4k:夜の会話
□ -269℃ □
青い空
広がる草原
ぷるぷるしているツクヨミ
唖然としているティオとルルー
そして、凍りついた竜の頭をもつ巨大な蛇
うーん。我ながら、このギフトはとんでもないな。殆ど倒されたことがなかった化け物をあっさり倒せるとはね。
さて、こうなったいきさつを説明しよう。
(というか、前回の続きから━━)
◇
「んあー。それにしても、変わらないなー」
「だねー」
「変わるでしょ、さっきからゴブリンとか、オークとか、魔狼とか魔物が出てきてるじゃない」
「でも、出てきたそばから死んでいくのはなんででしょう?」
「そうね、気味が悪い」
「ま、死んでくれるんだからいいじゃん!」
真実は、出てきたそばから俺の生命凍結を食らって、即死していってるだけだ。
ん? 心臓を止めても3秒は生きてるんだっけ?
まぁ、3秒で何かが出来る魔物はいないみたいだが、今度からは脳を凍結させたほうがいいだろうか? あ、そっちのほうがいいかも。うん。そうしよう。
魔物は倒した後は、ツクヨミに処理してもらっている。
二人に聞いたところ、今まで現れた魔物は、心臓付近にある魔核以外は使えないそうだ。そして、その魔核もそこまで使えるものじゃないそうなので、やっぱりツクヨミに処理してもらう。
「………日が暮れてきたな」
「野宿しないとね」
「私達経験ないわよ?」
「安心してくれ! 俺もない!」
胸をはってそう答える。
うん。夜営スキルでもとっときゃよかったかな? あったかどうかは知らないけど。
「なんで胸はってるのよ!」
「あだっ!?」
ルルーに足を蹴られた。
とにもかくにも、夜営に丁度いい場所と、今日の夕食を探そう。
気配察知を利用して、獲物を探す。
魔物とは違う気配がなんとなく分かる。そちらのほうに、ゆっくり歩いて行く。
そこにいたのは兎。うん。普通の兎だ。
範囲内に入っていることを確認し、生命凍結で瞬殺する。
「よし。獲物一匹目げっと」
「………これってやっぱりあんたのギフト?」
「うん」
「もしかして、対象を即死させる能力ですか?」
「そんな魔法的に倒してるわけじゃないよ。どちらかというと、物理的に殺してる感じかな? でも、もっと便利な能力だよ。詳細は……そうだな、そのうち話すよ」
「無理して話さなくていいですよ? ギフトについて聞くのは良いことではありませんから」
「知っておいて損はないだろ?」
話したところで、どうにかなるわけじゃあない。なんせ、ギフトを二つ持っているからな。一つ教えても、もう一つあるから問題ない。
あ、もう一つのほうは物理的な対処能力皆無だ。まぁ、いいか。
その後、二匹兎を確保した。
ツクヨミは、食事の時は元の身体に意識を戻して、天照大神様と食べるそうなので、いらないらしい。
「んじゃ、兎の解体といきますか」
「ナイフは?」
「んー。これでどう?」
「…………氷魔法ですか?」
「ちょっと違うかな」
空気を凝結させて、氷のナイフを作りだし、それを使って兎を解体していく。
【解体】スキルのサポートもあって、簡単に解体出来た。ちなみに、血ぬきは済ませている。
さて、森の中に自生していた香草を取ってきたが、フライパンがないから香草焼きは作れない。蒸し焼きにしようかな? うん。そうしよう。
大きな葉っぱで兎の肉と香草を包んで、大きめの岩の上に置く。
「それでどうするの?」
「岩の温度を上げます」
【温度調整】を使って、岩をいい感じの温度にする。
暫く待つと、いい匂いがしてきた。
兎の香草蒸し焼きモドキは、なかなか美味しかった。
「それじゃ、見張りは俺がするから」
「私達が寝てる間に、変なことしないでしょうね?」
「ツクヨミに見張っててもらうよ」
「任せて」
ツクヨミに俺の見張りを頼むと、ルルーは納得してティオと寝始めた。
静かな夜だな
話しかけてくるかと思っていたツクヨミは、何故か寝てしまった。
それなら、この真後ろに感じる気配は………
「俺を殺す?」
首筋にひんやりした金属の感触を感じながら、後ろを向かずに尋ねる。
「私はあなたが怖い」
昼間は凛とした感じだった声は、少し震えている。それにしても、怖いか………
「何処が怖い?」
なんか変な質問だな。殺されそうになっているのに、心は妙に穏やかだ。
「その、得たいの知れない力」
「いや、まぁ、うん。確かに端から見たらよく分からん力かもしれないな。うん」
確かにね、相手を一瞬で殺す力なんて俺だって怖い。しかし、本当に怖いのは、それを手に入れたのが冷酷な殺人鬼だった場合だ。
俺? 俺は違いますよ。前世のことはあんまり覚えていないが、殺人鬼では無かった。
しかし、どうやってひいてもらおう? やっぱり、信じてもらうしかないよね
「兎に角、信じてくれないかな? 天の神 アーリティシア様に誓って、一般人は殺さない…………悪人は分からないけど……」
「神様に誓うとは、大きくでたわね…………いいわ、今のところは信じてあげる。でも、殺そうとしたら容赦しないからね」
「肝に命じておきますよ」
夜の間にそんなやりとりがあったが、朝は普通に来た。
そして、朝ご飯のことを考えてなかったことに気付いたが、お昼に沢山食べればいいという事で、早速出発することにした。
それから十分もしないうちに森が開けて、緑の草原が広がる場所に出た。
「森の次は草原か……」
「ここって………」
「まさか、蛇王の草原…………」
なんだそりゃ?
何故蛇王の草原なんて名前なのか聞こうとしたら、何かの気配が物凄いスピードで此方に向かっているのに気付いた。
そちらのほうを見ると、巨大な蛇? が、此方に向かって来ていた。
「バジリスク!?」
「に、逃げなきゃ!」
「もう遅いみたいだよ」
その通り、もう直ぐそこまで来ている。そして、上から噛みついてこようとしたので、全身を凍結させる。生命凍結だと、倒れてきた身体に潰されるかもだからね
「派手な氷像だね~」
「しっかり死んでるな。うん」
「「……………」」
あ、二人が固まっている。よし、俺のギフトを言うタイミングだ!
もう気づいている人もいると思いますが、サブタイトルの“k”は、温度の単位ケルビンのことです。
そして、その直ぐ下のは℃に変換したものです。
0k=273℃ですね