第4話〜神の紋章の力〜
ニカナの住んでる村はハムスターが2千匹くらい住む小さな村で、この島の中心にある王都から300kmくらい離れたところにあるらしい。そのニカナの住む『ダゴマスガ村』へ俺達は訪れた。
「み、みんなー!朗報ですよ!神の紋章を持った猫さんが2人もいるんです!」
「なんじゃと!?」
「だれだれ!!」
俺達はあっという間にハムスターの群れに囲まれた。耳と尻尾を隠せばただの人間の集団なのだが。
「このハムスター全員体内に魔力を宿してるのか。」
「そうですよ。たまに宿してない子もいるけどその子はその子で可愛いからみんなで可愛がってあげてます。」
村の雰囲気からしてこの小さな村のハムスターはみんな仲良しなんだろう。
俺達を歓迎してくれるハムスターが多い中、やはり歓迎してくれないハムスターもいた。
「そこのガキ2人、いきがってんじゃねぇぞ。」
いきなり叫ぶハムスターが一匹。
このハムスターは村で一番強いハムスターらしい。まるでボディビルダーのような体をしていて、もちろん頭にはハムスターの耳がひょこっとはえていて見てるだけで吐き気がす……とても可愛らしいく、ペットにしたいハムスターランキング堂々の第1位に輝けるレベルだと俺は思いますのでそんな目でこっちを見ないで!
「ピュアリグスさん、この猫達は神の紋章持ちですよ!」
ピュアリグスという名前なのか。その部下が止めようとピュアリグスの前に立つ。
しかしこの村最強の称号は名前だけではないのは当たり前だ。すごい圧力を感じる。
「どけ、神だろうがこの村にはこの俺に勝ったものしか入れないという掟だろ。」
部下がそういえばという顔をすると道を開ける。そしてピュアリグスは自分の魔禁石を見せつける。
「俺はこの村で唯一魔禁石に認められた者だ。紋章は『蛇』だ。」
その蛇って紋章がよく分からないんですがあの。まあこの村で唯一の魔禁石に認められた者というのはわかった。
「私達最近ここに来たので魔禁石の紋章がよく分からないので教えてくれませんか?」
来桜が説明を求めた。スルーしようとした俺と違って偉いよな。
「神級なのに知らんのか。まあ教えてやろう。魔禁石の紋章は下から毒虫、蛇、鬼、番人、鳳凰、死神、神となっている。階級が高い者ほど魔力が高くなり強力な魔法が使える。ちなみに称号は1匹1つで、階級が上がったり下がったりしない。もちろん認められる者はごく僅かだ。」
つまり俺達は一番上の称号を貰ったらしい。神級は最上級魔法使ったらこの島破壊しちゃうとかあるのかな?
「そして神級が最上級魔法を使うとこの世界が滅びると言われている。しかし使い道が無いわけでもない。魔力を吸収するドラゴンや魔物もいるからそういった敵に有効だ。」
世界が壊れるらしいが使い道はあるらしい。良かった。
ピュアリグスは腰に携えていた剣を抜き、さっきの掟を守るべく今から俺達と戦うらしい。『剣』で?
「え、待って魔法で闘うとかじゃないの?」
「俺は魔法剣士だ!」
そう叫んでピュアリグスは俺達と一気に距離を詰める。先手必勝である。
なんて卑怯な! しかし早く魔法を使わなければ。頭に浮かんだ単語を詠唱すればいいのか。
「私がやります!」
俺が詠唱を始めようとすると来桜が自分がやるといい詠唱を始めた。
「風よ、流れる風よ、今私に力を貸し与えよ!『風来』!」
すると来桜を中心に強風が発生する。これは初級魔法の1つで風来。ただ風を送るだけの魔法なのだが……来桜の魔力が高すぎて来桜全体から強風が吹き荒れる。
一気に距離を詰めてきていたピュアリグスはすごい勢いで後ろに吹き飛びそのまま地面に体を擦らせて勢いを止める。他のハムスターはすでに家に隠れていた。
「さ、流石は神だ。初級魔法でこの私を吹き飛ばすとは。」
ちなみにピュアリグスは普通に動物が吹き飛ぶと言われる超中級風魔法『風襲』でも吹き飛ばない強者らしい。それを初級魔法で吹き飛ばす神とはなんと恐ろしい。
「くっくっく、気に入ったぜお2人さん。そういえば魔禁石を見せてもらってなかったな。神が嘘ではないかと疑い潰してやろうと思った俺を許して欲しい。」
めっちゃ素直に怖い事言うなこのハムスター。
俺と来桜は魔禁石を見せる。
「本物か。素晴らしい。」
ピュアリグスは何も無かったように立ち上がると賞賛の言葉を俺達にかけた。
「体を思っきり地面に擦らせて普通に立つとか無敵かよ。」
俺はジト目でピュアリグスを見つめた。
「魔力が高ければ攻撃力も防御力も体力も高くなる。お前らはもっと頑丈だぞ。試してみるか?」
ピュアリグスは笑顔で剣を構える。
「さ、流石にそれは…ははは。」
「そうかそうか!がっはっはっ!」
来桜が作り笑顔を見せる。ピュアリグスも笑う。不気味な声で。
「そんなことよりなにか食べ物はないのか?腹減ったぜ。」
「ご馳走なら用意してますよ。」
避難していたニカナが家から出てきて俺にそう告げる。
「まじで!さんきゅ!」
いつ作ったかなんてどうでもいい。今は肉が食べたい!
そして案内された場所に行くとそこにはご馳走があった。
「ひまわりのたねのスープ、ひまわりのたねのパン、ひまわりのたねの炒めもの、ひまわりのたねのアイス。なにこれ。」
もちろんハムスターのご馳走だ。
「ハムスターおもてなし料理四天王です!」
ハムスターおもてなし料理四天王ってなんですか。俺達猫ってことになってるけど人間なんですけど。
「あの、肉とかありませんか?」
「肉って何恐ろしいことを!? 動物殺しですか!? 犯罪ですよ!」
どうやらこの世界では肉が食べられないらしい。つまり野菜だけ食ってろこのクソ猫耳野郎って事だ。
「異世界召喚したやつでてこいやぁぁ!」
俺はそう叫んだ。来桜は苦笑いしていた。俺はこの世界でどんな生活をしていくのだろうか。
ドラゴン討伐に食料問題。
俺は拳を固く握りしめると誰にも聞こえない声の大きさで呟いた。
「ドラゴンって食っても罪にならねえよな。きっと黒豚とかよりも美味いに決まってるよな。」
と……。
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