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4.試練の始まり

殺戮の獣さんの神の右腕(ゴッドハンド)では

2018/6/10現在、勇者の神剣(ブレイブソウル)より少し先まで物語が進行しています。


 見知らぬ部屋。いつの間にか白く簡素な服を着た僕と、オーランドの分身。そして、輝き続ける抜き身の剣。

 白いレンガによって形造られた簡素な部屋に、二人の息遣いだけがあった。



「無事、能力が目覚めたようだな」



 オーランドは、僕の膝の上に乗った剣を見て言った。



「はい」



 剣の柄を掴み持ち上げる。ずっしりと重く、そして懐かしい。念じると、白い瞬きを発し鞘に納められた。


 12の神器と3つの神武。神器、雷霆ケラウノスの神武が1つ。万在のケラウノス。万の在り方、全能の写し身。

 天王司家は代々三人の跡継ぎ候補を作ることを義務付けられている。その内の長男が僕、アルフだ。 万在のケラウノスは神事の際、天王司家の長男に貸し与えられる。それを持ち、全為神の試練を超えてようやく天王司家の当主となる。


 なぜ今この神武が顕れたのかは解らない。ただ、この神武が僕の手元にある限り、僕の味方であり、僕の力であることは確かだ。



「能力の顕現と同時に武器が顕れる……無い訳ではないが、あまりにも珍しい。流石勇者と言うべきか……」



 オーランドの分身がぶつぶつと呟いている。その内容からして、僕のように武器が出るのは特殊なケースらしい。それがいいのか悪いのかはわからないけど。


 オーランドの分身がわざとらしく咳払いした。



「気を取り直して、君の能力を調べるとしよう」



 そう言いながらオーランドが差し出してきたのは、A4ぐらいの大きさの紙。手に取ってみると、分厚く、少しざらざらとしている。



「これは?」


「それは人の持つ能力のランクとその詳細を写し出してくれる、魔法道具だ」



 紙を眺めていると、Sのような形をした記号が浮かび上がる。



「やはり、Sランクの能力者でしたか」



 オーランドの言葉が終わる寸前、紙が手を離れ宙に浮かぶ。そして、僕の顔に向かって突撃してきた。余りに突然のことで、反応できず目をつむる。


『目覚めよ、静寂に揺蕩う力よ』


 ……紙が当たった気配が無く、恐る恐る目を開ける。そこにはオーランドの分身の布に覆われた顔があった。


『光の神子、愛され、疎まれしものよ』



「頭の中で情報が流れていることだろう。それは、ステータスと唱えることでその情報を自身にしか見えない光板に映すことができる」



『汝、縛鎖に絡め取られし憐れなる魂なり』



 なんだろう……声が、聞こえる……。



『大いなる試練は此れより始まる』



「――? ――――、――――――」


 オーランドの言葉が聞こえない……。




『運命の因果は糸を紡ぎ、繩を断つ』


 そうだ、始まる。唱えなければ、祝詞を。



「『未来、此処に在らん。王司の血筋に栄光を!』」




「――大丈夫か!?」


「へぁっ!? えっ、あっ、大丈夫です」


「全く、いきなり放心状態になるとはの。それだけ危険な力ということなのか?」



 今のは……昔、天王司家の試練が始まる時に聞いた声。そうか、始まったのか。正統な後継者となるための試練が。



「ひとまず、ステータスと唱えなさい。君の能力が危険なものかもしれない」


「あっ、はい。わかりました。ステータス!」



 眼前に青白い半透明のプレートが出現する。そこには、これだけ書かれていた。




勇者の神剣(ブレイブソウル)

万の在り方、果て無き力、全なる天穹、全てを以て全てを制せ。




 万在だけじゃない? 果無と全穹のケラウノスも含むのか? 兄妹一人に一つの神武、神事に例外は無いはず。弟と妹はどうなった?


 ……今は考えてもどうしようもないか。突然の異世界で、より強い力を手に入れられたと思えばいい。



 とりあえず、オーランドの分身にステータスと唱えて出てきた情報の全てを話した。



「つまり詳細は載っていないと。これもまた例外……勇者とはどれほど規格外なのだ?」


「そ、そんなに変ですか?」


「いいや、想像以上に期待ができるということだ。さて、皆待っておる」



 安心も束の間、オーランドの分身が持っていた杖から黒い煙が吹き出した。煙は僕の体を包み、服の重さが変わったかと思うと黒い服にコートを羽織った服装になっていた。



「では、掴まりなさい」



 勇者の神剣(ブレイブソウル)を持って立ち上がり、オーランドの分身が差し出した手を掴む。視界が歪み、自分がどこかへ行くのがわかった。


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