第7話〜犬の王はCMの後で!〜
最初から見てない人は最初から見ることをおすすめします。短めなのですぐ読めます。
俺達が引き起こした1件から2時間後。俺達は王室の扉の前にいた。
「王に会えるなんてすごいですよ!」
「そうだろうな。地位が一番上の奴に会おうとしても普通は会えねーしな。」
「まあ今は一番上の地位の人が私の目の前に居るのですが。」
ニカナが何か呟いたが聞こえなかった。どうでもいいからスルーするけど。来桜も苦笑いでスルーする。
「とりあえず入ろっか?」
来桜が入ろうと言ってきたので俺は頷いて扉を開けた。
そこにいたのは年寄りの犬耳をはやしたおっさんだった。そしてその隣には立派な鬣を持ったライオン風の若い騎士がいた。てかライオンだ。
「おーおー。あなた達が噂の神の称号を授かった者達ですか。」
「あぁ、そうだけど。」
「革、口の聞き方考えなよ!」
王に聞かれたので素直に答えると来桜に注意された。国王なんて今は怖くないんだけどな〜。
「まーまー、気にせんでいいですよ。わしらはあなた達と話ができるだけで光栄ですからの。」
「こっちも話したかったんだ。気が合うな。」
「だから言葉遣いを〜。」
「まーまー、気にせんでいいですよ。あなた達が本当に神の紋章持ちかわしらに見せてもらいたい。」
「そのくらいで呼び出したのかよ。見せてやるけどよ。」
「だから革! こ、と、ば、づ、か、い!」
「まーまー、気にせんでいいで……」
「いつまで続ける気だ!」
流石にツッコミを入れずにはいられなかった。無限ループという名の地獄が始まってからでは遅いのだ。何もかも全て。
収集がつけられなくなるのが一番困る!
「と、とりあえず魔禁石を見せるぞ来桜。それから無限ループって単語の意味を教えてやる!」
「はーい。」
来桜にはちゃんと教えてあげないと今後無限ループとうものを目の前で見せられたら過労死する。
俺と来桜は魔禁石を取り出し王に見せた。
「い、1年ぶりに見た。あの神の絵。あれは本物だ……。」
「信じてもらえたかな?」
「信じました。ところであなた達の名前はなんと申しますか?」
フルネームで答えてもこの世界の人からしたら違和感があるよな。ここは下の名前だけ教えとくか。
「俺は革だ。」
「私は来桜です。」
「そうですか。俺は革だ様と私は来桜です様ですか。」
ピキッ。イライラ。
「小学生みたいな返しやめてもらえます?初心に帰るのはいいことだと思いますよ。でも帰りすぎてそれが走馬灯だったみたいな事はしないでくださいね。」
少しイラッと来たけどお年寄りを雑に扱うのはダメだと思ったので優しくジト目で注意してあげた。ジト目で。
「すみませぬ。革様に来桜様。もう一つ質問よろしいですか?」
「質問ならいくらでもしてください。」
王の言葉に来桜はしっかり返事する。俺は呆れて声も出したくないのに来桜はほんとに偉いな。
「革様と来桜様はどのスタイルなのですか?」
「style?」
来桜が分からなすぎて英語の発音でスタイルって言ってるし。まあ俺もよくわからんのだが。
「スタイルとは『魔術師』や『魔法剣士』、『剣士』などのことを言います。」
そういう事か。俺は今まで魔術師扱いだったのか。でも魔法剣士やりたいな。二刀流の。
「俺は決まってないけど魔法剣士をやりたいと思ってる。」
「私は魔術師志望です。」
「なるほど。武器と杖ならばこちらで用意いたします。持ってきてくれ。」
王が近くの衛兵に声をかけると、その衛兵はどこかへ走っていった。剣と杖でも取りに行かされたのだろう。
「あいつが来るまでこちらも質問攻めいいか?」
「もちろんですよ革様。」
あっさりOK出してくれたな。「まだまだ質問がありますので少々お待ちくだされ。」とか言われるかと思った。
「なんで俺達に敬語なんだ?」
ずっと気になってたんだよな〜。王の癖に敬語とか育ち良すぎてんのかな?
「それはこの国の制度にあります。この国の制度では神の紋章をお持ちである方が最高権力者なのです。」
「なるほど。だから俺が王にタメ口で喋っても処罰がないわ……はぁぁぁ! 俺と来桜が最高権力者ぁ!?」
1週間ほど前に来たばかりの俺達が最高権力者!? ありえないだろ! この国おかしいぞ多分!
「上から神の紋章の持ち主、王である私、そして一般ピープルとなります。」
王よりも権力持ってるとか聞いたことねぇ! そこまでチートかよ!
……ん? 一般ピープルって言った?
「お持ちしました。」
先程パシられ……剣と杖を取りに行った衛兵が武器を持ち帰ってきた。
「これらがこの国最高の剣と杖です。」
ほほう。なかなかいいのが揃ってるじゃないか。アニメや漫画で見る物とほぼ同じだな。
その中に日本ならではの剣があった。
「これって日本刀だな。しかも2本も。俺はこの2本に決めた。」
日本刀が2本。決してダジャレじゃない。こんなつまらないダジャレを言い出したら末期だ。
「二刀流かぁ。革らしいね。」
そう言ってきた来桜が決めたのは、魔術師が使ってそうな輪がたくさん付いていてジャラジャラ音のするやつだ。……と思ったら輪ではなくキーホルダーがたくさん付いていた。ジャラジャラ音がしたのはこのキーホルダーが原因だ。
「これ使えるの?」
「だって可愛いじゃん!」
「あの時あれを選んでいたらー!」を引き起こしそうな理由だな。まあ似合ってるし可愛いからスルーしよう。
「おうさまー。魔禁石とか戦い方について教えてくれないかな?」
「いいですぞ。魔術師は魔法で戦います。魔法剣士は魔法と剣を使いこなして戦います。」
「乱雑だな。」
まあ大体伝わってきたしよしとしよう。
「そして他には魔禁石での戦い方も教えます。魔禁石には隠された力があるのです。」
魔禁石って魔力増幅と紋章の提示が目的じゃないのか?
気になる。
「そ、それは一体……。」
「衝撃の事実はCMの後で。」
……。
………………。
なんで異世界の犬がCMって単語知ってんだよ。
「というのは冗談でですね。魔禁石に触れて自分が共に戦いたいパートナーとなる悪魔を想像してください。」
俺はかっこよくて強そうな悪魔を想像した。一緒に戦って戦って互いのことをよく知り合えるような悪魔を想像した。
そこで俺の意識は落ちていった……。
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