6k:最初の町
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「やっとこ、一つ目の町が見えて来たな」
「いやー、ここまでに4日もかかるとはね」
「やっとベッドで寝られるのね」
「身体痛いです」
「グルゥ!」
森の中を魔物退治したり、魔法の練習をしたりしつつ歩くこと4日目。
ついに、初めての町が見えて来た。
「人間の領土に一番近い町だから、ヴェルトね」
「王都まではまだまだかかりそうですが、お父様やお母様達へ手紙を出せそうです」
二人とも嬉しそうだ。あ、こういうのって今気づくことじゃなくて、目的地についてから各自悩むことだと思うんだけど………
「ティオとルルーはさ、王都についた後どうするの? 俺とツクヨミとフェルゥは旅を続けるけど」
「ついて行きます!」
「姫様即答!? 流石に姫巫女がいなくなるのは……」
「姉様達もいますし、イル・アニマ様の神託があったと言えば納得しますよ。あ、ルルーも勿論一緒ですよ」
「それで大丈夫なのか?」
「姫様はこうと決めたら引かないわ。絶対に」
もっと悩むハズなのに、そんな簡単に決めちゃっていいのか? 大丈夫なのか? 反対する人絶対に沢山いるだろ………
「安心してください。お母様と王妃様を味方にすれば、ほぼ無力化出来ます。」
あ、うん。そうだね………
にしても、そう聞くと皆さん女性の尻に敷かれているんですね。そして、ティオは将来夫を尻に敷くだろうな。うん。
「とにかく、町に入るわよ」
「だな。調理器具とか調味料とか仕入れよう。あ! その前にお金か………魔物の素材売ろう。どこかいいとこある?」
「完全中立の冒険者ギルドがいいと思います。登録は結構簡単ですよ」
成る程。バジリスクも買い取ってもらえるかな? まぁ、とにかく、行ってみよう。
町の外観は城壁に門がある感じ、魔物がいるこの世界では、殆どの町や都市はこんな感じで、村なんかは柵らしい。
「止まれ! なんで人間が…………ま、まさか!」
門の前に来たら、門番さんに睨まれて、そして門番さんが震えだした。
「神牙様!?」
「グルゥ」
「そんな神牙様が懐いているということは、牙選者様!?」
牙選者とは神牙に選ばれたものを指すらしく、神翼の場合は翼選者、神体の場合は体選者というらしく、種族は特に関係ない。そして、本質を見抜く目をもつ三匹に選ばれた者は、たとえ人間とはいえ獣人族には尊敬されるらしい。
そして、目の前の門番さんは犬族です。
「大変な無礼を、お許しください!」
見事な土下座です。
「いやその、人間のほうが悪いのは分かってますから、だから頭を上げてください」
「なんと慈悲深い、ありがとうございますぅ!」
あらら、泣いちゃった。
その後は、神牙様と牙選者様に、そのお連れ様ならばなんの問題もありません! と言われた。
ティオも獣人の国ではかなり有名らしいが、門番さんが俺とフェルゥに感激してしまって、気づかなかったらしい。
町の中は、中世ヨーロッパ風? まぁ、異世界によくある町並みで、町の中には色んな獣耳の人達がいた。
「それじゃあ、私達は領主の館に行って来るけど、騒ぎだけは起こさないでよ」
「無理!」
「そんな、もう少し頑張る姿勢を見せてください。」
いやいやいや、牙選者らしい俺に、喋るスライムであるツクヨミ、神牙の娘であるフェルゥ。この組み合わせで、騒ぎが起きないと思ってるんですか?
今も、犬族と狼族の人達がやって来て、俺とフェルゥに挨拶したり、握手を求められたり、崇められたりしている。ちょっとしたアイドルな感じだ。
「はぁ、まぁいいわ。出来るだけ騒ぎは起こさないでね」
「うぃー」
「はーい」
「ルゥ!」
心配しているティオとルルーと別れて、一人と二匹はギルドへ向かう。
歩くこと五分。門からはそんなに離れていなかったので、直ぐにたどり着いた。
中に入ると、以外にも静かだった。此方をちらりと見て、興味深そうな視線は感じたが、絡まれることはなさそうだ。あ、握手ですか? はいはい。
「すいません。登録したいんですけど……」
「ひゃい!? わ、私で宜しいんでしょうか?」
「え、うん」
「牙選者様に選んでいただけるなんて!」
あ、この人犬族の人だった。
とにもかくにも冒険者について聞いてみた。
冒険者にはランクがあって、G、F、E~Aと続き、その上にSランクがある。
依頼は、採集依頼、討伐依頼、護衛依頼等々、まぁ、よくある冒険者ギルドの依頼だった。
後は、はしょる。だって、特に注意することなかったんだもん。
「ありがとうございました」
「そんな、勿体無きお言葉ですぅ」
あ、泣いちゃった。
とりあえず、買い取りはやっているか聞いてみる。
「あ、はい。やっています」
「それじゃあ、これ買い取ってもらえますか?」
バジリスクの牙を五つ取り出す。なんと、【解体】スキルを組み合わせると、本体を取り出さずに簡単に解体出来たのだ! 魔法とスキルって本当に便利だな。
「はいえーと………バジ……リスクの……牙?」
「はい。おいくらぐらいになりますかね?」
「え、あ……しょ、少々お待ちください!」
バジリスクの牙を持ったまま、受付嬢さんは奥に引っ込んでしまった。
なんでだろ? あ、そういえばバジリスクって……
「バジリスクって、殆ど倒されたことなかったんだっけ?」
「ルゥ?」
「そういやそうだったね。そんなに強そうには感じなかったけど」
「だよな~。異空間収納にまだ丸々一匹が沢山あるしな」
草原にいた時、結構な頻度で出てきたのだ。ちなみに、解体したらいくつかの部位に別れ、頭、目玉、牙、皮、肉、内臓、毒袋、魔核に別れた。内臓はさらに多く別れている。
そして、この町に来るまでに何回かバジリスクの肉を食べた。かなり美味しかったです。
「お、お待たせしました! それで、なにぶんバジリスクの素材は、なかなかギルドに持ち込まれたことが無いので、白金貨10枚で宜しいでしょうか?」
「「「…………」」」
どうしよう。このメンバー、この世界のお金の価値分からない。ま、まぁ、異世界モノだと白金貨ってかなりの額だった気がするから、いいかな? いいよねべつに。
「それで大丈夫です」
「そうですか………それであの………ギルド長がお会いしたいと申されているのですが……」
この問いかけは予想していた。ここで断ったら、向こうから来ると思うからいっとこう。
「分かりました」
という事で、ギルド長に会うことになった。