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15K:真夜中の異変


最初はトーマ視点ではありません


□-258℃□






俺は、人が許せない。



奴らが私から大切な人を奪った。



奴らを許すわけにはいかない。



それなのに今の王族は、第二王子を除いて、全員が人との融和のために尽力している。



「ふざけるな! 奴らが奪ったモノを分かっているハズだろう!?」



腑抜けた王族は必要ない。全員を牢に閉じ込め、以降は私がこの国を統べるのだ。そして、人族の国を全て攻め滅ぼす。


攻め滅ぼした後は、我らの奴隷とし、一生をかけてその罪を償ってもらうのだ。


私は、眼下にあるアルスラの王都に浮かび上がった魔法陣を見つめ、ほくそ笑む。



「さぁ、アルスラの民よ。思い出すのだ、その憎しみを、恨みを、怒りを! 今こそ、人族に復讐する時なのだ!」



待っていてくれ、リュコス。


英雄と呼ばれた君の仇を、私が討とう。


私がきっと、君の無念を晴らしてみせる。



「全てが終わったら、私も君の下へ行くよ」



そしたら、また笑ってくれ。


私の側でずっと











さて、この真っ赤になったルルーをどうするべきか………


とりあえず、部屋に戻そうかと、ルルーを抱えあげようとしたら━━━



「トーマさん!」



勢いよく扉を開けて入って来たのは、寝間着姿のティオだ。



「ルルー!? どうして………というか、なんで顔が真っ赤に?」


「あぁ、ちょっと色々あってな。落ち着かせようと抱き締めたら、こんなことに………」


「抱き締めっ!? うっ、羨ましい」


「え? なんだって?」


「い、いえ、なんでもありません」



それで、ティオの要件がなんなのか聞いてみると、寝ていたら、とても嫌な感じがして飛び起き、慌てて俺の所に来たそうだ。


しかし、なんで俺の所に?



「安全でさから」


「あ、そう」



暫く話していると、フェルゥとツクヨミも入って来た。なんでも、この二人……二匹? 二体? も、嫌な感じがしたらしい。



「どうも、呪いに似てるんだよね」


「呪い?」


「っ! 言われてみれば確かに………」



ティオはそう言うと、懐からお札のようなものを取りだし、ルルーの額に貼った。


何してるんだ? と聞いたら、ルルーに呪いの効果が出てるかもしれないので、念のためだそうだ。


もしかして、俺を襲ったのは呪いのせいかな?


フェルゥとツクヨミは大丈夫なのか聞いたら、問題ないと返ってきた。俺の場合は、【月之御鏡】の効果で無効化してるから安心だしな。



「トーマ!」


「トーマくん………って、ティオ達もいたのか」



お次はアマネさんと、ジオさんが入って来た。



「どうやら、王都に大規模な結界が張られているらしい」


「しかも、呪いに感じがするんだ。今、シュロとスイウが屋敷の部屋の一つに結界を張っているから、皆は直ぐにそこに移動して」



アマネさんとジオさんは、その後城に向かうそうだ。


それにしても、結界を使った呪いか…………あ!


アレが使えるかもしれない。



「ツクヨミ、今日は━━」


「満月だよ、タイミングバッチリ、運がいいね」


「だな」



俺の言いたいことが直ぐに分かったのか、ツクヨミが答えてくれる。そして、フェルゥの背中から俺の肩に移動してきた。


ツクヨミが着いてきてくれるなら、心強いな。



「トーマさん?」


「結界のほうをなんとかしてみる。ティオ達は、フェルゥと一緒に屋敷にいてくれ」


「それなら、私も!」


「何があるか分からない。それに、直ぐに終わるよ」



泣きそうな顔のティオを撫でた後、フェルゥに後のことを頼んだ。


フェルゥは、一声鳴くと、ティオの側に移動してくれた。



「それじゃあアマネさん。結界をなんとかしたら、俺も城に向かいます」


「うむ。頼んだぞ」



屋敷の玄関から、王都の外に出る。



真夜中の静まり返った王都………特に問題があるようには見えないが、結界は見えないだけでしっかりとそこにあるんだろう。とにかく、高い建物がいいだろうと思い、そこに向かって走る。


さて、アレなら広範囲にいる人達の呪いを解けるのは分かっているが、結界に効くだろうか?



「悪意ある呪術的要素があれば、浄化の力で構成を破壊出来るから、大丈夫だと思うよ」


「そうか、なんとかなりそ━━っ!?」



突然裏路地から飛び出てきた人に斬りかかられたので、急いで避ける。


しかし、避けた所に屋根から弓矢や、魔法の攻撃が飛んで来た。


此方も避けると、今度は、王都に入る前に襲ってきた、兎族の女性と、犀族の男性が襲いかかって来たので、氷の壁を作って防御する。



「おいおいマジかよ」


「これは、不味そうだね」



俺の目の前には、虚ろな瞳をした、多種多様の獣人族の人達が、武器を構えて集まって来ていた。


そして、前方のいかにも武闘派と呼べる人達の一部は、憎悪の籠った瞳を爛々と輝かせてこっちを見ていた。



「人族が! 父上達を騙し、何を考えている!」



一番最初に斬りかかって来た青年が、剣を此方に向けて聞いてきた。


いや、誰の息子さん? と思い鑑定してみたら、なんと第二王子リオン=アルスラだった。



「俺は騙してなんかないし、異世界人だからそもそも関係ないと思うんだが━━━」


「黙れ! 貴様らがどれだけの同胞を奴隷にし、殺してきたか………分かっているのか! 融和を築こうとした英雄リュコス様を殺した癖に、よくノコノコとこの国に来れたものだな!」



駄目だな、こいつらには、俺が憎むべき人族と写っているらしい。



「さて、ツクヨミ。この人数を傷つけないようにしつつ、アレを発動させるミッションみたいだ」


「この王都を覆えるレベルなら、だいたい十分くらいだね」


「了解」



俺は、【月之御鏡】を右手の上に出現させる。見た目は、手のひらに乗るぐらいの大きさの、丸い鏡だ。


そして、それを天に飛ばす。


さて、後十分。



「逃げますか」





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