は聞こえない。

 アリスが近くにいるから、合流したら聞いてみよう。


「装備からみて、ハンターで間違いないな。人数は……6人か?」

「ハンターは6人パーティーを組むのが一般的だそうですから、特におかしくはありませんよ」

「ああ、そんな話だったっけか」


 単独行動を好むハンターもいるが、多くのハンターは複数で纏まって動く。

 一番多いのはパーティーで、6人までの集まりがそう呼ばれている。

 その次に多いのはレイドで、だいたい20人前後の集団になり、その上はユニオンとなり、人数に上限はないとされている。

 俺の視界に移ってるのは、しっかりした装備を纏った6人組だから、パーティーという単位で間違いはずだ。

 全員男で、ヒューマンが2人にドワーフにオーガ、ウルフィーとリクシーか。

 人口比は女性の方が多いのに、男だけのパーティーもあるんだな。


「あ、浩哉。来たのね」

「さすがに来るよ。何か言い合ってるみたいだけど、聞こえた?」

「ええ。あのパーティーの1人が、アクエリアスを見たらしいの」


 フロントデッキで監視していたアリスに聞いてみたら、話し声は聞こえていたようだ。

 まあ、けっこうデカい声で話してるから、聞き耳を立てる必要は感じないし、俺でもしっかりと聞こえているぐらいだ。

 というか、アクエリアスを見たって、マジ?


「話を聞く限りだと、昨日の夕方に、森の外に急に白い壁が現れたってことだから、アクエリアスを召喚した直後でしょうね。ハイディングフィールドを展開したのは、サダルメリクがアンダーデッキに上がってからだったでしょう?」


 ああ、そういえばそうだった。

 召喚からハイディングフィールドを展開するまでの時間は、1,2分ぐらいだったはずだから、その間に見られてたって事になるのか。


「それだけ時間があれば、他のメンバーも見ててもおかしくないと思うけど、どうして1人だけなの?」


 エレナの疑問は、俺も感じた。

 だけどアリスによれば、どうやらあのパーティーは丁度戦闘中だったらしく、アクエリアスを見たっていうハンターもしっかりと確認する余裕は無かったから、朝になってからしっかりと確認しようって事になり、こうしてここに来たっていうことなんだそうだ。


「なるほどね。とはいえ、ハイディングフィールドは召喚しないと使えないし、使ってから乗り込めるかどうか分からない。現時点じゃ対策も思いつかないな」

「あとで試してみるしかないんじゃない?」

「そうですね。それと、ハイディングフィールドを展開したままでも、スカトやサダルメリクで降りる事が出来るのか、これも確認すべきだと思います」


 確かに確認は必要だな。

 あのハンター達がいる間は無理だから、いなくなってからしっかりと確認しよう。

 お、諦めた。


「結局、見たっていうハンターの見間違いっていう結論になったか」

「調べても何も無かったんだから、そうなるでしょうね」


 そのハンターは憮然とした顔をしていたが、何も無かったっていうのは確認していたから、そう結論付けられても仕方がない。

 一方的に貶されてた訳じゃなく、戦闘中だったから何かと見間違えたんだろうって事で落ち着いていたな。


「それにしても、綺麗にアクエリアスを避けてくれていましたね」

「本当ね。フロントデッキの近くに来た時は焦ったけど、途中で引き返してたし、誰もそれを疑問に感じてなかったみたいだったわ」


 あのハンター達の実力は分からないが、ハイディングフィールドが有用だって事は図らずも実証されたな。


「油断はできないけど、当面は問題ないと判断してもいいか。あとハイディングフィールドを使いながらアクエリアスから降りれるかだけど、小型船を買ってから試そう」

「確認するために降りないといけませんから、それが無難ですね」


 先にテストをしてもいいんだが、あのハンター達が完全に離れないとさすがに無理だしな。

 また森に入っていったから、場所も移動しておこう。

 北の山脈の近くもアリだが、そっちにもハンターがいるかもしれないから、見通しのいい草原が無難か。


 それは後で考えるとして、この後は3人でブルースフィアを見ながら、満足のいく小型船を買おう。

 ある程度の構想はあるから、それをベースにして、アリスやエレナの意見も聞いて、その後で時間があったら、アクエリアスも改装したいな。

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