18K:①彼女にとっての彼━━━②日常の終幕
トーマ視点ではありません
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■①彼女にとっての彼■
私と『彼』は幼馴染。
生まれた時からお隣同士で、気づいた時には一緒に遊んでいた。
何処へ行くにも『彼』と一緒。
『彼』に手を引かれて━━━
『彼』の手を引いて━━━
優しくて、頼りになって、かっこよくて
私が『彼』を好きになるのに、時間はかからなかった。
「陽菜の笑った顔、好きだなぁ、俺」
『彼』がそう言ってからは、なるべく何時も笑うようにした。
「あ、その髪型………そう、サイドテール。似合ってる、可愛いよ」
『彼』がそう言ってからは、私の髪型はお風呂と寝る時以外はずっとサイドテール。
『彼』の言葉の一つ一つが、行動の一つ一つが、私の心を揺らしていく。
『彼』は、私を支える柱の一番大きい物。
私にとって『彼』は特別で、大切で、大事な人
けれど━━━
「え?」
別れというものは突然で━━━
「交通事故?」
気がつくとどこかの部屋の中で、私はどうやってそこに来たのか覚えていなかった。
小学校に入った時に、『彼』の家の隣に越してきて、それからずっと仲のいい仁君が、横たわった誰かを見て、沈んだ表情をしていた。
「陽菜………来てたのか」
仁君がこっちを見て、消え入りそうな声で呟いた。
私は、ふらふらと歩いて、横たわったいる人物を見た。
『彼』は、何時ものように笑ってそこにいた。
だからかな? 私が、『彼』のイタズラかと思ったのは。彼が、たまに皆を困らせるイタズラ。だからかな?
「起きて、もう分かってるよ」
『彼』を起こそうと思い、震える指で『彼』の頬に触れた。
あの時の、まるで凍ってしまったような『彼』の身体の冷たさを、私は忘れることができない。
「いや………約束したよね? ずっと一緒だって? ねぇ? 起きてよ、ねぇ!」
いくら揺すっても、呼び掛けても、『彼』は起きなくて
『彼』はもう戻って来ないのだと、じわじわと頭が理解していって
それを否定したくて
でも、現実は変わらなくて
「起きてよぉ………凍真君………」
私の中のナニカが、音をたてて崩れた気がした
◇
■②日常の終幕■
あれから、一ヶ月が過ぎた。
私━━聖 陽菜━━は、都内の高校に入学し、今は高校生活を送っている。
仁君━━千切 仁━━も、同じ高校に通っている。
「おっはよー陽菜」
「茉璃ちゃん、おはよう」
錦 茉璃。
席が隣同士なので、自然と仲良くなった。ショートカットのボーイッシュな感じのする女の子で、運動神経抜群なんだけど、運動部には入っていない。助っ人はよくやってるけど
他にも友達はいるけど、基本的には茉璃ちゃんと一緒が多い。小学校や中学の友達が仁君以外いないので、少し心配だったけど、茉璃ちゃんのおかげで沢山友達が出来た。
「陽菜、おはよう」
「おはよう仁君」
「千切おはよー」
「おはよう錦」
仁君は私の後ろの席。私を通して、仁君と茉璃ちゃんは仲良くなった。
茉璃ちゃんは仁君の事が好きになったらしいので、二人をくっつけるために頑張るつもり。
私の恋はもう叶わないし、友達の恋の手助けをするつもりだ。
凍真君以外と付き合うつもりはない私は、生涯独身で生きていくと決めた。親や仁君は、好きにすればいいと納得してくれた。反対されると思った私が呆けていると
『どれだけ好きだったか知ってるから』
と言われた。
けれど、まだまだ凍真君の魅力を語れていない私は、いかに凍真君が素晴らしいかを話そうとしたら、何故か逃げられてしまった。
なんでだろう?
とにもかくにも、私には凍真君しかいないのだ。
「おらお前ら、ホームルーム始めるぞ、席につけ」
『はぁーい』
━━━思えば、あの時休んでいたら、私はどうなっていたのだろうか?
担任の先生が来て、ホームルームを始めようとした時、教室の床が様々な色に光だした。
━━━今は、休まなくて良かったと思えている
皆が驚き、叫んでいる間、私は教室の床に浮かび上がったモノを見つめて、凍真君のある言葉を思い出していた。
━━━兎に角、あの時私達の日常が崩壊したのは、確かだと思う
そうあれは確か……
『異世界召喚には、魔法陣がつきものだ』
輝く魔法陣から目を開けていられないほどの光が溢れ、私達の視界を埋め尽くした。
多分、次回も陽菜視点