表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

拾いました。


一人暮らしが長くなると普段はあまり意識していないのに、時々、何かの拍子にどうしようもなく寂しくなることがある。


付き合っている彼氏もいないし、この歳になれば友達も大抵結婚しているから気軽に長電話なんか出来ないし、親ももう他界しているから兄の家族が暮らす実家にも気安く帰れない。


結婚願望がないわけじゃないけど、一人は気楽だし、誰でもいいから結婚したいというほど焦っているわけでもない。……それに、私には普通の人に比べて結婚するのが難しいある事情がある。


だから、私がペットを飼ってみようと思いたったのは割と自然な流れだったと思う。小型犬か猫ぐらいなら今のマンションで飼えるし。


……でも。


リビングのソファに目をやり、ふうっとため息をつく。



まさか、人間の男の子を拾う羽目になるとは思ってもいなかったわ!



朝、仕事に行く為に家を出て、ついでにゴミを捨てに行ったら、ゴミ捨て場に小学校低学年と思われる薄汚れた男の子が座り込んでいて、首に『拾ってく ださい』と書かれたプラカードを下げていた。


その時は悪趣味な冗談をする奴がいると呆れ、関わりたくなかったので無視して通り過ぎた。


でも、夜、帰宅途中にまたそこを通りかかって、その子がそのままそこにいた時には、さすがに無視できずに声をかけた。


「ちょっとボク? 一日中何やってるのよ?」


「……ママが……ここにいなさいって」


ぼそぼそと弱弱しく答えて、そのままぐったりと動かなくなる。


「ちょ、ちょっとボク! 大丈夫? あ、熱っ!?」


額に触れてみると、酷い熱で、このまま放置したら本当に死んでしまいそうだった。


仕方なく、彼を自分のマンションに連れてきて、買い置きしてあったゼリー飲料と風邪薬を与えてからソファで休ませて、今に至る。




正直、面倒なことに首を突っ込んでしまったという後悔はある。でも、この子を放置して、明日の朝、あの場所で冷たくなっているのを見たらもっと後悔したに違いないから、きっとこれが正しかったのだ。


「……ママ」


男の子の頬を涙が伝う。


なにがあったのかは分からないけど、拾ってしまった以上、私はこの子の命に責任がある。


私は彼の目尻の涙をそっと拭き取り、その痩せた手を握ってやった。

挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ