第04話 暴走!腐魔物(アゲジャー)
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「ねえ、ボクも一緒に仲間に入れてよ」
「お前なんか仲間に入れるわけないだろう!?」
「魔物と会話できるんだろう?お前、魔物じゃないのか?」
「あっちいけよ!」
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僕は、真っ暗な空間で、何時間目を閉じていただろう。
何にも聞こえない。
僕は、一生懸命忘れようとしていたあの時の記憶を思い出していた。
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そうだ。僕は、皆から魔物じゃないかって避けられていたんだった。
どうして、今まで、忘れていたんだろうって思うくらい。
自分の心の中に封印していたのかもしれない。
僕は目を開けると、そこは、見たことが無い病院みたいなところだった。
すると、リズが
「あ、リュウ!目が覚めたんだ」
と、嬉しそうな顔をして言った。
どうやら、僕は、あの後、運ばれてきたらしい。
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「ここは?」
と、僕はキョロキョロとあたりを見渡しながら言った。
「ここは、シフェコ学校の診療所。まあ、いわゆる保健室みたいな所だね」
「僕は、一体・・・・・・」
「学校の教室に戻ってきたら、いきなり倒れるから、びっくりした!」
と、アヤメが言った。
そうだ。レム先生は?
僕は近くにいるんじゃないかと探すが、僕以外の7つのベッドは空いている。
「もしかして、レム先生のこと?」
「あ、うん」
「レム先生なら、同期のヒューバード先生が助けて、職員専門診療所で安静にしてたよ」
と、リズが言った。
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「ヒューバード先生?」
と、僕は言った。
うん。とリズは言って側に合った3本足のまるい椅子に座る。
「私も詳しくは知らないんだけど。レム先生の同級生みたいなんだよね」
「そうなんだ」
「結構、紳士的なんだけど、すっごく優しいよ。今の学校じゃあり得ないよね」
「あり得ない?」
「リュウ。そうだよ。今、学校中は強者が生き残る方針に変わったんだよ!・・・・・・まあ、私たちは、それどころじゃないけどね」
リズは、そう言ったけど。確かに、その通りだ。
僕は、すっかり忘れていた。
そうだった。
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「まあ、リュウは安静にしていて。大丈夫よ!授業はちゃんと聞いてノート取るから!」
そう言って、笑顔で退室していく。
でも、リズは本当は不安じゃないのかなって。まあ、僕も人のこと言えないから。
すると、アヤメが壁に寄り掛かっていたのを普通に立ち、僕の所に来て
「もし、不安だったら、私のノート見せてあげるから、別な意味で安心して」
笑顔で言ってくれたけど。
「・・・別な意味って?」
「リュウも、うすうす感ずいてるんでしょ?リズは結構ノート書くの雑だから」
「あ、ゴメン、アヤメ。僕が心配しているのは“そこ”じゃないんだ」
僕は、顔を下に向けて言った。
「“そこ”じゃないって?」
と、アヤメが言った。
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すると、校舎から《キンコーン・カンコーン・・・》とチャイムが鳴り響く。
「あ、もう6時限目の時間だ。結局、6時限目の授業には出席しなくちゃいけなくなったから、行かなくちゃ!じゃあ、放課後に」
そう言って、急いでアヤメは教室に向かう。
僕は、そう。上級生の先生が決定した、あのバトルロワイヤル方針の事。
絶対、校長先生は、そんなこと望まない。
校長・・・校長・・・。
そう言えば、今、どんな人が校長をしているのだろう?
「どうだったね?ボレギ先生」
校長が座っていた場所の椅子を全く違うデザインの椅子に座っている人が話す。
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「あの5人をしとめようと思いましたが、例のレム先生に邪魔されました」
と、天狗のような白い色をした仮面をはずしボレギ先生が言う。
「そうか・・・やはり、邪魔しに来るか?」
「ところで、ホレイゾン新校長。本当に、実行するのですか?古代歴史から続くと言われていた禁断の遊戯、バトルロワイヤルを?」
「私は、本気だよ。ボレギ先生。それと、だ。キミの活躍も期待してるからね」
そう言って、ホレイゾン校長はニヤニヤとした表情で言う。
6時限目が終わり、放課後。
僕は、頭の中が不安で安静どころか、じっとしていられなかった。
すると、女性の先生がやってきて
「あら?リュウ君。目が覚めたのね」
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「あ、はい。・・・あの」
「あ、まだ、自己紹介がまだだったわね。私はこの診療所の管理をしている、メニアよ。以後、よろしくね」
「あ、はあ」
なんかリズやアヤメとはまた違った、明るい感じの先生だ。
僕は、苦手だな。こういう人って。
「心配したのよ。レムの魔方陣の光が現れたと思ったら、あなたたちがくるんだもの」
「レム先生とお知合いなんですか?」
「ああ、レムと、あとヒューバードと同じ同期で、同じこの学校の卒業生なの」
「え?同じ卒業生・・・ですか」
「そう。まあ、私は治療術師に、レムは武道術師に、ヒューバードは確か・・・」
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「僕は、両剣戦術師ですよ。全く。いい加減僕のこと覚えてください」
と、青緑色の制服を着た、紳士的な男性が現れた。
「ああ!ヒューバード!あ、この生徒、リュウ君。君の子供のころにそっくりだよね」
と、小さいころをお簿いだし笑いしているメニア先生が言うと、
顔を真っ赤にしてヒューバード先生が
「止めてください!もう、10年も前の話しです」
と言うと、
「あはははは。良いじゃない。忘れている方が変よ」
「あの。この人が、ヒューバード先生ですか?」
と、僕は言うと
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「ああ。そうだよ。はじめましてだね。僕は、魔術実習を担当しています」
僕は、この時、ホームン校長先生・レム先生の次に新たに信用できそうな先生を見つけた気がする。
「あ、そろそろ下校時間が過ぎちゃうわね。もう、大丈夫かなリュウ君?」
「あ、はい。安静にしていたら大丈夫になりました」
「そう。良かった」
「あ、メニア。レムが呼んでたよ?内容は知らないけど?噴水広場にきてだってさ」
「うん。分かった。噴水広場ね?」
「あの、先生。ありがとうございました」
僕は、お時儀をして、治療所から玄関に向かうため、近くの階段を下りる。
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メニア先生が診療所にカギをかけて、ドアノブに[CLOSE]の看板を下げると、
「じゃあ、ヒューバート。またね」
そう言って、メニア先生はレム先生と約束の場所、噴水広場へと向かう。
ヒューバート先生の携帯電話に一通の《非通知着信》が入る。
「はい。ええ。ええ。大丈夫ですよ。良い獲物を1人、見つけましたから。はい。リュウという光輝使いの少年です・・・・・・」
ここは、緊急治療室。
ココかな?ジンとウリッドがいるの?
僕は、ノックをしようとすると、扉が自動で開いた。
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え。ノックできない?
すると、2人はベットで、漫画を読んで笑い合ってた。
「!?」
僕は、2人の姿に唖然とした。
「あ?リュウ。来てくれたんだ!」
と、ウリッドが言った。
「なあ?だから来てくれるって言っただろう?」
と、自慢げにジンが言った。
僕は、2人が大けがをしたって思っていたけど、
2人の姿を見たら、なぜだか嬉しくなった。
なぜだろ?周りから人からいなくなるんじゃないかって。
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「それより、2人は怪我は大丈夫なの?」
僕は言った。
「ほら、こんな包帯をグルグル巻いてあるけど、こんなに・・・・・・!」
ジンは自分で包帯が巻かれた右腕をたたくけど、ものすごくいたそうな顔をした。
やっぱり、相当なダメージだったんだ。
あの、仮面の男。なぜだろう?どこかであった感じがした。
そう。子供のころに、あった、あの、雨が降っていたあの時のような。
ーーー
僕がまだ6歳だったころ。
土砂降りの雨の中。僕は傘を持っていなかった。
お使いの途中。近くのバス停の屋根で僕は泣いていた。
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僕は、うっすらと覚えているのが、通り過ぎる大人たちは僕のことを嫌な視線で見つめているように思えたという事。
あのときは、すごく怖かった。
すると、黒い傘を指した男の人が小さい緑色の傘を持ってこう言う。
「坊や。この傘を使うか?」
ーーー
でも、この傘は呪われていた。
僕はその傘を指した日から魔物が話す声を聞こえるようになった。
今は、聞こえないけど。
「リュウ?どうかしたのか」
ウリッドが僕のことを呼びかける。
「ううん。なんでもない。なんか心配して損しちゃったなって思ったんだけどね」
と、僕は言った。
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「ゴメンな。退屈になってさ、結局こんなことしてるんだよ」
ジンは言った。
僕は、この2人に‘一瞬’ついていけないと思った。
普通は、大けがとか負ってしまった時、安静にしているかと思ったけど。
もしかして、僕だけ?安静にしようと考えるの?
「2人は、この後は?」
「ああ、俺たちは、もうしばらく安静にしてろって言われたよ」
と、ジンが言うと、
「メニア先生っていう人が言ってた」
と、ウリッドが言った。
そうか。メニア先生ってすごい治療術師なんだ。
こういう人が、悪人じゃなくてすごく良かったって思う。
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もし、周りにいる人が全て悪人だったら、僕は、もう、この世にはいないんだと思う。
でも、そういう考えはこの先、間違ってはいないと言う答えに導く。
ーーーその数日後の授業が始まる前の朝。
全校生徒が校舎の広い、エントランスホールに集められた。
「なんで、俺たち集められたんだ?」
と、ジンが言った。
「分からないけど、なんか新しい校長を紹介したいって話だよ」
と、リズが言った。
「あれから数日たって、今頃新校長を紹介するって、なんか話が通ってないような気がするんだよね」
と、アヤメが考えながら言った。
「確かに、僕もアヤメの言ってることも分かる気がする」
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「リュウもそう思うでしょ?絶対何か企んでるよ」
僕が言うと、アヤメが言った。するとウリッドが、
「アヤメの考えすぎじゃないか?」
と言う。
すると、2人の黒いフードをかぶった教師が壇上を運んできて、中央に置く。
『あれ?あの黒いフードの姿って、どこかで見たような?』
僕は心の中でつぶやいた。
すると、朱色と黒色を混ぜた色の制服を着た老人より若い感じの人がその壇上の上に立ち、
「私が新たに就任した新校長、ホレイゾン・レドワイルだ。これから君たちには今までのような甘温い教育方針は1週間前に廃止した」
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その発言に上級生は歓声が上がるが、それ以外の分類、中級や初級、そして、僕たちのような見習い立場は、逆に動揺していた。
「これより、生徒達全員に禁断の遊戯の一つを行ってもらう!」
すると、黒いフードをかぶった教師が壇上を運んだ2人以外の教師30人が出てくる。そして、ハテナマークの箱を両手に抱えている。
そして、ホレイゾン校長は、
「これから登場してくる、魔物を1時間以内に30体倒す事だ。倒したものから、次の第2期の授業を受ける資格を与える。できないものはこの学校から去ってもらう!」
その言葉に僕は愕然とした。
僕には頭の中には“無理”という漢字2文字が浮かんだ。
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今、僕が使える魔法は、まだ使った事が無く、攻撃なのか防御なのか分からない、ただ一つの呪文【プリズメリウム】だけ。
もし、この魔法が防御の魔法だったら、その時点で第2紀の授業を受ける資格なんか・・・・・・無い。
「ただし、仲間の力を借りようとする者は、強制失格とし、強制的に追放させる!それでは、禁断の遊戯1つ≪魔物舞踏会≫開始だ!」
ホレイゾン校長がそう言った後、30人の黒いフードをかぶった教師は一斉に魔物を放つ。
そう。見た感じが、魔物を暴走させているかのように。
そして、僕は、聞いてしまった。
この魔物は人を食べる事が好きなようで
僕の後ろで魔物が生徒を食べる音を聞いてしまった。
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しかも、一人ではない。
僕らと同じように入ったばかりの生徒達が次々と。
上級生は当たり前だけど、すさまじい勢いで魔物を軽々と倒していく。
僕は、怖くなった。
生き残るってレム先生に言っておきながら、いざとなったら、すぐに僕はダメな存在になる。
もう、リズやジン、ウリッド、アヤメには頼らず、1人で生きていくしかない。
でも、今は、違う。校長先生がいない今。ホレイゾン校長が今の新しい校長先生だ。
従うしかない。だって、校長先生は僕にも託してくれたんだ。
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こんな、ダメダメな僕なのに・・・・・・
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どうか 逃げないでほしい
私は、絶対君なら犯人を探してくれると信じている
ーーー
そうだ。校長先生は、こんな僕にもちゃんと信じてくれていた。
だから、僕も、ホームン校長先生を信じる!
でも、もうエントランスホールや校舎の外では、地面が真っ赤に染まりはじめている。
大勢の生徒が犠牲になっているのに、ホレイゾン校長と、32人の教師はじっとその場で見ているだけだった。
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生徒達は、暴走した魔物と戦うことで必死だったから、誰も見ていなかったけど。
僕は、その時はなぜだか冷静だったのか、見えた。
何も嫌な顔一つせず、ただ、楽しそうに見物していたのが分かった。
すると、ホライゾン校長は、僕のことを見つけ、僕の顔を見てニヤニヤと不気味に笑った。
すると、僕の後ろからジンが
「リュウ。お前のことも助けてやりたいけど、今のままじゃ、助ける事ができない・・・・・・。クソッ。あの新校長もそうだし、何考えているんだから?」
「・・・・・・ジン。僕の事は良いから、まずは、自分のことを優先に考えてよ」
僕は言った。僕のことをかまっていたら、皆が授業を受ける権利を失う。
「お前、何言ってるんだよ!」
「え?」
と、僕は言うと、続けてジンが、
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「二度と、そんなこと言うんじゃねぇよ!」
ジンは怒って言った。そして、魔物を倒しに行ってしまう。もしかして僕は、言ってはいけない事を、言ったのかなって思ったけど。
ウリッドは、そのあとに、
「ジンはせっかく俺以外の仲間ができたから、心の底から嬉しいんだよ。きっと」
「・・・僕が?」
「実はさ、アイツ。ああ見えて、俺と一緒に入学した時にさ、他に仲間とかできるか心配してたんだよ」
「ジンが?」
「ああ。結構、ああ見えて、心の中は純粋なのかもな。リュウも自分を信じてさ、覚えた魔法使ってみたら?大丈夫。あのホームン校長だってリュウの事を信じて、この学校に入れたってことは、捨ててないんだよ。希望」
「・・・・・・ウリッド。ありがとう。少しは吹っ切れたかも」
「うん!じゃあさ、1時間後にさ。無事、会おう!」
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僕は、ウリッドの言葉に助けられた。
僕は、もう覚悟を決めたんだ。だから、これからは自分自身も。そして、もう、逃げないためにも。
そうだよね。もしかしたら、僕は今まで現実と言う時間に逃げてきたのかもしれない。
だから、ずっと今まで一人ぼっちだったのかもしれない。
僕は、自分と、そして、皆を信じて、勇気を振り絞って、魔法を唱えてみる。
【プリズメリウム】
すると、僕の下に、白い六角形が現れ、そして、僕の両手から金平糖のような光が僕の目の前の魔物を4体狙い打つ。
魔物はスラスラと消えていく。
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僕は、攻撃魔法だと喜んだけれど、ものすごい量の力が僕の体力を奪うかのように、僕は立てなくなりそうだった。
一体、何が起きたんだろう。
この魔法って、もしかして、ものすごい精神力を消費するのかな?
たしか、実習授業の時、魔法は自分自身の精神力を消費して魔法が使えるって言ってた。
だから、精神力が無くなったら、魔法が使えなくなり、自分の命にもかかわるっていう事を学んだけど。
ってか。もう一度発動できるのだろうか?
一度で4体。つまり、30体倒すには、8回唱えなければいけない。
1回の唱えるだけで、こんなに息が上がるほど疲れるなら、8回なんて唱えられない。
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そのころ、リズは
「結構、この魔物、すっごく臭いにおいがする」
「リズ、私の予想だけど、たぶん腐魔物の一種かもしれない」
と、アヤメが言った。
「腐魔物?腐魔物って、確か、ゾンビとかそういう‘くくり’のやつだよね?」
リズが言うと、
「うん。そうなんだけど、ただの腐魔物じゃないかもしれない」
「どういうこと?」
「まだ、はっきりと言えないんだけど、あのホライゾン校長が、この魔物達を腐魔物に変えたんじゃないかなって」
と、アヤメが言った。
リズとアヤメは2人で背中を合わせて、1体ずつ倒している。
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2人はもともと、精神力は強い方だから、10体倒しても息は上がっていない。
「アヤメ、もしかして、あの魔物って腐魔物じゃないってこと?」
「リズ、感がさえている!あの魔物はもともと、ガルバイムっていう人を襲わない魔物のはず。でも、私たちの周りでも多くの生徒達が犠牲になっている。つまり、あの魔物は暴走させた魔物って事になる」
アヤメは言った。アヤメはホライゾン校長がいる壇上を見る。すると、アヤメも気づいた。
『あの校長。もしかして、私たちが苦しんでいるのを笑って楽しんでるの?』アヤメは心の中で思った。
すると、ガルバイムはアヤメに向かって大量に突進してくる。
「あ、アヤメ!前!前!」
リズは言うと、ジンがアヤメの目の前に立ち
【ファイヤーブレイブ】
ガルバイムを炎の剣で両断し、ジンは通算13体倒した。
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「あ、ありがとう。もう、ジンは羨ましいよ。剣使いなんだもんね」
リズは言った。
「なあ、アヤメが言っていたこと本当なのか?」
と、ジンは言った。
「なに?ジン聞いてたの?」
と、アヤメが言った。
「あくまでも、私の考えだから、本当のことじゃないかもしれないけど。あの不気味そうに微笑んでいるあのホライゾン校長が何を企んでいるのか分からないけど」
「なるほど、これもリュウ狙いか・・・・・・」
と、ジンは言った。
「・・・・・・ジン?リュウを狙ってるって」
「俺も考えたんだけどさ、あの校長はもしかしたら、リュウを殺害しようとしてるんじゃないかって」
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「な・・・・・・何、言っているの。そんな・・・はず、ないじゃない」
リズは慌てた様子で行った。
「リズ、私も認めたくないけど、その可能性も高いかもしれない」
アヤメは言った。
「一体、リュウをどうするつもりなんだよ!?」
ジンは言った。
「ところで、ジン。リュウにちゃんと謝ったの?私見てたんだからね。いまのジンはちょっと言い過ぎ」
アヤメは言った。
「あ、あれは、つい、とっさに」
「リュウは繊細なんだから、あんなこと言って、また、悩んで苦しんだらどうするの?」
アヤメは言った。でも、僕は皆の会話は聞こえなかった。
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そもそも、僕は、どうやったら30体倒せるのか考えていた。
自分の限界を知ったところで、20体もいけない・・・・・・。
「見たかね?光輝魔法だ。素晴らしくきれいだった」
ホライゾン校長が言った。
「ええ。まさしく、世界を暗黒の世界に塗り替えるほどの力でしたね」
ボレギ先生が言った。
「さて、ホライゾン校長。あの子は、20体も倒せないけど、どうしますか?このままだと第2期の授業を受けれないままになりますよ?」
「それは、それで構わない。進まなければ、逆に仕留めることが簡単になる」
ホライゾン校長が言った。
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「はぁ・・・はぁ・・・一体こいつら暴走しすぎだ!」
ウリッドが言った。ウリッドは9体倒している。
すると、僕がフラフラとしている姿を見つけ、ウリッドが僕のそばに歩いていく。
「リュウ?大丈夫か?」
「あ、ウリッド。攻撃魔法だった」
「本当か!?それは良かった」
僕は言うと、ウリッドは笑顔で喜んでくれた。
なぜだろう。
なんか不思議な気持ちだった。
こんな事でも、笑顔で喜んでくれる人なんて、僕の周りにはお母さんだけだった。
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「でも、この魔法は僕にとってはすごくしんどい。たった1回の使用で、結構フラフラする」
「1時間がタイムリミット。いろいろあったけど、もう15分が経過したのか」
僕が言った後、ウリッドが時計を見て言った。
針は短い針は9の上。長い針は3のところを少し下に動いていた。
そして、僕は、あんなに大勢いた生徒がもう3分の1は減ったかも。
どうして、あの校長先生はそんなことをするのだろう?
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僕は、いたってもいられなくなり、ホライゾン校長先生に聞いてみることにした。
「ホライゾン校長。あなたに聞きたい事があります」
「なんだね?今、遊戯中だぞ!」
ボレギ先生が言ったけど、ホライゾン校長は右手をボレギ先生の前に出し、前に出るのを止め
「かまわないよ。・・・・・・何だね?」
と、ホライゾン校長は言った。僕は、ゴクリとつばを飲み込み、勇気を振り絞って
「ホライゾン校長は、今の遊戯をみて何も思わないのですか?」
「思うとは、何をだ?」
「え?何をって・・・多くの命が犠牲になったんですよ!そんなものを見ても先生は何も思わないんですか?」
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「思わないよ。私も、ここにいる32人の教師もね」
と、ホライゾン校長は言った。すると、リズは
「こんな事をして、面白いって思うんですか?皆は、こんな事をしに学校に入学した覚えはありません!」
「リズ・・・」
「今は、私がこの学校の校長だ。私に従ってもらう。もし、嫌なのであれば、退学しても良い」
「私は、逃げない!」
「そうか。それなら良い。どうせ、弱者は強者の生け贄でしかならない。今、生き残っている生徒よ。弱い奴を踏み台にして生き残るのだ!」
僕は、ホライゾン校長に対して、何も言えなくなった。
すると、リズが、
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「リュウ?どうしたの。黙っちゃって」
「あの校長の言うことも半分は当たってるなって」
「ダメだよ!リュウ。あの校長はリュウや私たちが目的だから、そうやって惑わす気なんだよ」
リズは言うと、ウリッドがやってきて
「リュウ。自分を責めるのはやめないか?」
「ウリッド?」
ウリッドがそばまでやってきた。
「自分は生き残るってレム先生に誓ったんじゃなかったのか?」
ウリッドにそう言われてしまい、
「そ・・・それはそうだけど」
と、僕は答える。すると、ウリッドは
「ならさ、残り時間で30体倒してさ、俺たちが強者になればいいんだよ」
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と、言う。
「そうだね。確かに、ウリッドの言う通りかもしれない」
僕は言った。確かに、自分で言ったんだ。
レム先生にもウソをつくことにもなるし、皆にも迷惑をかけてばかりだった。
「リュウ、1人じゃないんだからさ。私たちがいるってこと忘れないでよ」
「え?」
「あ、そっか。リュウはずっと一人ぼっちだったから・・・・・・」
「あ、うん。友達とか、仲間とか、全然分からないんだよね」
「よし、まずは、話はここまでにして、30体倒そう!」
と、ウリッドが言った。
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「もう、話し膨らませたのウリッドじゃん!まあ、いっか。リュウ。絶対に生き残ろう!」
「うん!」
僕は、友達とか、仲間とか分からないけど。
一緒にいるんだって考えただけで、すごく、安心してきた。
そうだよね。僕はホームン校長にも頼まれた。
だから、皆の事を信じて、僕は、皆のおかげで30体を倒すことに集中する事が出来た。
僕が使える魔法をきっとうまく考えれば、大量に倒すことができるのかな?
ひょっとして。僕は思った。もしかしたら、この光の弾は2個ずつ、4個出せたけど、増やせるのかな?
僕は、目の前に12体のガルバイムが襲ってくる。
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僕は、もう一度唱えてみる。目の前の12体を倒す事を頭の中に描いて。
【プリズメリウム】。すると、片方の手に6個の光の弾が現れ、両手で12個になった。
「で・・・出た!」
僕は驚いた。もしかして、限りがある限りは描いていた個数分出るのかな?
なんか、この魔法は何かと不思議が多い。この魔法だけじゃなくても、全ての魔法に当てはまるのかな?
ガムバイルが光の中に、スラスタと消えていく。
でも、なんでだろう?やっぱり一度に多く消そうとしても精神的なダメージはさっきと同じだった。
これって、もしかして、大量に現れた時に役立つ魔法?
でも、僕はひとつ分かった事がある。それは、魔法とは使ってみないと何が起きるか分からない。
どんな効果があるのか、どのくらい精神的ダメージを消費するのか。
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でも、何だろう?ここにいる瞬間だけ、時が過ぎるのが早い気がする。
もう、長い針が5の所に。あんなことで、10分過ぎていたんだ。
僕は、やっと目標の半分を超え、16体を倒したことになった。
それでも、上級生は次々と簡単に倒していく。上級生だからかもしれないけど、きっとプライドを持っているんだと思う。
あんな本気で真剣に上にはい上がろうと言う顔をした上級生の顔は僕は、あまり好きじゃないなぁって。
上級生はただ、周りの人が死んでいっているのに、何にも構いもせず、ただ、自分の事だけしか思っていなかった。
みんな、他人でも“助けたい”って思わないのかな?
それとも、そんなことを思うのは僕だけなの・・・・・・?
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僕は、その事が分かったから、あと14体。14体を倒すことを考える事にした。
リズも、ジンも、ウリッドも、アヤメも。皆30体をクリアしようと頑張ってる。
だから、僕も、皆の事を信じよう。たぶん、これが仲間の絆ってことなのかな?
それとも、違うのかな?
これが終わったら、皆に正直に聞こう。
“仲間”というものについて。
恐怖の時間は15から14に時を進む―――。
To Be Continued.....
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