すき焼き食べよ
お忙しい中、通勤中、休日真っ最中の中、クリック&タップ誠にありがとうございます。
今回はすき焼きを投稿いたします。
参考にする時は調味料、味付けの濃さなどは各々の好みで調整お願いします。
「さて、と、作りましょうか?」
「まってました~」
いそいそと卵を溶きながら彼女は目を輝かせ今か今かと待っていた。
まずは肉を焼く。温まった鍋に脂身で油を引き2~3枚投入する。
ジュ~と肉の焼けるいい音がして湯気と一緒にうまそうな匂いもしてきた。
肉が7分目くらい火が通ると、そこに砂糖大さじ3杯をまぶし日本酒、濃い口醤油を適量ふりかける。
自分は東北出身だが、すき焼きは関西風に食べるのが好きだ。
ほかの人は皆おいしいというが、どうもあの関東風の甘ったるい割り下が苦手なので、砂糖は使うがあまり甘ったるく感じない関西風にして食べるのだ。砂糖も大さじ3杯と多く使うが、同量であまり甘くはならない「てんさい糖」を使い日本酒も甘口ではなく辛口、関東の醤油を使う。
気分の問題だが、我が家の味はこの3種類で味付けで食べる関西風なのだ。
あとはどんどん野菜を入れて行き蓋をして7~10分経つと食べるのみとなる。
野菜はまだ火が通りきっていないが、肉はもう火が通っているので彼女にOKを出す。
「どうぞおあがりください姫様。」
「はいな!いっただっきま~す。」
彼女は肉肉野菜肉肉・・・ほぼ肉だ。
肉の一切れが結構大きいが噛み切らずにひと口で食べる。
リスの様に頬を膨らませながら幸せそうな顔をして肉の味をかみしめているようだ。
「ほほほっしゃ~わせ~」
そう言いながらビール片手に食べていく
そして鍋の肉がなくなると彼女は俺流の食べ方をする。鍋の半分に野菜を寄せて、もう半分に空きスペースを作っておく。
そこに肉を投入してしばし待つ。肉をひっくり返しながら9割方火が通りきらない頃合いで肉を食べる。こうすると肉が煮込まれて固くなる前に肉が柔らかい状態で食べる事が出来るのだ。
そういう食べ方を教えてからは彼女はその食べ方を気に入っている。
俺は肉は食わずに野菜ばかり食べているが、肉を投入し「じ~」っとワクワクしながら出来上がりを待つ彼女の姿がいじらしく、尻尾があったらブンブンと左右に勢いよく振っているだろうと思わず微笑んでしまうのだった。
締めはウチはしない。残っただし汁を薄めて翌日の夕食に「すき焼き丼」にして食べるからだ。肉は赤身の多い牛の切り落としで作る。
夕食は彼女はコメを食べるが俺は食わない。彼女の締めは残った溶き玉子で玉子かけご飯を食べる。
あくまで酒の肴として食べている。御飯まで食べると胃が・・・・・
「ふい~ごちそうまさま~」
「はい。おそまつさま.」
食後は一緒に片づけをして、2人でテレビを見ながら雑談をしたりしながら寛ぐ。
彼女は料理はできないと言う事はない。普通に包丁持って食材の下ごしらえも出来る。
御飯を作ってもらったこともあったが美味しかった。
だがここは料理をしていた経験の差だろう。
レパートリーが少ないので俺が調理する機会が多いのだ。
横文字の料理はあまり作れないが、昔ながらの和食は少年時代に母や祖母の手伝いをしながら学んでいたので大丈夫である。
「おふくろ料理」ってのをコイツに教えてあげようかなと煙草をふかして思いながら
コタツの中で彼女が何かもぞもぞと動いているので俺は「?」と思った時、向こう側でぬくぬくしていたはずが、にゅっと俺の所に顔を出してきた。
「おお?そこから顔を出されると何か卑猥なのだが?」
「んふー、今更そんな『女を知らぬ男じゃあるまいて』」
「逆だ逆」と彼女に煙草の火が落ちないように気を付けていると彼女はそのままの状態から腕を同に回しぎゅっと抱き付いてきた。
顔を腹に押し付けながら俺にこう言った。
「ねえ、そろそろ私も「現場」に連れてってよ。」
彼女の言う「現場」とは文字通りの現場である。彼女が家に転がり込んできた時に職が見つかるまででいいから置いてほしい。
彼女は兵庫の真ん中の山間に住んでいて戻っても職がなかなか見つけにくいのが現状で、『襟好みしなければ』首都圏は仕事にあぶれる事はないということだった。
実際、俺も「食っちゃった」こともあり、それではと言う事で彼女に俺の仕事を手伝ってもらっている。俺の仕事は個人事業主をやっており電気通信関係の仕事をしている。そのせいか全国を飛び回っており、1年の半分は家にいない。
そういうことがあって彼女をうちの会社に「就職」させていた。
俺は彼女を見ながら考える。どうも「自宅兼事務所」で1日中自宅に籠りっぱなしが嫌らしい。
なら暇を見つけて出掛ければ?と思ったが、「ああ、客からの電話とかがあるからそうそう出掛けられないか」と思ってしまう。
「だって、全国あちこちの美味しい食べ物食べてるじゃん。ずるいよ。」
「そっちかい!」
どうやら俺の思い違いのようだ。
「でも泊まるのはやっすい旅館や、カプセルとかばっかりだぞ。経費は最低限に抑えなきゃならんのですよ。」
現場に必要な工事に使う補材や燃料費、出張先では色々な経費が掛かる。そこから生活費などを捻出しなければならないので、それこそ宿泊費や食費は「爪に火を灯す」ような経費の抑制をしなければならないのだ。
「いいじゃん!あたしが戦力になればダブった現場は「やっさん」が行けるようになるんだよ?断らなくてよくなるじゃん。」
「そりゃまあ、そうだが・・・」
その通りであるが、いかんせんまだ会社はまだ2年足らずの零細なので私の目が届かない所は不安があって「任せたくない」「客先へ不備があっては」という気持ちが大きいのだ。
あと1~2年、俺はそのまま続けて行こうと思っていた。
「とりあえずは前向きに考えておくよ」
そういって彼女を何とか宥めるのであった。
ちなみに話に出てきた「やっさん」とは本名矢野幸司(34歳)前職の退職金では足りなかった開業資金稼ぎにバイトしていた時に知り合った仲間で、以前は今で云う「ブラック企業」に勤めていた。
そこで身も心もボロボロになって退職。アパートも家賃が払えなくなって「ネトカフェ難民」をしていた。
勤労意欲はあるのだが、そもそもブラック企業は○ロー○ーク紹介で入社しており、退職時もブラックであることを告発したが、書類にあった「自己都合退職」の文字を盾に「勝手に辞めた我儘な労働者」として真面目に取り合っては貰えず、「御役所不信」に陥っていて再就職先を決めかねていた所だった。
そこに俺が起業後の勧誘をして現在は従業員として働いている。
残業代はちゃんと出るし、現場作業は「終わりじまい」で8時からの労働で15時には終わることもあり(もちろんその日の給料は1日分出る)嬉々として労働力を提供してくれている。
「それより明日の朝は何食べる?」
とりあえず話題を変えるべく明日の朝食のリクエストを聞いた。
「ん~今夜はガッツリと肉だったからあっさりがいいな。」
「了解。」
そうして「まあ拡張は考えておかなきゃな。」と思いながら彼女の腕をほどいて明日の朝食の準備へと台所に向かうのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
調味料はダイレクトに入れております。出汁などで薄めず、野菜などの水分だけですので
煮込みすぎには十分お気を付けください。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いたします。