決断しました。
本日2話目。美咲の抱える事情がようやく明らかになりました。
私は今、担当番組をオンエア中で、相方と一緒にマイクに向かってしゃべっている。
「さあ、今日も始まりましたよ~。午前のひと時、心地よい音楽と気になったニュースをピックアップしてお届けする、まったり井戸端Redio~☆」
「いぇーい!」
「お相手はワタクシ、みさっちこと美咲と」
「年中無休でボケ担当! 残念なイケメン、ケンヂでお届けしまーす」
「いや、ケンヂ君は別にイケメンちゃうからただの残念な人やよ?」
「ちょ、否定するのイケメンのとこだけ? のっけからキツいわ、みさっち姉さん。これは虐待っすよ。パワハラっすよ」
「はいはい。この被害妄想癖のある残念なケンヂ君はほっといて今日の一曲目いってみよー!」
「被害妄想で片付けられた!? みさっち姉さん、俺のイメージこれ以上壊さないでー!」
「そんなどうでもいい些細なことにこだわらないで、曲紹介してくれる?」
「しくしく。じゃあ紹介します。今日、一曲目にお届けするナンバーは……」
いつもどおりの掛け合いをしながら番組を進めていく。虐待といえば、親に虐待されたあげく捨てられ、私が拾った悠斗は、現在児童相談所が保護している。
現在、親権剥奪も含めた法的な手続きが進められており、申請中の里親資格が認定されれば、私があの子を引取る予定になっている。
通常、私のような独身者が里親になるということはあまり例がなく、法律的にもかなりグレーゾーンらしいのだが、私には結婚そのものが難しい問題──子宮を全摘出していて子供を産めないという特殊な事情がある。
自分の子供は望めないので結婚することそのものを半ば諦めており、いずれは養子を迎えることも考えていた。
そんな私があくまで悠斗という個人のために里親資格を取得しようとしていることや、現実問題として児童相談所に保護される子供が増える一方、里親のなり手が少ないこと、そして悠斗自身の希望もあり、この悠斗の養育という一例に限っては認定が下りるという方向で話は進んでいる。
意外と柔軟な行政の対応に正直驚いたが、このあたりの対応は各自治体に任されているらしいのである程度は融通が利くらしい。
血の繋がりもない子供を独り身の私が引取ることには正直不安もある。
だけど、彼を私が拾ったのも縁だと思うから、 私に出来ることをしてあげたい。
そんなことを考えているうちに曲がエンディングになり、私はひとつ深呼吸をしてから気持ちを切り替えてマイクに向き直った。