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同情しました。


昨日の夜、仕事帰りにゴミ捨て場で拾った男の子の容態が心配だったので、今日は普段よりも一時間早く目覚ましを設定してあった。


もし、朝になってまだ熱が高いようだったら、有給を取って病院に連れて行くことも考えていた。


一緒に寝てあげた方が良かったかしらと思わないでもなかったが、名前も知らない見ず知らずの男の子の為にそこまでしてやるのはどうかと思い、その子はそのままソファに寝かせてある。



でも、結局その夜は色々と考えていてほとんど眠れなかった。


浅い眠りを繰り返すうちに朝になり、目覚ましが鳴る前に起きだしてリビングのソファの様子を窺うと、彼はまだぐっすりと眠っていた。


額に手を当てて熱を測ってみると、薬が効いたのか、さほど熱さは感じられない。


よかった。これなら、病院に連れて行かなくてもよさそうね。


ちょっとほっとして、寝室に戻り、ベッドに腰掛けてテレビのニュースをつけると、若い父親が子供を虐待死させて逮捕されたというニュースをやって いた。


ああ、まただ。とブルーな気分になる。


DV、育児放棄ネグレクト、いじめ、ストーカーといった陰湿な事件が最近とみに増えてきたように思う。今の社会がそれだけ病み、狂い始めているとしか思えない。


ただ、今まではまるで対岸の火事のような他人事でしかなかったが……


……あの子は、ネグレクトの被害者なのよね。


誰よりも信頼できる相手であるはずの実の親から虐待されたり、育児放棄されるなんていったいどれほど辛いことだろう。


両親からそんな仕打ちを受けたことなどないわたしには正直、想像もできない。



リビングに戻り、いまだ眠り続ける男の子の傍らに膝をつき、そっとその髪を撫でる。


昨夜はとにかく休ませることを優先したから、まだこの子の名前も事情も聞いていない。


私と同年代、もしかしたら私よりも若いかもしれないこの子の親はどういうつもりでこの子を捨てたのだろう? なぜそんな残酷なことができるのだろう? どれほどひどい心の傷をこの子は負ったのだろう?


彼の頬に残る涙の跡を見ながら、私は今日は仕事を休んでこの子と一緒にいてあげようと心に決めた。

挿絵(By みてみん)



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