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ヘリオスフィア・クロニクル  作者: 氷山 玲士
第2章・奴隷契約から始まる友人関係
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浩哉の正体

 グラス・ウルフを倒してからサダルメリクで進む事10分、西の森が見えてきた。

 アクエリアスを召喚するのは森の前と決めてるから、もう少しだな。


「そろそろ着くよ。森には入らないけど、安全のためにサダルメリクからは出ないようにね」

「分かったわ」

「分かりました」


 西の森にはマーダー・グリズリーやジェダイト・ディアーが生息してるから、アリスフィアさんはともかくエレオノーラさんにとっては危険地帯でしかない。

 いや、アリスフィアさんも今は丸腰だから、危険な事に違いはないな。


 2分も進むと、自動操縦で走っていたサダルメリクがゆっくりと停車した。

 あとはハイディングフィールドを買ってからアクエリアスに搭載して、それから召喚だな。

 ヘリオスフィアに来てからすぐに行った改装で、アクエリアスには昇降用のステップとスロープが装備されたから、サダルメリクごとアクエリアスに乗り込める。

 突然魔物が襲ってくる事もあり得るから、安全っていう意味じゃこれ以上ない程ありがたい。

 俺だけならともかく、アリスフィアさんとエレオノーラさんもいるから尚更だ。


「これで良し。じゃあ召喚するよ」

「ええ。楽しみだわ」

「お願いします」

「『アクエリアス・アクティブ』」


 2人の期待に応えて、アクエリアスを召喚する。

 少し離れた所に召喚したとはいえ、アクエリアスは全長50メートル近いから、大きさは分かっても外観はわかりにくいかもしれない。


「「……」」


 だけどアリスフィアさんもエレオノーラさんも、ポカンと口を開けたままだ。


「気持ちは分かるけど、そろそろ乗り込むよ」

「え?え、ええ……」

「は、はい……。って、マスター、このまま乗り込むんですか?」

「そうですよ。こうすれば……ほら、あそこから乗り込めるんですよ」


 アクエリアスの後部ハッチを開き、スロープを伸ばす。

 これのおかげで、いちいちサダルメリクやスカトから下りなくてもよくなったから、本当に助かる。

 最初だからステップを使っても良かったんだけど、パーキングエリアはアンダーデッキにあるから、順番に説明しやすいしな。

 サダルメリクがアンダーデッキに達してから、俺は新しく装備させたハイディングフィールドを展開させた。

 ハイディングフィールドは、装備させた乗物を周囲の風景に融け込ませる結界を展開させる。

 認識阻害結界でもあるから、近付く者がいても綺麗に結界を避けてくれるようになっているみたいだ。

 隠蔽するための結界だから、当然のように結界内の音も遮断してくれているが、逆に外の音は聞こえるみたいだ。

 どんな理屈なのか気になるが、俺じゃ理解できるとは思えないな。

 空間がどうとかってテキストにあったが、何のことかサッパリ分からなかった。

 過信は禁物だが、陸上でも使いやすくなったのは間違いない。


 ハイディングフィールドを展開させてから、サダルメリクをパーキングエリアに滑り込ませる。


 アクエリアスのパーキングエリアは、未来的な感じを出したかったから、某宇宙戦艦の格納庫っぽいデザインに近付けるように頑張ってみた。

 見た目だけではあるが、それなりに満足できる感じになったと思う。


 そのパーキングエリアは、サダルメリクとスカトを並べて停め置いてもまだ余裕がある。

 そのスカトだが、しっかりとパーキングエリアに停まってたりするから驚いた。

 サダルメリクに乗り換えた後に送還したはずなんだが、元々アクエリアスのパーキングエリアにあったから、ここが送還先に設定されてるのかもしれない。


「お疲れ様、到着したよ」

「そんなに時間は経ってないはずなのに、なんか疲れたわね……」

「本当に……。レベルが高いだけじゃなく、こんな凄い魔導車や魔導船まで持っていたなんて……」


 2人ともすごい疲れてるけど、多分本当に疲れるのはこれからじゃないだろうか?


「話が終わったらアクエリアスの中を案内するから、それまでは頑張って」


 サダルメリクを下りてから、2人をメインデッキにあるキャビンに案内する。

 メインデッキのキャビンはダイニングキッチンとなっているが、来客用スペースも兼ねていることもあって、アクエリアスの中ではパーキングエリア、ルーフデッキに次ぐ広さを持つ。

 奥にはキッチンもあるから、やろうと思えば料理も出来る。

 ダイニングは10人掛けのテーブルの他に広いリビングもあるから、説明はそっちでやろう。


「さあ、座って。飲み物も出すから、これで人心地つけてから話をするよ」

「こ、このソファー、すごく柔らかいですね……」

「それでいて、座り心地が最高だわ。いったいどこから、こんな凄い物を……。いえ、これから話してくれるんだったわね」


 ヘリオスフィアの人達からしたら、常識崩壊レベルの物ばかりだからな。

 アクエリアスはブルースフィア・クロニクルの魔導船だから地球には存在していないが、似たようなクルーザーは数多く存在している。

 ネットで検索すると大量にヒットするから、お目当ての船を見つけるのも大変だった。


 それはともかくとして、ブルースフィア・クロニクルでも魔導具は存在していたから、地球のクルーザーよりこっちの方が2人にも使いやすいんじゃないかと思う。

 品質は地球の物に近いから、慣れるまでは大変かもしれないが。


 ブルースフィアで購入したグレープフルーツジュースを飲んで人心地ついた2人に、俺はこれまでの経緯を説明することにした。

 俺が地球という異世界で命を落としたっていう時点で目を丸くしていたが、創造神様に生き返らせてもらってスキルを授かり、ヘリオスフィアで役目を与えられて転移させてもらったって続いたら、軽く泡吹きそうな顔になってたな。


「そういう訳で、アクエリアスもスカトもサダルメリクも、創造神様から授かったブルースフィアっていうスキルのおかげで実体化できたんだ」

「そういう事だったの。聞いた事無いスキルだと思ってたけど、そりゃそうよね」

「まさか創造神様から、直接お力を授かっていたなんて……」


 ヘリオスフィアでは、創造神様どころか女神様からであっても、直接力を授かった人は存在しない。

 神々は等しくヘリオスフィアの人々を祝福しているから、特別扱いはしないっていうのが理由だ。

 だけど俺の場合は、そもそもの話からしてヘリオスフィア人じゃないし、本来なら死んでいたはずの人間になる。

 そんな俺に、創造神様は役目を与えてヘリオスフィアを発展させようと考え、そのために力とスキルを授けて下さった。

 スフェール教徒が聞いたら発狂しそうな内容だな。


「一応俺は、テストモデルでもあるらしいんだ。だから今後も、俺みたいな異世界人が転移なり転生してくるかもしれない。とはいえ、俺が死んでからの話になるから、先の事は分からないけど」

 

 とは言っても、俺が何年生きることになるかは、それこそ分からない話なんだよな。


 ヘリオスフィアの寿命は、どの種族でもレベル+50年となっている。

 なのでレベルが上がれば寿命が延びるし、レベル分は老化も抑えられるんだそうだ。

 さすがにレベル100を超えた人はいないが、それでも200年近く生きた人はそれなりにいるらしいから、王侯貴族や大商人なんかは護衛を付けてまでしてレベル上げをすることもある。

 最も護衛されながらは効率が悪くなるから、レベル30ぐらいまでが精々みたいだ。


 さらに創造神様は、レベル100を超えるとハイクラスっていうのに進化し、寿命が100年以上も延びるって言っていた。

 レベルの上限は500で、レベル100ごとに進化するらしんだが、ハイクラスに進化した人は過去を紐解いても数十人ほどしかおらず、3人だけその先に進化した人がいたとも言ってたな。

 ちなみにレベル200でエンシェントクラス、レベル300でエレメントクラス、レベル400でグランドクラス、レベル500でアーククラスっていうのに進化するそうだ。

 エンシェントクラスに進化した人達は、500年近く生きたっていう話だから、成長速度向上スキルを貰った俺としては、がんばればエンシェントクラスまではいけるんじゃないかと思う。

 そんなに長生きしても、やる事があるのかが疑問だが。


「そんな訳で、これが俺の正体?になるかな。幻滅した?」

「そんなことはないけど、驚いたのは間違いないわね」

「そうですね。私達の希望を叶えるために猶予が欲しいと仰っていましたが、与えられた力に慣れるためという理由もあったんですね?」

「そうなんだ。少し狩りはしたけど、予想以上の能力だったし、国とかに知られたら面倒なことになるから、少し制限しておく必要もあったし」


 アクエリアスやスカト、サダルメリクも大概だが、さらにヤバいのが装備品だったからな。

 特に☆6つの最強装備群は、フル装備で全ステータスが倍2,5倍ぐらいに跳ね上がったから、国に知られたりなんかしたら戦争にすらなりかねない。


「そんな超絶にヤバい装備を、あたし達にもってこと?」

「俺の奴隷になったことで、2人が狙われるかもしれないからね。一緒に行動することの方が多いだろうけど、1人で動きたいこともあるだろうから、そこは考慮するよ」


 俺だけならどうとでもできると思うが、アリスフィアさんとエレオノーラさんはそういう訳にはいかない。

 特にエレオノーラさんは普通の村娘だったんだから、荒事に巻き込まれたりなんかしたら大変な事になるだろう。

 俺がいれば何としても守るけど、もし1人でいる時に襲われたりなんかしたら、目も当てられない。

 そんな事態を防ぐためにも、2人にも身を守るために装備してもらいたい。


「気持ちは嬉しいしありがたいけど、本当に良いの?」

「勿論。それにブルースフィアには、2人の装備スロットが開放されてるんだ。多分だけど、俺と奴隷契約を結んだことで、ブルースフィアが2人をパーティーかそれに準ずる存在として認識したんだと思う」


 奴隷契約を結ばないと開放されないとかだったら、頭の痛い話になるんだけどな。


「それで2人の武器だけど、何か使いたいのはある?」

「サブウェポンも選んだ方が良いの?」

「そうだね。メインウェポンほど使用頻度は高くないだろうけど、あった方が使い分けもできて良いと思うよ」


 戦う場所や武器が壊れた時のために、ハンターならサブウェポンを持っておくのは常識だからな。

 ブルースフィアの武器が壊れるかは分からないが、戦う場所によっては使えない事も無い訳じゃないから、保険として持っておいた方がいいだろう。


 2人が選ぶ装備だが、アリスフィアさんは双剣士だから双剣を選ぶのはほぼ確定だが、サブウェポンをどうするかだな。

 エレオノーラさんは素人みたいなもんだから、じっくり考えてもらわないといけないが、ヘリオスフィアにはジョブがないから、どの武器を選んでも使いこなすために狩りは必須だ。


 ブルースフィア・クロニクルはジョブシステムがあり、全部で20のジョブがあった。

 基本ジョブを極めてクエストをこなすと上級ジョブが開放されるから、実質的には10種と言ってもいいかもしれない。

 剣を扱うブレーダーとセイバー、盾の扱いに長けたシルターとリッター、槍のランサーとペネトレイター、弓のアーチャーとピアッサー、己の手足で戦うグラップラーとストライカー、斥候でもある双剣士のスカウターとレンジャー、重量武器を扱うブレイカーとバスター、魔法特化のキャスターとソーサラー、鞭や多節剣のような特殊武器を専門に扱うディバイダーとスレイヤー、召喚獣を呼び出し使役するコーラーとサモナー、これがブルースフィア・クロニクルの全ジョブだ。

 基本ジョブも上級ジョブではこなせない役割があったから、使い分けが重要だったな。

 俺はセイバーがメインだったが、ランサーやアーチャー、スレイヤーもよく使っていた。

 逆にソーサラーやサモナーは、コンプリートするために育てたぐらいで、あまり使った覚えが無い。


 それでいくと、アリスフィアさんはスカウターやレンジャーで、エレオノーラさんは魔法系の方がいい気がしなくもないな。


 装備スロットが開放させたせいか、2人もブルースフィアの画面を見る事が出来るようになったから、選ぶのは楽になった。

 画面も14インチ近いから、3人で顔を突き合わせても見にくかったりすることもない。

 いくつか気になる項目も増えてたが、アリスフィアさんやエレオノーラさんの装備スロットが開放された件も含めて、夜にまとめて確認しよう。

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