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11K:王都手前で一騒動


□ -262℃ □






「獣人武技 蛇槍」


「雷鳴槍撃!」


「ちょ! ま!」


「グルァ!」


「ちぃっ!」



どうも皆さん、いきなり戦闘ですいません。


さっそくですが、なんでこうなったのかを出来るだけ簡潔に説明します。


神牙(フェンリル)様のいる魔狼の森を後にした俺達は、そこからさらに一週間かけて、獣人達の国アルスラの王都に着いた。


着いたはいいんだが………



「思ったより、素早いわよコイツ!」


「姫巫女とその護衛を拐ったんだ、それなりの強さはあるだろう」


「あの狼も強いぞ」



思いっきり勘違いしとる。


あ、フェルゥのことを神牙(フェンリル)だと分かってる人がいるにはいるんだが………



「く! そこをどけ!」


「いやだから! なんで牙選者様と神牙様と戦わないといけないんだよっ!」



向こうで猫っぽい獣人の人を足止めしていて、しかもその犬の獣人の言葉を、他の人達は全く聞いてくれていない。


「なんでこんな貧乏くじ引かなきゃいけないんだよー」と悲鳴をあげているが、向こうをカバーできる余裕はこっちにはない。


俺が相手をしているのは、左側の耳が千切れて半分ほどになっており、武器は無骨なガントレットを装備した女性の兎の獣人。傷だらけの身体をした、槍使いの犀の獣人。


もう一人、羽の生えている、おそらく鳥の獣人である男性は、フェルゥが相手をしてくれている。



あ、ティオとルルーは、王都に着いた時に丁度知り合いを見つけたようで、その人に事情を話すために先に行っていたのだが、俺が姿を見せた瞬間、二人を抱えてその人が走り去ってしまい、どうすべきか迷っていたら、五人の獣人さんが来て、今に至ります。



「少しは話を聞いてくれないか? こっちは戦う気なんてさらさらないんだけど」


「ルゥ」


「バカめ! 人族の言葉など信用出来るか!」



駄目だこりゃ。特に、兎の獣人さんは俺を憎しみの籠った目で見てきており、人族が嫌いなのが一目見ただけで分かった。


ちなみに、犬の獣人さんは別段そんなことは無かったが、他の人達も多かれ少なかれ人族を嫌っているようだ。



「参ったな。別にアルスラに寄らなくてもいいけど、二人にお別れぐらいは言いたかったんだが………」


「だね。でも、強行突破も出来ないしね」


「グルゥ」



どうすればいいか途方にくれる。ちなみに、ツクヨミはフェルゥの上に乗って、余裕な感じでいる。



「一気に決めるか」



お、鳥の獣人さんが飛び上がった。


他の二人も、俺に躍りかかってきた。


あ、今なら地面の二人の機動力削げるかも



氷原(スケートリンク)



最大範囲で地面の表面を凍らせ、まさにスケートリンクのような感じになる。



「なっ!?」


「キャッ」



うむ。派手に転んだな。しかしそこは獣人、直ぐに体勢を立て直した。



「トーマくん、トーマくん。なんで滑らないの?」


「クゥ………」



あ、フェルゥも滑ってるわ。


俺が滑らない理由、それは簡単だ。



「俺が踏んでる所だけ氷を無くしてるだけ」


「成る程ね」



とりあえず、フェルゥのいる場所も溶かしておく。


さて、ここからどうするかね?


上空からの魔法攻撃を、厚い氷の屋根で防御しつつ、もう王都に無理やり侵入してやろうかと思っていたら………



「そこまでですぞ~~~~~!!!」



王都の方から、土煙を巻き上げて小さな人影が駆けて来て………



「あふんっ!?」



俺の張った氷原のせいで滑って、空高く吹っ飛んだ。


えええぇぇぇぇぇ、と思ったら、フェルゥが大ジャンプで小さな人影の後ろ襟をくわえて、綺麗に着地した。あ、着地地点の氷は溶かしておきました。



「た、助かりましたぞ神牙様」



小さな人影は、ネズミの耳を生やした老人だった。ネズミの獣人って人より背が低いのか………



「えー皆さん! こちらのトーマ殿は、私の仕えるイナリ家の大切な客人であり、神牙様に選ばれた牙選者でありますぞ! これ以上の狼藉は、イナリ家を敵に回す行為だとお思いくだされ!」



老人の言葉に、その場の獣人さん達がたじろぎ、犬の獣人さんは、やっとか………と、ため息を吐いている。



「だが! ソイツは!」


「神託により、イル・アニマ様からもその身分を保証されていますが…………それでも何か?」


「ぐっ」



ネズミの老人にギロリと睨まれて、兎の獣人さんが怯んだ。



「さて、では参りましょうトーマ殿」


「え? あ、はい」



老人について、歩いて行く。すれ違う時に獣人さん達から睨まれたが、スルーする。



「すいません。本当はいい人達なんですよ」


「いえいえ、事情は分かってますし、怪我もしてないんで気にしてないですよ」



ペコペコと頭を下げる犬の獣人さんに、笑って答えておく。


ほっと息を吐いた犬の獣人さんは、ぜひ握手をと言って来たので、握手しておく。



「トーマ殿、念のためコレを着けておいてください」


「なんですか? コレ」



ネズミの老人から渡されたのは、イヤーカフスのようなモノ。



「コレを着けている間は、どんな種族でも一時的に犬の獣人になります」


「へぇ」


「お屋敷に着くまでは、そちらのイヤーカフスを着けておいてください。一々引き留められるのは面倒でしょう?」


「ハハハハハ。まぁ」



でも、人間という理由で引き留められるのは無くなるだろうが、牙選者という理由と、フェルゥのせいで引き留められそう。



案の定、屋敷に着くまでなんどか引き留められることになった。





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