第03話 失うもの
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僕は、そう。自分で初めて強く決めた。
ううん。もともと自分が逃げていただけだったのかも。
そう。目の前に広がる恐怖と言うものに……。
僕はレム先生にそう誓った。
僕は、この学校で、生き残る、と。
でも、レム先生は嫌な顔一つしなかった。
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「リュウ君」
レム先生は心配そうな顔をして言った。
「確かに、僕は、力とか弱いです。それは、自分でも、分かってます。でも、校長先生はこんな僕でも学校に入学させてもらったんです。僕は、何も校長先生に恩を返してないのが悔やんでいるんです」
「そうね。でも、そう言ってくれたら、きっと、校長先生も嬉しいかもね」
レム先生は笑顔でそう言ってくれた。
「リュウ君、悪いんだけど、この事件に関してはかかわってほしくないの」
「え?どうしてですか?」
僕は言った。僕は、優しい校長先生をこんな目に合わせたのだ。
僕は許せなくて仕方が無かったのに。
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「私はね、すごく嫌な予感がするの。なにか得体のしれない組織が動いているのかも。そんな危険な目に、まだ見習いでもある生徒達を巻き込みたくないの」
「…先生」
すると、レム先生はすごく睨みつけたような目をして窓際を見たとたんに、僕に
「じゃあ、もう夜遅し、朝起きれなくなっちゃうから、しっかりと寝てね」
そう言って、僕はうん。と答える。
僕は、その時は、何にも疑いもしなかった。
本当にレム先生の言った通り得体のしれない組織が水面下で動いていた。
レム先生は、心の中で
『……まさか、盗聴魔法?しかも超上級……』
レム先生はその魔方陣をかき消す。
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『本当に、あの子たちを危険な目に合わせてしまうの?』
黒いマントの格好をした男性が
「……さすが、わが最優秀候補名だけあるな……レム」
そう、微笑んで電話帳から1件電話をかけ
「ああ、俺だ。悪いが、面白い“弱者”を見つけたよ。ああ、きっと“あのお方”にも気に入ってもらえるだろうさ」
……そう、弱者を死祭る儀式の生け贄にな。
僕は、その夜は寝付けない夜だった。
すごく夏のように暑くなく、涼しげな気温なのに。
僕は、すごく汗をかいていた。
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なぜだろう?
こんなに誰か人を失う事が、自分にとって大きな体の変化に見舞われるなんて……。
僕は、もう、迷わない。
校長先生がどうしてこんな目に合わなければならなかったのか。
校長先生は、僕を入学させてくれた。
校長先生がいなかったら、僕は入学していないし。
こうして良い人たちにも出会う事は無かった。
「月の明りがすごく冷たい感じがする」
僕は、いつの間にか目を閉じて眠っていた。
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次の日。
学校の授業の始め。
僕たち1学年目のクラスが再び編成された。
「なんで、教室が変わったんだ?」
ジンが言う。
「ってか、1クラス48人からなんで36人に減ったんだ?」
ウリッドが言う。
「しかも、副校長ってやつが次の校長先生みたいだし、もう、めちゃくちゃだよ」
アヤメが言う。
「リュウ、本当に大丈夫?」
リズが言う。
「ちょっと、皆、一度にしゃべると分からないよ」
僕は言った。
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「でも、一体何者が校長先生を?」
と、ジンが言うと、
「簡単だよ。校長先生を怨んでいる人間。それは、副校長ってことだ。校長がいなくなれば、副校長が校長にできるし、学校を支配する事は簡単だろう?」
と、ウリッドが言う。
「ウリッドは考えが甘い!」
「アヤメ?」
「別に副校長じゃ無くても、誰かが副校長とグルになって協力しちゃえば、別に副校長じゃなくてもい言って考えにもなるでしょ?」
「そっか。そう考えれば、他の教師でも可能ってわけか」
アヤメが言った後、ウリッドが、なるほど。って顔をして言う。
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「リュウは、本当にそれでいいの?」
リズが心配そうに僕に言った。
「うん。校長先生がいなかったら、僕はここにはいられなかったし、もともと、自分を変えたい、っていう、考えしかもっていなかったから。僕は、頑張って生き残りたい」
と、僕は皆に僕の思いを打ち明けた。
「私は、リュウの意見に乗っても良いよ」
と、アヤメが言う。
「え?」
と、僕は驚いた感じに言う。
「私は、もともと家族の仇を取りたくて学校に入ったけど、犯人探しも面白いんじゃない?学校で学ぶ事になにか影響するわけでもないし」
と言うけど、ジンが不安そうに
「他の先生たちにばれない様にするのは難しくないか?」
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そうジンが言うと、
「普通に学校の授業を受けながら、何か手掛かりを探すようにすれば、怪しまれないと思うよ」
と、僕が言うと
「そう言うこと。別に皆に協力してもらう必要はないよ。だって、皆はバトルロワイヤル方式で夢中なんだもの」
と、アヤメが言うと
「あの…私」
と、リズがとても言いにくそうにしゃべりだす。
「どうしたの?」
と、僕が言うと
「私は、少し考えさせて。リスクが高すぎるから……」
「ううん。無理しなくていいよリズ。もしかしたら、これは、僕が招いたことかもしれないし……」
「リュウが大元ではないと思いますよ?」
「え?どういうことウリッド?」
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「校長先生が残した手紙から推理すると、校長は俺たちが仲間として共鳴する事を読んでいた。つまり、それは……」
と、ウリッドが言うと、
「なるほどね。私たちがこの学校に受けようとする前から何かしらの出来事が起きていたってことね」
と、アヤメが言う。
「そう言う事だな。で、校長は俺たちの能力を何かしらの方法で知って、俺たちに託したって考えた方が妥当かな?」
と、ウリッドが言う。
そして、リズは自分の席に座って考え始めた。
ウリッドが言っていたこと。でも、それって、言いかえれば、僕が皆を巻き込んでしまった、って言っても、過言ではないよね。
それとも、僕の深く考えすぎなのかな?
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私は考えていた。
だって、もし、その校長先生を殺した犯人が、アヤメが言っていた人殺しの好む軍団“漆黒の騎士団”だったら、どうするの?
もう、リュウがあんな風に大怪我を負ってしまう姿なんて、もう、二度と見たくない。
私は、授業を受けている時間帯も、その事ばかり考えていた。
先生にも、授業を聞いてなさいって怒られちゃったし、もう、どうしよう。
リュウにも心配されちゃったし。
私は、ただ、魔法を学んで仕事を見つけて働きたかった。
家族が困っているから。
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今は、魔法が使えれば、どんな仕事でも受け入れてもらえる。
でも、私の目の前では、その魔法が、今、殺意に変わってた。
でも、でも。皆とこうして一緒に安心な気持ちで、話ができているなんて。
ダイバが裏切ったあの時の時間よりも、断然、皆と一緒にいる時間の方が良い。
ーーーーーどうしよう。
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とある休み時間。
僕たちは、休憩室(別名:ロビールーム)とよばれるところに来ていた。
結構、広い空間だけど、声が響かない不思議な部屋で話をしていた。
教室だと、怪しまれる可能性もあるから。
「なあ、最近、学校の先生もさ授業のスピード速くなったと思わないか?」
「うん。確かにそうだね」
ジンがそう言った後、僕は言った。
すると、ウリッドが
「俺たちが、校長先生の件、調べようとしていること、感づかれたんじゃないのか?」
「大丈夫よ。私たちが、話している事は、まだ、誰にも聞かれていないんだから」
と、アヤメが言う。
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「ところでさ、やっぱり、リュウはリズの事、心配なのか?」
と、ジンが僕に聞いてくる。
「え?別に、そういうわけじゃないんだけど……」
と、少し慌てた感じに言ったら、
「何、慌ててるんだよ?」
と、ウリッドに聞かれた。
「そういうつもりじゃ。ただ、なんか、僕のせいで皆にいろいろと迷惑をかけてるんじゃないかな?って。リズだって、きっと自分の目的とかあるはずだし」
と、言うと、アヤメが
「別に、リュウのせいじゃないと思うけど?」
と言う。そして、続けて
「むしろ、リュウがいてくれたから、私たちはこうして早めに一緒にいる事が出来た。もし、リュウがいなかったら、私たちは今頃こうして話していなかったかもしれないのにね」
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「確かに、そうかもな」
「あ、いや。でも、ジンとウリッドは僕に話しかけてきたよね?」
と、ジンが言った後、僕が言うと、
「ああ、実はさ、何か聞こえたんだよ。『“あいつ”に声をかけろ。そうすれば次の扉が開かれる』ってさ」
「え?誰かが?」
と、ジンが言った後、僕は言った。
「私も。『“あの子”に声をかければ、先が進むだろう』って」
と、アヤメが言った。
「どういうこと?どうして皆して?」
と、僕が言うと、校舎からチャイムが聞こえる。
「あ、ヤバい!早く次の授業へ行かないと!」
と、ウリッドが言う。
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ーーー3時限目。
「それじゃあ、次は、精霊を召還してみましょう」
と、男性の教師が言う。
次の授業は精霊。
少し予習をしてきたけど、“精霊”は使える人は、大切な“相棒”として一緒に戦う事ができる。
でも、それを使いこなせる人はほんの一握り出来るか、できないかくらいだと言われている。
「この六角形の黒い板に基礎となる丸い円を描き、そのあとに自分が召還してみたい属性の魔方陣を描きます」
先生は黒板にそれぞれ属性に応じた魔方陣を書いて説明した。
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「へえ、結構たくさんあるんだな。属性って」
とジンが言うと
「確かに、魔法だと属性は限られてしまうけれど、精霊は別なんだな」
とウリッドが言う。
「属性と言うか、ほぼ、見た目よね。蛇とか白狐とか」
とアヤメが言う。
リズは六角形には何も書いていなかった。手を動かすのをやめて。
「リズ?どうかしたの」
と、僕はリズに聞くと、
「え?」
と、授業を聞いていない感じに驚いた様子だった。
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「あ、ゴメン。全然、授業の話し聞いて無かった。リュウ、教えてくれる?」
とリズは言った。でも、僕は授業の話しではなく
「無理して、犯人捜しに協力しなくても良いよ。リズはリズの目的に集中すればいいから。」
と小声で言った。すると、リズは
「ありがとう。でも、私も決意しなきゃいけないんだよね」
と、小声で言った。
「え?」
「まだ、話してなかったんだけど。私ね、家族、ちょっと家計が苦しいから、私が少しでも協力出来たらって。魔法だったら結構仕事の幅とか広がるからね」
「そうだったんだ。ゴメン、なんかリズにまで迷惑かけて……」
「ううん。むしろ、私もこの学校来てから不安だったけど、こうして皆と友達ができたから」
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「ところで、リズはどう?精霊?僕は、全然ダメ」
と、僕は言った。僕には精霊を召還する事は出来ないみたい。
「私は、どうかな?」
リズは水の属性を選び、魔方陣を描く。
すると、青く輝き出し、人魚みたいな精霊が出てきた。
「うわ!」
リズはびっくりして、黒い板を机の上に落とす。
「水の精霊を召還できたみたいだね!」
僕は言うと、教師は
「リズ君は、水の属性を召還する事ができるみたいですね」
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でも、一瞬、その教師の顔つきが変わったように見えたけど、僕の気のせいかな?
ーーー食堂。
皆、それぞれメニューを選んでいる。
僕は、カレーライス。ジンはかつ丼。ウリッドはラーメン。リズは焼き魚定食。アヤメは豚の生姜焼き。
食堂でも、何だろう。どこかの宮殿にいるかのようなゴージャスすぎる空間。
ホント、すごい学校なんだなぁって今更だけど、思っちゃう。
「いやー、びっくりしたぜ、リズが精霊を召還できたんだもんな」
ジンが言う。
「もう、ジン!食堂何だからさ、大声で叫ばないでよ。皆に聞こえちゃうじゃん!」
「そうなに隠す事無いんじゃないかな?」
ウリッドが言う。
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「リズは、嫌なんでしょ?あのクラスで精霊を召還できたの私とリズだけだもんね」
と、アヤメが言った。
「そう言えば、アヤメも召還してたよね?俺はだめだったけど」
と、ウリッドが言った。
「私は、風属性。結構カワイイ精霊だったよ」
と、アヤメが言った。
「良いよな、お前らは精霊とか召還できてさ、俺たちは精霊は一切召還出来なかったし」
「まあ、俺たちはその才能が無かったわけだ」
ジンが言った後、ウリッドが言った。
「ところで、リュウ。どうしたん?なんか食事進んでないけどさ?」
と、ウリッドが言った。
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「あ、いや、別に。ただ、なんかさっきの授業だけ普通だったなぁって思っただけだから」
と、僕は言った。
「確かに、あの時の授業は普通って感じだったけど……」
と、アヤメが言った。
「考え過ぎなんじゃないのか?」
と、ジンが言うと
「まあ、リュウは何かと考えすぎちゃうから」
とウリッドが言った。
まあ、確かに、僕は深く考えすぎちゃうけど。もう、今の学校で教師を信じていいのか分からなくなってた。
もう、今は、校長がいない。頼れる学校にいる大人は、もう、いないんだ。
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「うん?なんか食堂なのに騒がしくないか?」
と、ウリッドが言った。
「本当。何かあったのかな?」
リズが言うと、
男の教師が皆に向かって
「あの、“ケセード”周辺に実家がある生徒さんはいますか?」
と呼びかけている。
え。ケセードって僕の生まれた町だ。
僕は、席から立ち上がり、
「あの、先生。僕、ケセード生まれですけど?」
と、僕は言った。
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「後半の授業は公欠届を出しておきますから、今すぐにほうきに乗って向かってください!」
と、先生は言う。
「あの、何かあったんですか?」
と、リズが言った。
「襲撃されたんです。ケセードとその周辺の集落が!」
僕はその言葉から、とてつもない不安に見舞われた。
そこには、お母さんがいる。
僕は、急いで校舎の外に出て、ケセードに向かってほうきを使って飛ぶ。
「俺たちも、一緒に!」
と、ジンが言うと
「ちょっと、待ちなさい」
と言われ、
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「え、勝手に行くの?」
アヤメが言う。
ジンと、ウリッドは強行突破で校舎から出ていく。
「リズはどうする?」
「ねえ、もし、この事件が校長先生の事件とかかわってたらどうする?」
「どうしたの?リズ。急にそんなこと考えて?」
「アヤメはどう思う?これがリュウをおびき出す罠だったら?」
「リズ、心配なら、私たちも強行突破だよ!!」
リズとアヤメも強行突破で校舎の外へ。教師の事を無視して。
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僕は、リズのように考えなかった。むしろ、この時だけ、頭の中はお母さんの無事のことだけしか考えられなかった。
これが罠だとか、ウソだとか、そんなこと、これっぽっちも考えなかった。
遠くに見える白い煙。空高く上がっている。
でも、火は燃えていない。
町の人達も無事なのかな?
僕は、ケセードの入り口付近に着地する。
村がめちゃくちゃになっていた。
家も、植えられていた木々も。
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僕は、誰か人がいないか当たりを探しまわる。
でも、走っても、走っても、誰も人にすれ違わない。
「どういうこと?」
僕は、走りつかれ、少し休んでいると、
黒いフードをかぶった、天狗のような白い色をした仮面を付けた人が僕の目の前に現れる。
「だ…誰?」
僕は言った。
「貴様は……光輝使いか?」
すごく声がかすれたような感じで話す。でも、自分の声じゃないのは確か。声を変えている。
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「……」
僕は、黙った。この人に話していいのか分からなくなった。
「言わなくても……俺には、お前の正体を知っている」
そう言うと、瞬間移動し、僕の目の前に現れ、
小さな声で《バムライオン》と唱えると、
僕はものすごい勢いで吹き飛ばされる。
「ねえ、あの砂煙、一体何?」
リズが言った。
「俺たちも、急いで向かおうぜ!」
ウリッドが言った。
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僕は、立ちあがる事ができない。
僕の目は必死に開けようとしても、うっすらと青空が見えるだけ。
すると、仮面の男は僕の背中を片手でわしづかみにし、
「お前は消える存在なんだ……」
僕は、息が、できない。なぜだろう?首を絞められているわけじゃないのに。
赤い火の玉が仮面の男の背中に当たる。
僕は、掴まれた手から離れたから、距離を取ろうと、必死に歩く。
すると、アヤメが僕の腕を肩にのせ、
「リュウ、大丈夫?」
「あ、ありがとう。アヤメ」
「ううん。気にしないで」
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「ところで、あいつ、何者?」
と、アヤメが言った。
「僕も知らない。でも、あの仮面の男に、“お前は光輝使いなのか”って……」
僕は言った。息を荒らしながら。
「光輝使い……って、秘伝魔法の一つ?」
「秘伝魔法?」
「私たちもきっと秘伝魔法を使える者同士なんだと思う。私は、霊堂使い。魔物を操れる力を持ってるって校長に聞かされた事があったっけ」
と、アヤメが言った。
「じゃあ、もしかしてあの仮面の男」
「私が思うんだけど、あの仮面の男の目的は、たぶん、リュウ何だと思う」
「え、僕が?」
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「くっそ!あいつ、俺の炎魔法をくらってもビクともしないって」
ウリッドが言った。
アヤメから聞いた話だと、ウリッドは普通は一つの属性しか使えないけれど、ウリッドは豊富な属性の炎魔法を使える火焔使い。
「俺に任せろ!」
ジンは両手を合わせ、刀を自分の目の前に出現させる。
ジンは自分で刀を出現させることができる刃斬使い。しかもアヤメが自習調べしたところによると、強くなるにつれて使える剣も増えるとか?
仮面の男に剣が当たるが、刀が折れ曲がってしまう。
「・・・!。はぁ?。コイツ……一体、何者なんだよ!」
「お前たちは、火焔使い。そして、刀斬使いか……」
仮面の男は言った。
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「俺たちの正体を知っているのか?まだ、リュウ達にも正直に話していないってのに」
ジンが言った。
「まずは、貴様たちから、・・・抹殺しよう」
そう、仮面の男が言うと、仮面の男は2人が使った魔法と全くそっくりなものを出し、それを2つ合わせる。
「・・・まさか、合体技?」
と、ウリッドが言うと、
地面から円を描くように砂埃が巻きあがり、虹色のオーラーをはなち、ジンとウリッドに向かって剣に赤い炎を巻きつけ、剣を炎の剣に変えて、縦と横に振る。
「アヤメ、リュウをお願い!」
と、リズが言う。
「ちょっと、リズ!何するの?」
と、アヤメがリズの腕を掴んで言う。
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「ジンと、ウリッドがこのままだと、殺されるよ!」
「そんなこと言って!リズ、あんたが代わりに殺されるじゃない!」
アヤメがリズに向かって言う。
「でも、私たち、せっかく仲良くなり始めたのに、こんなにすぐに失いたくない!」
リズは必死になって言う。
「リズ、リズの気持ちは分かるけど、共倒れになったら元もこうもないじゃない」
「じゃあ、アヤメは皆がどうなっても良いの?」
と、アヤメが言った後、リズが言う。すると、アヤメは少し言うのをためらった後、
「そうじゃない!・・・・・・そうじゃないの・・・・・・」
「アヤメ?」
アヤメは少し目に涙を浮かべて言った。
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「あんた、あたしの友達ならさ、あたし達3人分のかばん持ちなさいよ」
「え、なんで私が?」
「へえ、あたしに逆らうって言うの?」
「私は、ただ・・・・・・」
“友達”を作りたかっただけなのに。
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「アヤメ?大丈夫?」
アヤメは動かなくなった。この間にも、ジンとウリッドが。
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リズがジンとウリッドの方を見ると、2人がその攻撃に遣られている姿を見る。
ジンとウリッドはその攻撃をくらい、2人はそのまま地面にうつ伏せに倒れる。
「・・・なんだよ、あの、仮面の、男」
ジンが言った。
「・・・俺たちの、魔法を、自分の魔法として、使えるなんて」
ウリッドが言った。
すると、仮面の男はゆっくり歩いてくる。リュウに近づいてくる。
リズと正気に戻ったアヤメはリュウの前に立つ。
「一体、あなたは、リュウに何をするつもりなの?」
リズは勇気を出して仮面の男に言う。
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「なんで、私たちを狙うの?・・・・・・一体何が目的?」
アヤメもリズに続けて仮面の男に言う。
「知りたいか?」
ボソっと言う。
僕は、必死になって立ちあがろうとする。
すると、アヤメとリズが手を貸してくれた。
僕はふらふらになりながら立ちあがる。
僕はもう、目に見える景色が歪んで見える。
「お前たちは、ここで消えてもらう。『あのお方の命令に従うために』」
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「そこの仮面の男!私たちの学園の生徒に手を出すなんて、何者?」
その声は、レム先生だ。
「お前は?」
「シフェンジュ・コールメ魔術学校、教師レム・フォーレンよ!」
レム先生は、地面に手をかざして大きな剣《大剣》を取りだす。
そして、レム先生は、仮面の男に向かって突き進み、剣を仮面の男に向かって切りつける。
「あ・・・当たった?」
リズは言った。
仮面の男の腕に傷を負うことに成功する。
しかし、仮面の男は傷を負った事にビクともしない。
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「何?私の攻撃を喰らっても平常心?」
レム先生は言った。
「お前みたいな上級な教師でもこんな程度か?」
「何!?」
レム先生は、僕とリズ、アヤメの前に来て、
「いい、あなたたちは、このまま学園に戻って!このままだと、あなたたちはあの仮面の男に遣られてしまうわ!」
と、レム先生が言った。
「でも、どうやって?」
リズが言った。
「君たちの下に魔方陣を描いておいたの。ジンとウリッドはさっきの攻撃の合間に学園にワープさせておいたわ」
と、レム先生が言う。
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「レム先生は?」
僕は、力を振り絞って声を出す。
「私も、距離を取ったら学園に戻るわ。学園内は超強力な魔方陣で守られているから、大丈夫」
そして、レム先生が言った後、すかさず呪文を唱えて
「『光包み込み円よ、我に従い集い場所に導きたまえ』」
そして、僕たちは魔方陣の上でワープし、僕たちの教室にワープしてきた。先生は机をどかしていた。
そして、魔方陣を描けるスペースを作っていた。
でも、僕はレム先生の事が心配だった。確かに、僕の体はもう動けないほどになっていた。
「まさか、生徒を守るとはな」
仮面の男が言った。
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「私も、あの子たちを信じたいから、私は、教師として守る義務がある」
「なら、俺が貴様をあの世に送ってやるよ」
「出来るかしら?」
レム先生は言う。ものすごい自信があるように言う。
「貴様はまだ、読みが甘い」
「何が?」
レム先生の背後からもう一人の仮面の男が拳銃を向ける。
「・・・・・・うそ!・・・・・・まさか、もう一人いるなんて」
そのあと、荒らされたケセードの村に、拳銃の音が響き渡る。
恐怖の時間は16から15に時を進む―――。
To Be Continued.....
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