1k:チート
□ -272℃ □
「ここは……」
異世界かな?
木漏れ日のさす森の中、周囲の音を聞くに、川もあるようだ。
それにしても、最後に貰ったギフト………【温度調整】って、なにその地味に便利そうなギフト。
便利そうだが、強力とはいえない気がする。
しかし、使い方はなんとなく分かる。さて、どのくらいの範囲で温度調整できるかな………は? え? ちょ、いいのこれ?
ヤバい。
何が便利そうだけど地味で、強力そうじゃないギフトだよ! 下は絶対零度から、上は絶対熱までいけるとか、チート通り越してバケモノだよ! 神様なんてもの与えてんの!? 絶対熱とかこの世界軽く滅ぼせそうじゃん!
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ふぅ。
少し落ち着いた。
温度が調整出来る範囲は、自分を中心とした半径50メートル以内の物なら、自身の温度含めて自由自在のようだ。
さらに、熱変動無効のオマケ。
つまり、俺には絶対零度も絶対熱も効かないらしいです。なんというか、オマケ能力じゃなくね?
とりあえず、【温度調整】は普段は100~0℃の範囲に限定して、相手を攻撃するさいは、-100℃くらいにしておこう。うん。
ギフトのことはコレぐらいでいいとして、お次はスキル。とりあえず、料理と戦闘系、魔法に、言語理解のスキルは確認出来ないが、察知とか感知のスキルは普通に使える。
後は………
近くの草に注目する。
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≪雑草≫
備考
・ただの草。
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鑑定も使えるな。うん。
「うーん」
さて、これからどうしようか?
森でのんびり暮らす? 出来るかは分からないがするか
もしくは、人に会うために町に向かうか……
町一択ですな!
人が恋しいです。
「といっても、どっちに町があるのか………」
手にした能力では町がある方向なんか分かりません。
仕方がないので、適当に歩いて行く。
それにしても、静かな森だな。
鳥のさえずりがたまに聞こえるぐらいで、他には何も聞こえない。
「ふんふんふふーん。ふんふんふふーん。」
下手な鼻唄を歌いながら、森の中をふらふら歩く。
暫く歩いていると、そいつが現れた。
青く丸い身体がぷるぷると揺れている。
そう、スライム!
ファンタジーによくいる雑魚だが、ネット小説では魔王になったり、世界を救ったりするあれですあれ! 早速鑑定、鑑定!
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≪ブルースライム≫
備考
・この世界で最も一般的なスライム。
人を襲うことはなく、ただただ動く魔物。
なんでも食べるため、トイレの清掃なんかにも使われる。
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…………………
なんだろう。何とも言えない鑑定結果だな。
しかしこれ、触って大丈夫なんかね?
鑑定結果だと、いけるらしいです。
スライムを持ち上げてみる。
おおう。
何とも言えない触り心地。よし、ペットにしよう。何故かは分からんが、大人しくしてるし。
スライムを抱えて、森の中を歩く。
さて、さっきから何かの気配を感じる。しかし、人間では無い気がする。なんでかは分からないが、なんとなくそんな気がするのだ。
「グギャギャ!」
「グギャ!」
「ギャ! グギャ!」
「うわー。ちょーブサイクだな。あれかな? ゴブリンかな?」
俺の腰ぐらいの大きさのボロい腰布に、こん棒を持った小鬼? が、三匹。ゴブリンさんですよね。合ってますよね? 困った時は鑑定!
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≪ゴブリン≫
備考
・暑すぎず、寒すぎない環境ならどこでも生きていく魔物。人を襲う習性もある。特に女性の方は悲惨な目にあうので注意。
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なんか濁してる。
とにかく人間を襲うらしいので、倒してしまおう。
ククク。こうしてスライム君と歩いている間に、色々と戦闘方法を考えていたのだ。流石に近接戦闘だとあれなので、【温度調整】を使って倒すことに決めたのだが、ただ凍らせるだけじゃ芸がない。という訳で!
「必殺! 生命凍結!」
“必ず殺す”と書いて、必殺!
説明しよう! 生命凍結とは、【生命感知】と【温度調整】を使い、対象の心臓を凍らせて倒すというとってもスマートな技なのだ!
生命凍結を食らったゴブリン三匹は、倒れる。【生命感知】で確かめると、確かに死んでいるようだ。しかし、ゴブリンさんなんぞいらないんだよな~
「食べる?」
「………」
スライム君を地面に置くと、ぷるぷる震えながらゴブリン達を取り込み、俺のほうに戻って来た。
よし、これから魔物の処理に困ったらスライム君に処理してもらおう。
「それにしても、こんな調子で町にたどり着けるのかね~」
まぁ、今はとにかく歩くしかない。
さて、そろそろ魔法を使ってみたいのだが、この世界の魔法は、どんな感じなんだろう?
俺が知っているのは、
理解出来る言葉の詠唱の後に、魔法名を言って発動するもの
理解出来ない言葉の詠唱の後に、魔法名を言って発動するもの
魔法名を言ったら発動するもの
イメージを固めて発動させたいと思うと、発動するもの等々だが
俺が試せるのは最後のやつだけだ。
さて、俺が持っているのは【生活魔法】に、【回復魔法】、【空間魔法】だがどれから試してみようかな?
【回復魔法】は怪我をしてないので除外するとして、【生活魔法】か【空間魔法】だな。
よし。【生活魔法】を試そう。
【生活魔法】といえば、ネット小説では殺傷能力こそ無いが、生活するうえでとても便利な魔法だったハズだ。例えば、小さな火を起こすだとか、身体を綺麗にするだとか、濡れた服を乾かすとかだが、一番分かりやすいのは、やっぱり小さな火を起こすかな?
落ちている葉っぱや、枝を集める。
さて、後はイメージだが、チャッカマンでいいかな?
チャッカマンで火をつけるイメージをしながら、火が出るように強く思う。
「おお!」
“ボッ”っと、葉っぱと枝に火がついた。
やった、成功した!
思わず小躍りしそうになるが、このままだと木に燃え移るかもしれないので、消火することにする。
今度は、火の上に手をかざし、蛇口から水を出すイメージをする。
すると、掌から水が出て、綺麗に火を消火することが出来た。
流石は魔法。とっても便利!
魔法の使い方も分かったので、テンションも上がり、俺は再び森の中を歩くことにした。さてさて、日がでているうちに町に着ければいいけど、どうなるかな~
【温度調整】Tueeeeeeee!!
自分で考えておいてなんですが、異世界なんて簡単に滅ぼせますね。