2k:ケモノっ娘
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「そういえば、この世界だと俺の名前ってどうなるんだろう?」
日本と同じく、熱川 凍真かな?
それとも、トウマ=アタガワかな?
うーん。
あ、自分を鑑定してみればどうだろうか?
よし、試してみよう。
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≪名前≫
トーマ=アタガワ
≪種族≫
人族
≪性別≫
男
≪年齢≫
16
≪スキル≫
【武術】【体術】【料理】【解体】【生活魔法】【回復魔法】【空間魔法】【気配察知】【気配希釈】【危機感知】【生命感知】【精神強化】【異世界全言語理解】【鑑定】
≪ギフト≫
【温度調整】【月之御鏡】
≪加護≫
『天の神 アーリティシア』
『異界の神 月読尊』
≪称号≫
〈異世界人〉〈神に選ばれし者〉
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…………………
うん。スキルはいい。称号はなんとなく分かる。しかし、ギフトと加護が気になる。
「日本の神様どこから来た!」
俺関わってないよ!
ギフトありがとうございます!
「どういたしまして」
「なぬ!? スライム君から綺麗な声が!?」
「いい驚きっぷりだね」
「ま、まさか!」
この展開からいくと、月読様だな!
「正解。このスライム君丁度いいから、身体借りることにしたんだ」
「それで?」
「うん。実は、ボクって結構暇なんだよね。だから、異世界をトーマ君と一緒に見て回ろうと思って、あ、ちなみにだけどこの身体だと、攻撃力無いから」
「成る程。スライムの力は借りれるけど、神様の力は借りられ無いってことか」
「その通り。けど、もっと魔物を取り込めば人に変化出来そうだよ」
「ほぅほぅ。しかし、これからは一人と一匹? それとも神なら一柱かな?」
「どっちでも構わないかな」
スライム君ことツクヨミと一緒に歩いて行く。
そういえば…………
「男? 女? というか、雄? 雌??」
「女の子だよ。昔の書物とかだと、天照姉さんの弟で男神だけど、実際は性別なんてないよ。でも、心は女の子だから、女の子でお願い」
「りょーかーい。」
それよりも、ギフトの【月之御鏡】ってなんだろう? 鑑定だと、隠されたモノや隠蔽されたモノを暴き、ありとあらゆる災厄を跳ね返す銀色の鏡を顕現するというものなんだが………
「簡単にいうと、変化とかステータスの隠蔽を無効化したり、呪いとか魔法を反射出来たりするよ。ちなみに、魔法反射以外は常時展開されてるから」
「へぇ~。万能だな」
「でしょ? それにしても、【温度調整】はちょっと強すぎだよね~。天照姉さんもドン引きしてたよ」
「天照大神様にドン引きされる能力」
まぁ、下は絶対零度から、上は絶対熱までって本当に強力だよな。
ツクヨミと雑談しながら、森の中を歩いて行く。
うーん。そろそろ何か真新しいものが見えて来てもいいんだけど………
「………ぁ………」
「ん? 何か聞こえた?」
「だね」
【気配察知】で周囲を探るが、範囲内には誰もいない。
「どっちだ!?」
「おおう。焦ってるね」
「なんだろうな、記憶は無いがこういうのには敏感みたいだ」
声が聞こえた方向に走りながら、周りをみていると視界に何かが入った。
あれは………馬車?
横転しているが、あれは馬車だろう。声はそちらからするので走って行くと、血の臭いがしてきた。これは………もうダメか? いや、なんとかなるかもしれない。
全体が見えてくると、豚の頭をした魔物がいた。とりあえず鑑定
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≪オーク≫
備考
・豚の頭をした大柄の魔物。人型の生き物の女性をばかり襲う魔物。全世界の敵。
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おおふ。オークさんでしたか、そして、この世界では完全な害悪みたいです。
そして、そんなオークが誰かを取り囲んでいるのが見えた。
右が青、左が赤いオッドアイに、銀色の腰まである長髪。そして、髪と同色の狐の耳に尻尾をした少女。
その少女を後ろに庇いながら、オーク達に対峙している、紫がかった黒目に、肩にかかる程度の同じく紫がかった黒髪。そして、同色の猫耳と尻尾をした少女。
ケモノっ娘だ! 異世界に来たなら後はエルフを見たい。
っと、このままだと襲われそうだな。しかし、数十頭はいるな。生命凍結だと何匹かあぶれそうだ。
「だから、彼女達以外の殆どを凍らせると……成る程ね。あ、関係ないけど猫耳じゃなくて虎耳みたいだよ」
どうやら、ツクヨミが俺の思考を読んだようだ。それにしても、虎耳なのかそうか。しかし、黒い虎ってカッコいいな。
「っと、範囲内に入った」
【温度調整】を利用して、ケモノっ娘二人以外の殆どのモノを凍らせる。
凍りついたオーク達を見て、ケモノっ娘二人が驚いている。
「これなんて名付けようかな?」
「無限氷獄はどうかな? 広範囲だから、無限氷獄陣、で、どう?」
「それいただき!」
ツクヨミさんのアイデアで、無限氷獄に決定。
もう死んでいるので、温度を上げて溶かす。後はツクヨミに処理してもらおう。さて、ケモノっ娘達は………
「誰っ!?」
「凄い警戒されてる………って、そういえばこの世界だと別種族の仲悪いんだっけ?」
「そうだよ」
「あちゃー、忘れてた」
完全に警戒されている。後、喋るスライムにも警戒している。さて、どうしようかな?
「わ、私を殺しに来たんですか?」
「ん? なんでそういうことになるの? 第一、殺すつもりなら見捨ててるか、とっくに殺してるよ」
「ふん。助けたふりをして、情報を聞き出してから殺すつもりじゃないの?」
「それ言い出したらどうしようもないよね。うん。というか、君達ってそんな重要な立場なの? 俺この世界の人間じゃないから、よく分からないんだよね」
「………異世界人? 姫様」
「……………」
うん? 俺がこの世界の人間じゃないと言ったら、狐耳の娘が青い右目を白くして、じっと此方を見てきた。
なにしてるのかな? というか、あの目はなんなんだろう?
「神眼だね。神から瞳を借り、万物を見破るというものだね」
「何それカッコいい」
「………本当に異世界人みたいです」
「妙なスライムを持っていると思ったら、そういうことだったのね。紛らわしい」
「そんなこと言われても困る」
虎耳っ娘が警戒をといてため息を吐き、狐っ娘は安堵の表情を浮かべた。それにしても、本当に種族間の仲が悪いんだな。
ツクヨミもオークの処理が終わったようなので、そろそろ二人がどうしてこうなったのか聞こうかな? 初異世界人だし。ん? 初異世界人であってるんだよな? まぁ、いいか。