相談しました。
ようやく名前が出ました。
悠斗というのがその子の名前だった。
小一の六歳。母子家庭で、母親が最近、彼氏と同棲するようになり、悠斗は二人から疎まれるようになっていたらしい。
そして二日前、母親とその彼氏に車でこの町まで連れてこられて置き去りにされたのだそうだ。
悠斗は自分の家の住所や通っていた学校名もちゃんと言えたから、家に帰すのは簡単だったけど、そんな家に帰せるわけがなかった。
だからって、何の関係もない私の家にこのまま置いておくことは、たぶん、かなりまずい。
もしかしたら今の状況は誘拐とか拉致監禁に相当するのかもしれない。
警察に届け出るべきかしら?
悠斗を拾って今日で三日目。そろそろどうするか決めなければならない。
FMラジオのパーソナリティである私は、平日午前の音楽番組を担当している。
昨日は悠斗のそばについていてあげるために同僚のゆかりに急遽番組の担当を代わってもらったので、今日はお礼に食事を奢る約束をしていた。
「美咲、さっきから全然手ぇ動いてないじゃん。まだ本調子じゃないわけ?」
家に残してきた悠斗のことが気がかりで食事の手を止めていた私にゆかりが心配そうに聞いてくる。
彼女には昨日は体調不良ということにしてあった。
「そう……いうわけでもないんだけどね」
「じゃ、なんなん? なんか悩み事?」
そういえば、ゆかりは家庭内でのトラブルを扱う法律相談番組を担当してるから、こういう法律にも詳しいかも。
「ねえ、ゆかり。ちょっと相談に乗ってくれる?」
「ええよ。なんがあったん?」
私の事情を親身になって聴いてくれたゆかりが提案してくれたのは、児童相談所に相談することだった。
親に監護させることが不適当と思われる子供を保護することもその業務に含まれるそうで、その話を聞いて私はちょっと肩の荷が降りた気がした。
「で、美咲自身はその、ゆーと君だっけ? の里親になることも考えたりしとるん?」
「里親?」
「親からDVとか受けてて児童相談所に保護された子供を養育する里親制度っていうものがあるじゃんね。あんたが里親の資格取ればゆーと君を引き取ることもできるんよ。普通は独身者は里親にはなれんのだけどさ、あんたは特殊な事情があるから案外通るかもしれんよ。……元々、いずれは養子を取るつもりだったんじゃん?」
「まあそうだけどさ」
……里親か。
それも一つの選択肢として考えてもいいかもしれない。