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召喚言霊使いの異世界放浪記  作者: アルカナ
2/7

1ー1  目覚め

「ハァハァ……」

足が痛い、背中が痛い、肩が痛い。

気を抜けば止まってしまいそうな足を叱咤し、ひたすら走り続ける。

行くあてなど無い、何処へ辿り着くとも知れない逃避行。

敵を、魔族を恐れた訳でも、まして負けた訳でもない。

それでも、逃げなければならない。

背中に振り下ろされた刃から、撃ちかけてくる鏃から---人々の悪意から。



「~~~ッ。」

飛び起きて周囲を探る。

ひとしきりキョロキョロしたあとで、見慣れた家具を確認し安堵の息を漏らす。

ここは自分の家、安心できる場所。

そう確認した所で、肩の力を抜きベッドに身体を横たえる。

今し方見た夢--悪夢--を反芻し、微かに背中と肩に走る幻痛に顔をしかめる。

「ひさびさに嫌な夢見ちゃったなぁ~」

彼女-茜-がこの世界に召喚されて8年。

18の時に召喚され、本来ならアラサーに含まれるが、彼女は召喚された時のまま変わらない。

召喚された影響で、茜は限りなく不老不死に近い存在となった。

もちろん、致命的な怪我や毒を負ってしまえばその限りでは無いのだが、茜の身体能力、回復力は常人の限界を遥かに超えている。

不意打ち、奇襲、真っ向勝負を問わず、茜に傷を与えられる存在は、この世界中でも片手で足りる程の数しかいない。


閑話休題。

カーテンを全開にし、清々しい朝の陽光を浴びる。

眼前に広がる木々の海。

ここはアイルム大陸の辺境、メルト大樹海。

高位の精霊や妖精、賢獣もしくは聖獣と呼ばれる幻獣達の楽園。

茜の家は、樹海の中央にそびえる巨木にある。--正確には巨木の中にだが。

「う~~ん、そろそろ起きますか」

寝間着から着替えて、寝室を出る。

そのまま居間を通り過ぎ、扉の前へ。

開け放てば、そこから先は空中。

しかし茜は、躊躇うことなくその身を空へ躍らせる。

グングンと近づいてくる地面。

微かな恐怖とささやかな高揚感。

そしてその後に---。

『風よ』

優しく風に抱き留められて、静かに着陸。

「やっぱり、気持ち良いわね!!」

こうして茜の一日が始まる。


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