20K:勇者達
引き続き、陽菜視点です
□-253℃□
えぇと………なんで日本の神様が?
「どうだった?」
「なんか、ギフトが二つあって、武の神の加護が追加されてるんだけど………」
茉璃ちゃんにもファルノーク様以外の神様の加護を貰ったようだ。詳しく聞くと、この世界の神様だった。
じゃあ、なんで私だけ日本の神様の加護が?
「なんか俺、素戔男尊の加護あるんだけど………」
「仁君も日本の神様なの? 私は、天照大神の加護があるよ」
「スサノオはともかく、アマテラスはヤバそうね」
確かに、天照大神って日本の最高神だよね。ってことは、その神様から貰った【陽之御玉】ってかなり凄そう。
あ、【鑑定】スキルで確かめられるみたい。
えっと………『和魂』に、『荒魂』? …………良く分からないけど、そのうち試してみよう。
「城っぽいな」
「みたいね」
「綺麗な装飾」
見た感じ、西洋風のお城みたい。
足下には、魔法陣のような………というか、魔法陣が描かれている。
扉が一つあるようだけど、誰も行こうとしない。まぁ、何があるか分からないしね。
すると、扉が開いて二人の人物が入って着た。一人は、全身甲冑を着て剣を腰にさし、兜を小脇に抱えている、鋭い目付きの男性。もう一人は、ローブを着て、木で出来た杖をもった私達より少し上ぐらいの年齢であろう女性
「えーこほん。私の言葉が分かるでしょうか? 分かりましたら、手を上げてください」
ニコニコ笑顔の女性に促されて、おずおずと手を上げる私達。女性が暫く私達を見回した後、書状のような物を取り出して、読み上げ始めた。
「現在、他国に赴いている国王陛下に代わり伝えさせて頂きます。『異界の勇者様方、直接挨拶出来ずに、申し訳ありません。この国はカルナラ王国でございます。この国には100年に一度、選ばれし勇者が召喚されると言われています』」
ここで一旦切ると、再び私達を見回すローブの女性。
「『皆様方に、何かを強いることはしません。言い伝えによれば、勇者は自然とその義務を果たすと言われています』」
その言葉ざわざわし始めるクラスメイト達、特に、オタクグループの人達はかなり驚いて、話の途中だというのに、話し合いを始めている。
「『我々に出来ることなら出来る限りするつもりです。しかし、本日はお疲れでしょうからゆっくり休んでください。詳しい話は、魔法士団長と騎士団長に任せているので、二人から聞いてください。
カルナラ王国国王、グラムエル=カルナラ』」
書状を読み終わった女性が丁寧に会釈し、自己紹介を始めた。
「勇者様方どうも、私が魔法士団長のルーメルです」
「俺は、騎士団長のゼロだ」
「皆様には、お好きなことをしていただきます。近接戦闘なら騎士団がお教えしますし、魔法なら私達魔法し団が教えます。他のことについても、私達が出来る範囲で協力いたします」
どうやら、私達のことを尊重してくれるらしい。まぁ、いきなり魔王を倒してくださいと言われるよりは、マシかな?
何人かは、さっそく自分に出来ることを他の人達と話し合っている。でも、やっぱり納得出来ない人はいるみたいで………
「ふざけんな! 勝手に連れてきたくせに! さっさと元の世界に帰せ!」
一人でいたクラスメイトの一人が、立ち上がってそう叫んだ。
スキルも選んだのに、なんで納得していないのか、良く分からない。
「皆さんを帰す方法は、あるにはあります。ですが━━━」
「あるならさっさと帰せよ!」
帰る方法があるならと、何人かのクラスメイトが立ち上がって自分も帰りたいと言い出す。でも、ルーメルさんの言葉にはまだ続きがあるみたい。
「帰すことは出来ますが、帰した後の安全が保証出来ません」
「どういうことですか?」
「それを説明するには、召喚と送還について話さなければいけません」
ルーメルさんによると、私達は召喚されたとはいっても、魂しか召喚されていないらしい。なんでも、肉体ごと召喚するには異次元空間を通さないといけないらしいのだけど、肉体がそれに耐えられないらしい。
「ですので、輪廻の輪を利用して魂だけを安全に召喚するのです」
じゃあこの肉体は? と疑問が浮かぶが、直ぐに肉体について説明してくれた。
肉体については、より強靭で此方の世界にかなり適応したモノを、神様が創ってくれるらしい。容姿は以前のままで
成る程と納得する。では、送還するにあたって何故安全が保証出来ないかというと
「送還も召喚と同じく、魂を元いた世界の肉体に戻すのですが………」
そこまで言われて納得した。
私達の肉体は、ファルノーク様の話から推測すると、爆発でふっ飛んでいるハズだ。
「そりゃ、安全は保証出来ないな」
「送還されたかどうかも分からずに死ぬ可能性が高い…………それは嫌ね」
仁君も茉璃ちゃんも苦笑している。
そして、それでも帰りたいと言う人は流石にいなかった。
「えー他に質問がある方はいますか?」
ルーメルさんが周りを見回すが、今のところ質問がある人はいないようだ。
「えーそれでは、お部屋に案内………する前に、此方のプレートを一人一つずつ配ります」
そう言って配られたのが、薄い金属のプレートみたいな物だった。なんだろコレ?
「それは、ステータスプレートと呼ばれていて、魔力を流し込むと自分のステータスが浮き出てきます。紛失した場合は、私に話していただければ再発行いたしますので………では、お部屋にご案内させて頂きます」
部屋からぞろぞろと出て、その後は外で待機していたメイドさん達に案内されて、出来るだけグループでまとまるように案内された。
私達三人は、帽子を被った明るいメイドさんに案内された。室内なのに帽子を被ってる理由は、昔火事に巻き込まれて火傷してしまったかららしい。
「ここになります。ヒナさまとマツリ様は同室でよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「私もいいよ。それと、様は止めてよ、柄じゃないし」
「勇者様を呼び捨てなんて、お、畏れ多いです!」
茉璃ちゃんがメイドさんと仲良くなろうと頑張っている。
暫くして、二人きり、もしくは私達といる時だけという条件で了承してもらったようだ、ついでに、私達のことも呼び捨てにするように頼んだ。
ちなみにメイドさんは、リーフという名前らしい。
「そんじゃ、色々決めるか」
私と茉璃ちゃんの部屋に三人で集まって、色々と話し合うことにした。
「とりあえず、何か仕事探す?」
「いや、その前に戦闘訓練だろ。後は、覚悟も必要か………」
「覚悟?」
仁君のいう覚悟が良く分からずに首を傾げる。横を見ると、茉璃ちゃんも良くわかっていないようだ。
「身体が変わったけど、変わってない。というか、実感がないんだよな、それで思った。思考も少し変わってる気がする。倫理観とか」
「倫理観?」
「人殺しにあんまり躊躇いがなくなってると思う」
「マジで?」
「いや、まだ分からない。でも、多少はグロいのとか平気になってると思う。それと、いつかは人殺しに直面すると思う。魔法と剣の世界だからな」
気まずい空気が流れる。今の今まで、そういうのが身近に無い世界にいたのに、突然人死にの多そうな世界に来た。
やっぱり、あんまり実感がない。
「やっぱ一先ずおいとこう、先ずは強くなることだな、モンスターとかいるらしいし」
「だね。あの騎士団長さんに手解きしてもらいますか」
「私は、魔法をルーメルさんに習うよ、二人のサポートが出来るように」
こうして、私達の方針がいったん始まったのだった。




