第2話〜ハムスター少女との出会い〜
今回は少し長めでしょうか?まあ気にせず楽しんでください。
魔法が使えるようになった俺はまず野菜を少し焼いて美味しく食べられるように火の強さのコントロールを練習した。
火の強さを頭の中で考えて詠唱するだけの簡単そうな事だが実は難しい。フライパンで炒めたり、バーベキューのように網に乗せて焼くのとは違い、直接焼くのだから火加減がとてつもなく難しいのだ。それも炙る感じで。
ちなみに今は人参を焼いている。
「ファイアーインパクト! ……また焦げた」
俺が落ち込んでいると来桜が寄ってきてこんなことを言ってくれた。
「私は応援することしかできないけど、めげずに頑張りましょ?」
「そ、それもそうだな。
来桜に励まされたらやる気が出るのは当たり前である。そして俺はこれまで以上に集中力を高めて詠唱する。
「ファイアーインパクト!」
俺の掌から炎が現れる。しかしそれは人参を炙るにはいい感じの優しい炎だ。そして人参の表面が茶色になり、香ばしい匂いを漂わせる。
「できたね革! どんな加減で魔法を使うかわかった?」
「まだ完璧って訳じゃないけど来桜の応援と高い集中力があれば行けるかもな」
綺麗に焼けた人参を来桜差し上げる。来桜は「いただきます!」と言って半分を齧るとと頬を緩めて「おいひぃ〜」と絶賛した。
そして残っていて半分を「はい♪」と言って俺にくれた。
……つまりこれは関節キスのチャンスである!
落ち着け! 落ち着け俺! こういう展開は良くあることだろ! こんな綺麗に焼けてる上に来桜の唾液付きとか贅沢すぎる! あぁ、一生手に持って生活していける気がする。
俺が頭をふわふわっとさせていると俺達しかいないはずのこの草原で何か動くような音がした。
「い、今音がしたような……」
「気をつけましょう」
俺と来桜は警戒する。
来るなら来い!
そして草の中から出てきたのは鼠だった。その鼠は俺が持っていた人参の来桜が齧った所を齧って草の中に隠れた。
一瞬の沈黙の終わりと俺の怒りがMAXになるのは同じタイミングだった。というか沈黙を破ったのは俺なのだが。
「あいつぜってぇ許さねぇ! ファイアーインパクト! ファイアーインパクト!」
俺は鼠が草の中に隠れていった部分を中心に燃やしていく。俺の人参を奪って行ったあいつは灰一つ残さない! 俺の意思は燃え盛る炎よりも溶岩よりも暑い。
俺の青春の1ページを返しやがれ!
「ファイアーインパクト!ファイアーインパクト
!死ね死ね死ね死ね!」
「もういいんじゃないの?」
俺が半狂乱していると来桜が止めに入る。
俺はすぐに止める。
「あらら。人参食べられちゃったけどまた焼けばいいよ。ね?」
まあ確かにそうだ……ってなわけあるか! 俺は来桜の唾液付きが欲しいのだ!
「動物もいるって分かったし革の火加減の調節も上手くなったし今日は収穫だらけね♪」
「たしかにそうだよな。動物がいるって分かったし、大きさも地球と変わらないサイズ。ははは」
しかしまた何かの動物が来る気配がする。草を踏む音がするから鼠ではない。そしてこのリズム……。
「人間!」
俺が叫ぶと後ろから声が聞こえた。
「君達見ない顔と服と耳と尻尾ですね」
そこにいたのはハムスターの耳を頭にはやした茶色の長い髪と瞳をした美少女だった。
「お、お前の耳ってそれ……」
「ハムスターですけど? 君達は猫?」
やはりハムスターだった。そしてよく分からない質問されたのでこう答えた。
「いや、人間だけど」
するとハムスターの耳の少女は呆れたような目でこちらを見ていた。
「人間って何? 君達は猫じゃないの?」
どうやらこの異世界では耳と尻尾で何の動物かを判断するらしい。それ以外を見れば人間なんだが……。人間という概念が無いから通じない。
「じゃあさっきの鼠は?」
「あの子はただ魔力を体内に宿してないからあの姿だったんです」
つまり俺があの石から吸い取ったのは魔力ではなくほかの何かで来桜でも魔法は使えたってことか。聞きたくないけど一応聞いてみよ。
「あのさ、俺変な石から何か吸い取ったんだけど……」
そういうとハムスターの耳の少女は目を丸くした。
「まさか魔禁石から魔力を吸い取ったんですか!? だからあんな火花を起こす程度の魔法でこんなに燃やすことが出来たのですね!」
魔力だったのか。
俺が「ファイアーインパクトって魔法あるの?」と聞くと「火花を起こす程度の魔法だよ。」と答えたからファイアーインパクトはある。頭に自然に浮かんできたことを言っただけで俺のネーミングセンスは腐ってなかったよ! 何か新しい魔法の名前を決められるとしたら次はブラックシャットアウトにしようと心に決めた。属性が闇じゃなかったらどうしようもないけど。
俺が内心ガッツポーズを決めているとハムスターの耳の少女は自己紹介を始めた。
「私はハムスターのニカナ。あなた達の名前は?」
俺達も自己紹介をする。
「俺は西田 革」
「私は矢松 来桜です」
ニカナは「名前まで珍しい〜。」と興味深そうに俺達を見つめていた。
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